日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

自分が暮らすまちだから―川崎で市民学習会

2019-03-11 10:00:00 | (理)のブログ

 神奈川県川崎市で、「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」が主催する市民学習会「実効性のある条例制定へ 前へ、前へ。ともに。」が3月8日に行われ、約200人が参加しました。
 同ネットワークが結成されたのは16年1月。日本各地で広がっていた在日コリアンに対するヘイトスピーチが川崎でも頻繁に起こり、生活を壊された市民たちが立ち上がって声を集めました。これまでの活動はHP(https://kawasakiar.tumblr.com/)に記録されています。

 今回の学習会は、川崎でもついに差別を禁止する条例を作ろうとの動きが進むなか、市民たち自身の力で、より実効性のある内容にするため学びを深めようとの趣旨で持たれました。
 また、川崎市では、市民の地道な行動によって2017年11月に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律に基づく『公の施設』利用許可に関するガイドライン」というものが策定され、18年3月末から施行されました。これは名前の通り、川崎市にある公の施設で差別的な集まりを持つことを禁止するため、基準となるガイドラインを設けるというものです。
 しかし、このガイドラインは適正な運用がなされていないとして、ネットワークを中心とした市民たちは多くの課題を指摘しています。学習会では、この内容についても併せて紹介されました。



 はじめに司会があいさつ。「差別を禁止し、終了させるための実効性のある条例を作りたいという思いで何年間も活動してきたが、やっとその努力が実るようになってきた。来週の月曜、川崎市議会に条例の骨子案が提出される。私たちは川崎市にいい条例ができるように全力で応援し、より実効性のある内容にするため、学んでいかなくてはいけない」と呼びかけました。
 続いて市議会議員らによるあいさつがあり、それぞれにより良い条例策定のため尽力していく旨を話しました。


↑飯塚正良議員


↑堀添健議員


↑片柳すすむ議員

 応援メッセージ(書面)の紹介のあと、ゲストによる学習が始まりました。
 精神科医の香山リカさんは、反ヘイトスピーチの活動に携わるようになったきっかけを話したあと、精神科医としてこの問題とどう関わっていけばよいか、自分なりの考えをのべました。



 香山さんが、人種差別団体である「在特会」の排外デモを初めて見たのは2013年。まるで映画の撮影のような、現実に起こっていることとは思えないほどひどい実態に驚きながら、その後も在特会の動きをおっかなびっくり注視していたそうです。本格的に抗議を始めたのは14年の秋。その年の夏、札幌市議会の金子快之議員が自身のTwitterに「アイヌ民族なんて、いまはもういないんですよね」と投稿したのを見て、「民族の否定とはどういうことだ」と怒りを持ちました。
 香山さんは北海道出身で、アイヌルーツを持つ地元の人たちがSNSで自分の民族の文化を楽しそうにシェアするのも見ていました。金子議員の発言のあと、その人たちが萎縮していくのをリアルタイムで感じて居ても立っても居られず、民族差別に抗議する意志を表明したと話しました。

 香山さんはまた、排外デモをする人々がニコニコしながらヘイトスピーチを吐くようすを見て、「非常に娯楽的。恍惚感や高揚感が訪れて、依存状態になっているのでは」と感じたと言います。最後に、「社会の中で、人権や心身の健康を阻害するような恐ろしいことが起きている。被害者の実態、加害する側の原因、ヘイトスピーチの後ろにある病理的な背景などについて、精神科医という立場で関わっていかないといけないと思う。市民や行政だけでなく、専門家をはじめとする色々な分野の立場から包囲網を作り、ヘイトや差別のない社会を作っていけたら」と思いをのべました。



 香山さんによる学習のあと、ふたたび応援メッセージがありました。4月に市議選に立候補する後藤まさみさんは、「3歳のときに父が亡くなり、母が在日コリアンの方が経営する焼肉屋の事務をして生計を立ててくれた。小さい頃からそこのハンメやオモニたちにとてもお世話になった。そうした経験からも、ヘイトスピーチや民族差別を絶対に許さないという思いがある。皆さんの思いを市政に反映させていきたい」と話しました。



 県議選候補の岩田サヨ子さんは、「桜本に長く住んでおり、川崎協同病院で看護師として務めてきた。お金のあるなしや国の違いによって差別があってはいけないと、平等な医療を目指して続けられてきた病院だ。45年間そこで勤めた。地域でも今後、同じ理念を持って活動していきたい」とあいさつしました。



 次に、1999年から国立市議会議員として活動している上村和子さんが講演をしました。上村さんは、4月に施行予定の「国立市人権を尊重し多様性を認め合う平和なまちづくり基本条例」制定のために長年、地元で尽力してきました。この条例は、人種、皮膚の色、民族、国籍、信条、性別、性的指向、性自認、障害、疾病、職業、年齢、被差別出身その他、経歴などを理由とした不当な差別を行ってはならないという、差別を包括的に禁止した都内でも初の条例です。
 上村さんが合言葉にしているのは“ソーシャル・インクルージョン”(すべての人を社会的孤立や排除から守り、社会の一員として包み支え合うこと)。この理念をもとに条例制定まで活動してきた内容について振り返りました。その間には、国立市からの朝鮮学校児童生徒補助金が打ち切られそうになる事件や、被差別出身者への連続大量差別ハガキ問題など、特定の民族や出身者に対する行政的、民間的な差別とのたたかいをはじめ、多くの紆余曲折があったそう。「朝鮮学校の補助金を廃止させたら、私は議員として加害者になると思った」という上村さんの言葉が胸に響きました。

 上村さんは、国立市の場合、▼人権感覚のある首長がいたこと、▼職員や議会にもやる気があった、▼当事者が頑張っていた、▼学識者が力を貸してくれた―という4つの条件があって条例制定に至ったと話しました。



 上村さんのエールを受けたあと、「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」事務局の崔江以子さんが発言。条例制定に向けて進んできたこれまでの経緯を説明したあと、「公の施設」利用に関するガイドラインの課題についても改めて話しました。このガイドラインは、▼差別的言動が行われる可能性が高いこと(人種差別要件)と▼施設の安全な管理に支障が生じる事態が予測されること(迷惑要件)の二つを同時に満たしたときに適用されるとされています。しかし、このままだと確信的に差別扇動を繰り返している人には抜け道を与えてしまいます。実際に川崎市では、そういった性格の集会において、一部の参加者から「ウジ虫、ゴキブリ、日本から出ていけ」というヘイトスピーチが出た例がすでに発生しています。崔さんは、ガイドラインの改善も引き続き訴えていく必要があると伝えました。

 「さあ、いよいよです。来週月曜日の10時から、川崎市議会文教委員会で条例の骨子案が提出されます。私たちの代表である委員たちが、私たちの条例を審議します。しかし、特別な人たちだけが条例を決めるのではなくて、私たち市民は議員さんを応援することで参画していきましょう」。崔さんは、自分たちが暮らすまちは自分たちの手で守ろう、作っていこうと呼びかけました。
 同時に、条例制定に向けてのスケジュールも共有されました。夏には市民たちの意見を聞くためのパブリックコメントも実施されます。これについても崔さんは、「行政がなにか施策をしようとすると、必ず相反する考えを持つ人たちが反対の電話をします。それに対して『頑張れ! 私たちがついている!』と励ましましょう」と再三強調しました。
 「学びを力に、前へ、前へ。頑張っていきましょう!」



 崔さんの発言に続いて、「反差別相模原市民ネットワーク」の田中俊策事務局長が緊急アピールをしました。同ネットワークは、人種差別と排外主義を掲げる政治団体「日本第一党」の桜井誠党首が相模原市内で講演と称したヘイトスピーチを行ったことに対して危機感を持った市民たちによって結成されました。
 田中さんは今年の地方統一選挙に日本第一党から3人の立候補者が出ていることに言及しながら、▼かれらを当選させないこと、▼相模原でも差別禁止条例を制定すること、そして津久井やまゆり園での障害者虐殺事件について触れ、それを活動の根底に置き、▼すべての差別を許さないこと―、この3つの方向で運動を進めていくと話しました。



 最後に、「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」事務局の山田貴夫さんが行動提起をしました。山田さんは今回の条例の骨子案にはネット上でのヘイトスピーチの対策については盛り込まれていないため、それも課題として挙げていかなければならないと提起。また、被害者の救済システムをつくること、条例制定後もきちんと機能しているかチェックする場を持つこと、その場に市民が参加すること、などの項目も重要だと話しました。



 さて、上にも書きましたが、本日10時から川崎市議会文教委員会が開かれます。「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例(仮称)」の骨子案についての審議が開始するのは11時~11時半頃とのこと。インターネット中継もあるそうなので、気になる方はこちら(http://www.kensakusystem.jp/kawasaki-vod/)からチェックしてみて下さい。(理)

3・1の歴史を伝える~関東でも100周年刻むイベント

2019-03-08 10:00:00 | (瑛)のブログ




 3・1独立運動100周年を記念し、関東地方の在日本朝鮮留学生同盟も、展示、シンポジウム、デモ行進など意欲的な企画で100周年の意義を見つめていた。

 3月1~2日には、3.1人民蜂起100周年記念展示会「日本と朝鮮の150年史―日本の植民地支配と分断に抗して―」が東京・荒川のムーブ町屋で行われた。

 主催は東京、西東京、埼玉、神奈川県の留学同地方本部の4団体。各本部から学生代表が一人ずつ実行委員を務め、まず自身らが歴史を学習することで問題意識を深めてきた。

 「現在の日朝関係を克服する上で、日本による朝鮮植民地支配の歴史を見つめ直すことは避けて通れない課題だ」という観点で企画を立て、メンバーらに広く呼びかけて準備を進めてきたという。










 会場には、3.1人民蜂起、1930年以降の抗日武装闘争、南における民主化闘争や在日朝鮮人の権利運動など朝鮮の近現代史を時期やテーマごとに説明するパネルが展示されていた。来場者たちは会場のあちこちに置かれた参考書籍も手に取りながら理解を深めている。

 また、展示の終わりでは在日朝鮮人に対する昨今の差別・弾圧事件を取り上げ、未だ解決されない日本の歴史認識や過去清算をめぐる問題について知らせた。実行委員の一人、琴向芽さん(首都大学東京3年)は展示会の趣旨文を執筆。琴さんは朝鮮と日本、在日朝鮮人の過去と現在、そしてこれからを見つめ直す場を作り市民たちと共有することができた」と手ごたえを話していた。



 3日には、4団体が主催する、3・1人民蜂起100周年記念シンポジウム「三・一が問いかけるもの」が東京北区の北とぴあペガサスホールで行われ約140人が参加した。



 康成銀・朝鮮大学校朝鮮問題研究センター長が「朝鮮三・一独立運動の記憶―朝鮮と日本における国際法の需要と実践の異なる位相」、康宗憲・韓国問題研究所所長が、「在日朝鮮人にとっての『三・一』100年―日本の過去清算と朝鮮半島の平和統一に向けて」のテーマで中身の濃い講演をし、今日における「3・1運動」の意義を見つめることができた。

 康成銀センター長は、「3・1運動は、朝鮮近代史上未曾有の全民族的な反日独立運動で、現在の祖国統一運動の精神的な寄りどころだ」と指摘。「アリランの歌」著者のキム・サンらの体験記を紹介しながら、「歴史的なこの体験は、血肉と化した民族的記憶として解放後も語り継がれている。解放前の独立の課題と解放後の統一の課題は、現在を生きる私たちすべての同時代史であり、絶え間ない観察を要する生きた歴史だ」と語った。「100周年を機に今後は北南、海外同胞が共通の歴史認識を獲得するために、歴史対話が本格化することを期待する」―。康センター長は最後、長年の夢を観衆に伝えてくれたが、必ず実現しなくてはならない課題だ。

 康宗憲・韓国問題研究所所長はスライドを用いながら朝鮮の近代、現代を振り返りつつ、最後はベトナムハノイでの首脳会談について言及した。会場の強い関心を集めていたので、ここで発言の要旨を紹介したい。

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 2018年6月12日、米国と朝鮮の両首脳はシンガポール共同声明を発表し、朝鮮半島で「恒久的で強固な平和体制を構築するために共に努力する」ことを約束した。トランプ大統領がハノイ会談前、「朝鮮戦争を終わらせる準備ができている」と話していたことからも、今会談で互いの不可侵と朝鮮戦争の終結を表明する「平和宣言」の発表が準備されていたのは間違いないだろう。しかし、米側は大統領弾劾に向けた議会聴聞会という国内事情もあって、合意よりも「決裂の勇姿」を選択した。

 朝鮮戦争の「休戦協定」を「平和協定」に換えることで朝鮮半島の戦争は終結する。

 「平和協定」の入口ともいえる「終戦宣言」は、両国関係改善のステップとして大きな意味がある。1953年の「休戦協定」に署名したのは、米国(国連軍)、中国、朝鮮の3国だが、「平和協定」には実質的な当事国である韓国を加えて南北と米中の4者が署名すべきだろう。ただ現在は多国間協議までは進めていない。

 今会談に際して文在寅大統領は、韓国の参加が無理なら朝米2国による朝鮮戦争の終戦宣言を容認するとトランプ政権に伝えていた。すでに南北は昨年、板門店と平壌で相互不可侵を宣言しているからだ。それ以降、板門店の軍事境界線では韓国軍、朝鮮軍、米軍の3者が会議する機会が増えている。朝鮮戦争の終わりは目の前に来ている。法制度的な文書の作成が残されているだけだ。

 2年前には朝米が互いを罵倒し、米韓の大規模な軍事演習と朝鮮の核・ミサイル実験がなされていた。

 しかし、朝鮮半島があの頃に「後戻りする」と見る人は少ない。今の流れを押し戻すには、私たちはあまりに多くの前進を勝ちとっているからだ。

 米側もシンガポール合意を完全に無視して敵対関係に戻ることを国益とみなさないだろう。

 米国との交渉は時間がかかる至難の技だが、わが民族の歴史、ベトナム戦争など第三世界の歴史から見て悲観する必要はない。誰が相手であっても、朝鮮民族は南北が協力体制を築きスクラムを組んで対処することだ。(了)

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シンポ開催前、留学同の学生たち日本市民ら約50人が、雨が降りしきるなか、王子駅前公園周辺をデモ行進したことも、ぜひ紹介したい。

 「高校無償化から朝鮮学校だけを排除し続ける今の状況は、朝鮮人に対して民族教育を禁止し、同化を強要した植民地時代と変わっていない。朝鮮人として生きる道を妨害する行為に強い怒りを感じる」―――、雨に打たれながらの力強いアピールが街中に響く。

 コリアン学生たちが「3・1独立運動」100周年を意欲的な企画で盛りあげてくれたことに感動しつつ、学生たちのデモが100人以上の警官に囲まれながらやっと実現したことに愕然とした。デモを妨害しようと、差別主義者らが数十人も押し寄せ、100人以上の警官が動員されていたのだ。







 差別主義者たちは警察に押さえつけられながらも、「日本が嫌なら出ていけ」「日本人はお前らみたいな民族が大嫌いなんだ」という暴言を吐いていた。
 
 「事実を知って」「差別をやめて」という大学生たちの素朴な思い、歴史の事実を否定しようという圧力…。

 このせめぎあいの中で、「3・1独立運動」は100周年を迎えた。歴史から目を背けるこの社会の「闇」は深い。しっかりと目を開き、この闇を見続けなくてはと痛感した取材だった。(瑛)

大阪で三・一人民蜂起100周年記念公演/シンポジウム 「怪物」たちの行進―朝鮮と日本、歴史と現在

2019-03-07 10:00:00 | (相)のブログ
 

 「3.1独立運動」100周年を迎えて、日本各地でさまざまな記念行事が催された。
 とくに、「3.1」の先駆となった在日朝鮮人留学生の志を受け継ぐ在日本朝鮮留学生同盟(留学同)は東京、東海、近畿、九州の4地域でそれぞれ特色ある記念行事を企画した。
 3月2日、大阪市内では大阪、京都、兵庫の各地方本部の共催で「三・一人民蜂起100周年記念公演/シンポジウム 「怪物」たちの行進―朝鮮と日本、歴史と現在」が行われた。

 

 

 第1部・総合文化公演「『怪物』たちの行進」は、含蓄あるタイトル、1919年3月1日を100年越しで再現した演出、「3.1」を日本帝国主義に対する武装闘争も含めた抵抗の歴史の文脈にあらためて位置づけ、今も継続する日本の植民地主義に鋭い批判を突きつけた演劇など見どころが多かった。

 

 文化公演に続くシンポジウムでは、「支配と闘争、その150年~『現在』をどのように認識し、行動(連帯)すべきか」をテーマに、康成銀(朝鮮大学校朝鮮問題研究センター長)、吉澤文寿(新潟国際情報大学教授)の両氏が発言した。両方とも大変示唆に富む発表だった。
 徴用工裁判や日本軍性奴隷制被害者に対する日本の世論、メディア、政治家の醜悪な反応を見ながら、今こそ過去の歴史に目を向け、「3.1」の意味をあらためて問う必要があると思った次第だ。
 本誌イオでは3月中旬発行予定の4月号で「3.1独立運動」100周年に際した企画ページを準備している。(相)

ブログ「日刊イオ」の10年

2019-03-06 09:40:47 | (K)のブログ
 3月1日の日刊イオで、(瑛)さんが「「3・1独立運動」から100年、ブログ「日刊イオ」開設10年」https://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/b5724cd3b33d87b64fd30e5004da3807という文章をアップしています。
 日刊イオの開設から10年、今日は日刊イオについての思いをいろいろと書きたいと思います(写真は第1回のブログの画面です)。

 (瑛)さんのブログでも少し触れられていますが、日刊イオを開設した理由はいくつかあります。月刊イオが月刊誌なので、ホームページの更新が基本的に月に1度となり、毎日更新できるブログがあればよいと考えたのが一つ。編集部員の素顔をブログを通して伝えて月刊イオに親近感を持ってもらいたいというのが一つ。月刊イオの数多い記事の中で編集後記の人気がなかなか高いということを聞き、各編集部員が書く気軽に読めるものをと考えて開設に至りました。
 現在は平日のみの更新ですが、日曜日から月曜日まで、本当に毎日、日刊で更新していた期間もけっこうあります。最初は1日の訪問者が十数人という数字でしたが、現在はその何倍もの人たちが訪問してくれています。

 開設当初のブログは、個々人の日々の出来事や思いなど、今よりもキャラクターが出ている内容だったと思います。内容に大きな変化が生まれたのは、2010年から。2月に高校無償化からの朝鮮学校排除の問題が出てきて、そのことに関する情報を頻繁に発信するようになり、その後は朝鮮半島や在日朝鮮人社会の動きや社会的な問題を多く書くこととなりました。
 昔も今も取材に出掛けるメンバーは、取材の内容を書くことが多いでしょうか。ブログでは文字数や写真の枚数の制限がないので、雑誌よりも詳しく報告している場合が多いですね。せっかく取材した内容なのに誌面ではほとんどが載せられず割愛せざるを得ないわけですが、私もそれが残念で日刊イオで詳しく報告するということが何度もありました。そういうことができるのも、ブログを開設して良かった点だと言えます。
 ブログを読み返してみると、結婚し子どもができて成長していくなど、メンバー一人ひとりの生活上の変化がわかって面白い。私も息子の話を結構書いています。

 PCで日刊イオを開くと画面の左に「カテゴリー」という欄があります。そこを見ると、(k)から(茂)まで、12人のブログが並んでします。今日のブログが2893回目。わたし(k)のブログが今日で490回と他のメンバーより少し多いのは、朝鮮訪問時にその内容をほぼ毎日発信していたこと、大阪朝高ラグビー部の試合の速報を書いたこと、取材に行った際などブログの順番を無視してゲリラ的にアップしたことなどがあげられます。いずれにせよ、職権を乱用した結果によるものです。

 10年前の3月1日、日刊イオは(k)(瑛)(愛)(里)(蒼)(茂)の6人でスタート。4月にすぐに(麗)が加入して、しばらくこの7人で更新していきました。10年の間に、(相)(淑)(理)(S)(全)が入り、(蒼)(茂)(里)(淑)(S)が出て行きました。現在は(k)から(全)までの7人で更新しています。こうして見ると、10年間のメンバーの入れ替わりは、あまり多くありません。それだけ、編集部のみんなが、誇りとやりがい、責任感をもって編集の仕事に携わってきたということではないでしょうか?

 (瑛)さんは、「10年たった今、さらなるバージョンアップが求められていると感じています」と書いていますが、どのようにバージョンアップされるのか、楽しみに待ちたいと思います。(k)

ダイビングワールドシリーズ相模原大会、朝鮮選手が銀メダル

2019-03-05 10:18:43 | (全)のブログ


 「FINA(国際水泳連盟)ダイビングワールドシリーズ2019・相模原大会」(3月1~3日)がさがみはらグリーンプールで行われました。同大会に、朝鮮民主主義人民共和国からキム・ミレ、キム・アリム、キム・クァンヒ、ヒョン・イルミョン選手ら4人が出場しました。
 ワールドシリーズは世界ランキング上位選手を対象に毎年行われており、今大会につづいて、中国・北京(3月7~9日)、カナダ・モントリオール(4月26~28日)、ロシア・カザン(5月10~12日)、イギリス・ロンドン(5月17~19日)で大会が行われます。
 朝鮮は国際大会の経験を積むため、昨年初めてワールドシリーズのすべての大会に出場。銀メダル7個、銅メダル1個を獲得しました。朝鮮の飛び込み界といえば、15年に行われた世界水泳選手権で朝鮮選手初となる金メダルをを獲得したキム・グクヒャン選手が記憶に新しいと思います。

 2月27日に羽田空港に到着した選手団。28日は、大会を翌日に控えて試合会場で公式練習にのぞみました。

 3月1日に行われた女子シンクロ10mにキム・ミレ、キム・アリム選手ペアが出場しました。
 キム・ミレ選手(17)は、これまでグクヒャン選手とペアを組み、数々の国際大会に出場(16年リオ五輪4位、17年世界水泳選手権銅メダル)。昨年のワールドシリーズ・富士大会(18年3月)では銀メダルを獲得した、実績のある選手です。

 キム・ミレ選手とペアを組む、朝鮮選手団最年少のキム・アリム選手(15)は、18年11月にシンガポールで行われたFINAダイビンググランプリに出場。女子シンクロ10m、ミックスシンクロ10mともに金メダルに輝いています。

 この日、朝鮮ペアを応援しようと神奈川、西東京の地域同胞、朝鮮学校の児童・生徒ら約100人が会場に駆けつけました。


 競技で朝鮮ペアは応援団の声援を後押しに、堂々たる演技を披露。5回の演技をミスなくこなし、合計319.50点を記録した朝鮮ペアは、1位の中国(340.44点)に次ぐ2位の成績で銀メダルに輝きました。


 キム・ミレ選手は、「飛び込む前、緊張したアリムの心臓音が聞こえてきた。自分の飛び込みに集中しなければならないのに。でも、アリム選手と心を一つにしシンクロでメダルを取れたことは嬉しい」と振り返りました。

 翌2日に行われた女子個人10mには、シンクロで銀メダルを獲得したキム・ミレ選手、ワールドシリーズ初出場となるキム・クァンヒ選手が出場しました。

 キム・チュンオク団長(朝鮮水泳連盟飛び込み技術委員会委員長)によると、キム・クァンヒ選手(16)は、18年6月に中国で行われたダイビング・ワールドカップでシンクロ10m銀メダル、個人10m4位を獲得した実力が買われ、国際水泳連盟から直接招請を受けたといいます。

キム・クァンヒ選手は準決勝敗退となってしまいましたが、キム・ミレ選手は終始安定した演技を披露し、1位の成績で準決勝を突破、決勝へと駒を進めました。

 6人の選手たちで争われた決勝戦で、キム・ミレ選手は1、2本目ともに難なく成功し、3位と好スタートを切りますが、3本目の演技でミスしてしまい成績を落とします。しかし、キム選手はミスにも動揺することなく4本目では渾身の演技を披露し、高得点を叩き出して挽回。メダル獲得へわずかな希望を残したキム選手でしたが、逆転できず、合計345.20点で4位の成績となりました。

 続いて行われたミックスシンクロ10mには、ヒョン・イルミョン、キム・アリム選手ペアが出場しました。
 選手団最年長のヒョン・イルミョン選手は、国際大会の経験が豊富で実績、実力ともに文句なしの選手です。
 朝鮮ペアは1本目で3位につけ、上々の立ち上がりをみせますが、2本目でキム・アリム選手の演技にミスが生まれ、7位に転落。3、4、5、本目と追い上げますが、最終スコアは3位と2.04差の合計323.46点(4位)で惜しくもメダルには届きませんでした。




 大会期間、朝鮮選手たちを応援しようと神奈川、西東京の地域同胞、朝鮮学校の児童・生徒らが会場に駆けつけ声援を送りました。2日間、会場に訪れ競技を観戦した呉洋子さん(78)は、「日本で競技をするのは不安やプレッシャーがあるはず。応援で不安を跳ね除け、気持ちを和ませてあげたいと思った。女子シンクロで2位が確定した瞬間、喜びをあらわにして抱き合う選手たちを見て胸がいっぱいになった。感激の一言」と感想を話してくれました。
 大会期間、オモニたちが手作りキムチの差し入れたり児童・生徒たちは寄せ書きプレゼントしたり、歓送会で選手たちをねぎらうなど同胞たちは朝鮮選手団をあたたく歓迎しました。歓送会のようす、選手たちの素顔などは次回のブログで改めて書きたいと思います。


 朝鮮選手団は4日の午後に羽田空港を出発し、ワールドシリーズ第2戦(3月7~9日)が行われる中国・北京へ向かいました。
 今年7月には東京五輪の出場資格をかけた「FINA世界水泳選手権大会」が韓国の光州で行われます。(全)


(写真左からキム・チュンオク団長、キム・アリム、キム・クァンヒ、キム・ミレ、ヒョン・イルミョン選手、チェ・ソンヒ監督/写真はすべて朝鮮新報=盧琴順)

いよいよ春めいてきた…?

2019-03-04 10:00:00 | (麗)のブログ
何だかんだでもう3月です。

会社では早くも花見に関する話題が出てきました。
花見というワードを聞くと、わくわくしてきます。
まだまだ寒い日が続きますが、いよいよ春めいてきたなと思えます。

さて、イオ4月号の締切がいよいよ近づいてきました。
いつもこの時期になると身が引き締まります。

大きなトラブルなく締め切りを迎えられるよう、
今月も最後まで気を抜けずにやっていきたいと思います!

ちなみに、4月号の表紙もかわいらしい作りになっていますよ。
どうぞお楽しみに!^^(麗)

「3・1独立運動」から100年、ブログ「日刊イオ」開設10年

2019-03-01 10:00:00 | (瑛)のブログ
 今日2019年3月1日は、一世紀前に朝鮮半島で起きた3・1独立運動から100周年を迎える日、朝鮮人自身が日本の植民地支配下にあった「朝鮮の独立」のために立ちあがった記念すべき日です。

 数年前、本誌の誌面で朝鮮近現代史の連載「朝鮮、その時」を執筆したシン・チャンウ・法政大学准教授は、当時の光景を次のように描いています。

…3月1日、ソウルのパゴダ公園で大極旗が天空高くひるがえり、独立宣言書が朗読されると、「独立万歳」の声は万雷のようにこだまし、いつのまにか足の踏み場もない位、数万にのぼる群衆が集まり、市街地へと示威行動を始めました。

 このときの朝鮮人民の開放感はいかほどのものだったでしょうか。

 キム・サンは「アリランの歌」のなかで、「私は自分の心臓が破裂するのではないかと思われるほど、うれしかった。誰もかれも喜んでいた。私は興奮してしまって一日中食事を忘れていた。この3月1日には何百万人もの朝鮮人がみな食事をすることも忘れたろうと思う」と回想しています。

 3・1運動の先駆けは、東京にいた朝鮮人留学生たちからでした。19年2月8日に東京YMCAで留学生大会が開催され、11人の朝鮮青年独立団代表団による独立宣言を発表。大会は日本の警察に弾圧され、多くの者が逮捕・投獄されるのですが、2・8宣言書は宋継白が警察の監視を潜り抜けて学生服のなかに隠して朝鮮半島に伝えたといわれています。この運動は朝鮮民族の独立への思いを内外に誇示したものの、日本総督府は大弾圧を加え、死亡者7509名、被傷者1万5961名、被因者4万6948名という甚大な被害を生みました。甲午農民戦争、義兵闘争に続く暴虐な弾圧でした。

 昨日、朝米首脳会談が合意文なしに終了しましたが、日本の植民地支配に続く朝鮮半島の分断、朝鮮戦争の勃発と、朝鮮半島の一世紀は、まさに無数の民衆が命を落としながら、独立、統一を希求してきた歴史でした。

今回の会談で合意文が発表されなかったことは想定外で、私自身落胆はしましたが、過去に憎しみ、殺しあった朝米が互いに膝をまじえて両国の将来を話し合う、それだけでも数年前には想像できなかった。ハノイでの両首脳の姿は、朝鮮半島を平和を願う朝鮮民衆の力の産物だと思います。

 歴史の流れの中に今日の自分がいる。3・1の日に、このことを痛感します。

 日本国内では3・1運動の意義をみつめるイベントが各地で開かれるので、皆さん、ぜひ足を運んでください。詳細は巻末に掲載します。

 さて、月刊イオ編集部にとって今日は、もう一つの記念日でして、ブログ「日刊イオ」が開設されて10年を刻む日でもあります。

 この10年間、イオ編集部の12人がアップした原稿は、合計2890件。取材先で見たこと、感じたこと、日々の悲喜こもごもをこのブログで綴ってきました。大阪朝高ラグビー部が花園に出場した際には試合の速報を、無償化裁判の口頭弁論や判決も、速報を意識して報じてきました。

 現在、日刊イオは平日に毎日更新していますが、一般の人たちにもイオを身近に感じてほしい、という思いから始めました。

 10年たった今、さらなるバージョンアップが求められていると感じています。

 例えばイオを読まない人たちは、どんなメディアを見て情報を集めているのでしょう。誰かとつながりたいと思ったときにどんなツールを通じて、人とつながるのでしょうか。

 今、編集部では、イオの誌面はもちろん、ブログ、ホームページを通じても読者の皆さんと双方向の関係を築けるよう、対策を練っています。5月ごろには皆さんに新しいニュースを届けられるよう準備中です。
 読者の皆さん、今まで日刊イオをご愛読くださり、コマプスムニダ。そしてこれからも日刊イオをご愛読ください!(瑛)


●3・1運動100周年記念イベント

◇東京
企画展示「3.1独立運動100年を考える―東アジアの平和と私たち―」

日時:2月6日(水)~6月23日(日)12時~17時 ※月・火曜は休館
入館料:一般400円、中高生200円
場所:高麗博物館(地下鉄「東新宿」駅徒歩4分)
関連講演:3月30日(土)14~16時・「東京2.8宣言と3.1運動」尹素英(韓国独立記念館学術研究チーム長)
※参加費は入館料含む1000円、電話にて要予約
主催・問合せ:高麗博物館/Tel:03-5272-3510

◇東京
3.1朝鮮独立運動100周年 東京集会

日時:3月1日(金)18時半~19時半
会場:新宿東口アルタ前
内容:リレートーク(朝鮮学校差別問題、ヘイトスピーチ、徴用工裁判、在沖米軍基地問題、「慰安婦」問題など)、キャンドルアクション
主催・問合せ:2019 3.1独立運動100周年キャンペーン/Tel:03-3362-6307


◇留学同がシンポ

 日本の大学に通う同胞学生たちは、「3・1」の灯火が日本にいる留学生から始まったとして、100周年の意義を見つめる行事を意欲的に準備している。「日本では今なお侵略・支配の歴史を向き合うことはおろか、近現代の歴史を否定しようとする動きが強まっている」として、東京では3月3日のシンポジウムの前に王子駅前公園に集合し、示威行進を行う。
 歴史家を集めたシンポジウム、関西、東海地方の学生たちが上演する演劇に注目が集まる。



●大阪
『怪物』たちの行進-朝鮮と日本、歴史と現在-

日時:3月2日(土)13時半開場、14時~17時
場所:クレオ大阪東(JR「京橋」駅南口徒歩10分)
入場料:1000円(高校生以下無料)
内容:第1部綜合文化公演「『怪物』たちの行進」/第2部シンポジウム「支配と闘争、その150年~「現在」をどのように認識し、行動(連帯)すべきか~」(康成銀・朝大朝鮮問題研究センター長/吉澤文寿・新潟国際情報大学教授)
主催・問合せ:留学同京都・兵庫・大阪(3.1.100.rht.kaibutsu@gmail.com)



●愛知
留学同東海綜合文化公演2019
《파란 등불(青い灯火)》 ~私たちの3.1独立運動~

日時:3月1日(金) 18時半開場 19時開演/3月2日(土) 18時開場 18時半開演
場所:レンタルスタジオ異空間(名鉄瀬戸線「喜多山」駅徒歩10分)
入場料:1000円(高校生以下無料)
内容:創作舞踊、サムルノリ、演劇、大合唱など
主催:留学同東海(Tel:080-5129-7599/E-mail:suryeol0704@gmail.com)


●東京
3・1人民蜂起100周年記念展示会
日本と朝鮮の150年史―日本の植民地支配と分断に抗して―

日時:3月1日(金):13~21時/ 3月2日(土):10~18時
場所:ムーブ町屋4Fミニギャラリー(地下鉄千代田線・「町屋」駅徒歩1分)
2日(土)15時
特別映像上映会「あの涙を忘れない!日本が朝鮮を支配した36年間」(日本映像記録センター・テレビ朝日、1989年、ドキュメンタリー/1時間半)、ゲストトーク:洪昌極さん(一橋大学大学院社会学研究科博士課程)「三・一運動の歴史的意義」
主催・問合せ:留学同東京・西東京・埼玉・神奈川県本部/E-mail:tokyorht@gmail.com Tel:03-6272-6607


●東京
シンポジウム「三・一」100年が問いかけるもの

日時:3月3日(日)13時半開場、14時開始
資料代:1000円(※学生500円)
会場:北とぴあペガサスホール(JR「王子」駅徒歩3分)
登壇者:康成銀さん(朝鮮大学校朝鮮問題研究センター長)「いま問い直す日本の植民地支配責任 ―日本の侵略・支配と民族独立運動―」/康宗憲さん(韓国問題研究所所長)「在日朝鮮人にとっての「三・一」100年―日本の過去清算と朝鮮半島の平和統一に向けて―」
主催・問合せ:留学同東京・西東京・埼玉・神奈川県本部/E-mail:tokyorht@gmail.com、Tel:03-6272-6607
※シンポジウムの前に示威行進を行う(12時終了予定)

●九州
『三・一』を記憶する~立ち上がろう、民族を生きる全ての人たちよ~

日時:3月1日(金)17時~20時半
内容:同胞青年学生たちによるディスカッション、3.1人民蜂起に関する映像上映・展示会
参加費:500円
会場:ウェルとばた 83・84会議室(JR「戸畑」駅徒歩1分)
問合せ:Tel:03-6272-6607/E-mail:rht@ryuhaktong.org