この日刊イオに、「日本は朝鮮を敵対視するな」とか、「朝鮮学校を差別せず高校無償化を適用せよ」とか、少しでも日本を批判するようなことを書くと、必ず「抗議のコメント」を送ってくる人たちがいます。たぶん、日本人なのでしょう。仮名で正体を明かしていないのでわかりませんが。
例えば、日本軍「慰安婦」問題を書くと「日本に補償する義務はない」というコメントが来たり、日本は朝鮮と仲良くすべきだということを書くと「あんな北朝鮮は敵視するのは当たり前」というコメントが来たり、高校無償化のことを書くと「朝鮮学校は外国人学校だからお金を出す必要はない」「朝鮮学校は反日教育をしているのでお金を出す必要はない」というコメントが来たりという感じです。
話は変わりますが、9月16日の日曜日に都内で「仮放免者の会 第2回大会」が開かれました。私も今年のはじめに仮放免者の方たちを取材し月刊イオで取り上げたので参加しました(写真)。
仮放免者について一般の人たちはほとんど知らないと思うので、何度でも書いてその存在を一人でも多くの人に知ってもらいたいと思います。
さまざまな理由で母国に住めなくなり日本にやってくる外国人は少なくありません。しかし、例えば難民の人たちが日本に来てもほとんどが「難民認定」を受けられず、在留資格を持たないまま日本で生活することになります。難民だけでなく多くの外国人が在留資格がないままに日本で暮らしています。日本の入管は、正規の在留資格をもたない外国人をすべて収容することを「原則」としており多くの人たちが入管の施設に収容されています。長い場合は1年も拘束されことがあります。しかし、在留資格をもたない外国人をすべて収容することは現実的に不可能で、一旦収容した外国人を外に出すことになります。それを「仮放免」と言い、仮放免の状態にある人たちを「仮放免者」と呼びます。
最近、入管の収容施設の職員が「外国人をいじめるのが楽しい」というようなことを言って問題となりましたが、収容施設内では非人道的な待遇(まともな医療を受けられないなど)を受けています。仮放免されても、日本に5年、10年と住んでいても在留資格をもらえなかったり職につけなかったり移動の自由がなかったりと、人権を蹂躙されています。こういった状況を前に、人間としての当たり前の権利を勝ち取ろうと仮放免者自身が立ち上がり、1年ほど前に結成したのが仮放免者の会でした。
この1年間、仮放免者と支援者らは集会やデモをもち入管当局や日本社会に問題を訴えるなどの運動を行ってきました。そして、第2回の大会をもつに至りました。
第2回大会当日、会場には座りきれないほどの人が集まり、熱気に包まれていました。仮放免者の会は関東だけでなく東海地方、関西地方でも結成され、運動が拡大しているそうです。外での仮放免者らの闘いと入管内での闘い(ハンストなど)とが呼応して大きな成果がもたらされています。長期の収容がなくなったり、仮放免者が2度3度と収容される再収容がなくなったり、仮放免の際に必要な保証金の額が低くなったりしています。
第2回大会で、リーダーの一人が前に出て集まった仮放免者たちに語り質問しました。「職員たちは入管内で問題を起こしたら仮放免させないと言ったが本当か?」と彼が問うと、会場から「いや違う。闘ったから収容が短くなった」と声が上がります。「収容期間が短くなり再収容がなくなったのはなぜか?」と彼が問うと、「われわれが闘ったからだ」とまた声があがります。そして彼が「闘うためにはわれわれが団結しなければいけない」と言うと、大きな拍手が場内から沸き起こります。
その光景を見ていて、胸が熱くなりました。われわれ在日同胞は現在、ある一定の権利をもって暮らしていますが、それらの権利の中で日本政府が自ら進んで与えてくれたものは一つもありません。1世の時代から同胞たちが団結し闘って、一つずつ勝ち取っていったものです。団結し組織を作り、学校を作ってきました。いま仮放免者の人たちは同じ道を歩んでいる。
連帯のあいさつをした日本人の弁護士は、昔も今も日本政府の在日外国人政策の基本は「在日外国人に人権はない」というものだと語りながら、仮放免者たちの闘いで、いま日本政府は追い詰められて窮地に立たされていると強調しました。
長期収容もできない、再収容もできない、そして来年には新しい入管体制がスタートするなかで、仮放免者の存在が日本政府にとってはもっとも頭が痛い、解決するには仮放免者に在留資格を与えるしかない―大雑把に言うとこういうことになります。
仮放免者の闘いが、頑なな日本政府の態度を変えざるを得ないようにしている。すなわち日本社会を人権を尊重するより進んだ社会に変えているのだと、大会に参加して思いました。
ネット上で排外主義的な言葉を垂れ流す人たち、在特会のように朝鮮学校を襲撃する人たちは、たぶん自分たちが日本のために行動しているのだと思っていることでしょう。しかし、本当にそうでしょうか。私から見れば仮放免者たちの方がよっぽど日本社会のために貢献しています。
日刊イオに送られてくる「抗議のコメント」に対して、ここで、一つひとつ反論を書くことはしません。今後、日刊イオのなかで触れることがあると思います。ただ、日刊イオでいろいろと日本社会に対して書くのは、日本社会が少しでもより良い方向に向かうように願っているからです。そのことをぜひ、「抗議のコメント」を送ってくださる人たちに理解していただきたい。そして、これからもどしどしコメントを送ってもらいたいと思います。(K)
例えば、日本軍「慰安婦」問題を書くと「日本に補償する義務はない」というコメントが来たり、日本は朝鮮と仲良くすべきだということを書くと「あんな北朝鮮は敵視するのは当たり前」というコメントが来たり、高校無償化のことを書くと「朝鮮学校は外国人学校だからお金を出す必要はない」「朝鮮学校は反日教育をしているのでお金を出す必要はない」というコメントが来たりという感じです。
話は変わりますが、9月16日の日曜日に都内で「仮放免者の会 第2回大会」が開かれました。私も今年のはじめに仮放免者の方たちを取材し月刊イオで取り上げたので参加しました(写真)。
仮放免者について一般の人たちはほとんど知らないと思うので、何度でも書いてその存在を一人でも多くの人に知ってもらいたいと思います。
さまざまな理由で母国に住めなくなり日本にやってくる外国人は少なくありません。しかし、例えば難民の人たちが日本に来てもほとんどが「難民認定」を受けられず、在留資格を持たないまま日本で生活することになります。難民だけでなく多くの外国人が在留資格がないままに日本で暮らしています。日本の入管は、正規の在留資格をもたない外国人をすべて収容することを「原則」としており多くの人たちが入管の施設に収容されています。長い場合は1年も拘束されことがあります。しかし、在留資格をもたない外国人をすべて収容することは現実的に不可能で、一旦収容した外国人を外に出すことになります。それを「仮放免」と言い、仮放免の状態にある人たちを「仮放免者」と呼びます。
最近、入管の収容施設の職員が「外国人をいじめるのが楽しい」というようなことを言って問題となりましたが、収容施設内では非人道的な待遇(まともな医療を受けられないなど)を受けています。仮放免されても、日本に5年、10年と住んでいても在留資格をもらえなかったり職につけなかったり移動の自由がなかったりと、人権を蹂躙されています。こういった状況を前に、人間としての当たり前の権利を勝ち取ろうと仮放免者自身が立ち上がり、1年ほど前に結成したのが仮放免者の会でした。
この1年間、仮放免者と支援者らは集会やデモをもち入管当局や日本社会に問題を訴えるなどの運動を行ってきました。そして、第2回の大会をもつに至りました。
第2回大会当日、会場には座りきれないほどの人が集まり、熱気に包まれていました。仮放免者の会は関東だけでなく東海地方、関西地方でも結成され、運動が拡大しているそうです。外での仮放免者らの闘いと入管内での闘い(ハンストなど)とが呼応して大きな成果がもたらされています。長期の収容がなくなったり、仮放免者が2度3度と収容される再収容がなくなったり、仮放免の際に必要な保証金の額が低くなったりしています。
第2回大会で、リーダーの一人が前に出て集まった仮放免者たちに語り質問しました。「職員たちは入管内で問題を起こしたら仮放免させないと言ったが本当か?」と彼が問うと、会場から「いや違う。闘ったから収容が短くなった」と声が上がります。「収容期間が短くなり再収容がなくなったのはなぜか?」と彼が問うと、「われわれが闘ったからだ」とまた声があがります。そして彼が「闘うためにはわれわれが団結しなければいけない」と言うと、大きな拍手が場内から沸き起こります。
その光景を見ていて、胸が熱くなりました。われわれ在日同胞は現在、ある一定の権利をもって暮らしていますが、それらの権利の中で日本政府が自ら進んで与えてくれたものは一つもありません。1世の時代から同胞たちが団結し闘って、一つずつ勝ち取っていったものです。団結し組織を作り、学校を作ってきました。いま仮放免者の人たちは同じ道を歩んでいる。
連帯のあいさつをした日本人の弁護士は、昔も今も日本政府の在日外国人政策の基本は「在日外国人に人権はない」というものだと語りながら、仮放免者たちの闘いで、いま日本政府は追い詰められて窮地に立たされていると強調しました。
長期収容もできない、再収容もできない、そして来年には新しい入管体制がスタートするなかで、仮放免者の存在が日本政府にとってはもっとも頭が痛い、解決するには仮放免者に在留資格を与えるしかない―大雑把に言うとこういうことになります。
仮放免者の闘いが、頑なな日本政府の態度を変えざるを得ないようにしている。すなわち日本社会を人権を尊重するより進んだ社会に変えているのだと、大会に参加して思いました。
ネット上で排外主義的な言葉を垂れ流す人たち、在特会のように朝鮮学校を襲撃する人たちは、たぶん自分たちが日本のために行動しているのだと思っていることでしょう。しかし、本当にそうでしょうか。私から見れば仮放免者たちの方がよっぽど日本社会のために貢献しています。
日刊イオに送られてくる「抗議のコメント」に対して、ここで、一つひとつ反論を書くことはしません。今後、日刊イオのなかで触れることがあると思います。ただ、日刊イオでいろいろと日本社会に対して書くのは、日本社会が少しでもより良い方向に向かうように願っているからです。そのことをぜひ、「抗議のコメント」を送ってくださる人たちに理解していただきたい。そして、これからもどしどしコメントを送ってもらいたいと思います。(K)
関西での在日外国人の状況についても、取材し月刊イオに掲載したいと思っています。よろしくお願いします。
今後、月刊イオも手にとってお読みください。
この件ではじめて、月刊イオの存在を知りました。大阪でも、何人もの在日コリアンの方が難民の支援にかかわってくれています。