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無償化問題、九州も国を提訴

2013-12-21 09:00:00 | (淑)のブログ
 「高校無償化」から朝鮮高校から排除されている問題で、大阪、愛知、広島に続き、4件目となる訴訟が九州で提訴されました。九州朝鮮中高級学校(北九州市八幡区)の在校生、卒業生ら67人が19日、国に損害賠償を求める訴訟を福岡地裁小倉支部に提訴。訴状提出に先立って、弁護団、生徒、保護者をはじめとする同胞、日本の支援者ら約200人のデモ隊が小雨の中、地裁周辺を行進し、差別是正を訴えました。





 原告側は、日本政府が①2010年11月27日から2013年2月20日に至るまで朝鮮高校を無償化の対象に指定しなかったこと、②2013年2月20日、規定ハ号を削除し、朝鮮高校について不指定処分を行ったこと、③2月20日以降、現在に至るまで無償化の対象と指定しないでいることは違法違憲であり、これによって平等に教育を受ける権利や経済的援助を受ける権利を侵害されたとして、各原告生徒一人あたり慰謝料10万円、弁護士費用1万円、計737万円の慰謝料の支給を求めました。
 提訴後に開かれた報告集会及び記者会見で弁護団の安元隆治弁護士は、問題の本質は日本社会に根深くある在日朝鮮人に対する差別・偏見の現れであると指摘。「この訴訟を通じて少しでも問題の抜本的解決につながるよう、臨んでいく」と話しました。



 現在、無償化問題をめぐって係争中の裁判は、大阪が「高校無償化」指定を求める「義務付け訴訟」(行政訴訟)で、広島と愛知は同じく「義務付け」とともに、制度除外に対し損害賠償を求めています(民事訴訟)。
 九州で国賠訴訟を選択した理由については、福岡県下で行政訴訟を起こせるのは福岡地方裁判所の本庁だけで、小倉支部では行政訴訟ができないという裁判所の事務分配に関することもありますが、弁護団では今後の継続的な運動を考え、まずは北九州(小倉)を本拠地とすることとしたというのが一点。そして「高校無償化」の受給権は生徒一人ひとりにあることを重視し、多くの生徒が原告に立つことによって全国的な運動として盛り上げ、裁判所だけでなく国会までも動かし法律を是正するところまで目指したいとの思いからだといいます。なお、追加訴訟については引き続き検討中だとしています。

 九州の弁護団は60人で、弁護士の数は全国で最多。中心となっているのは同校出身の金敏寛弁護士をはじめとした地元の若手弁護士らです。前出の安元弁護士は、同期である金敏寛弁護士の呼びかけで初めてこの問題に携わるようになったといいます。提訴に向けて行った個人面談で生徒らが「後輩たちのために原告に立つ」と口々に話していたことが印象的だったそうで、「まさに自分だけの問題でなく、自分たちの学校を守っていきたいという思いを感じた。今後、当事者の意識を大切にして意見交換しながら訴訟を進めていきたい。この裁判運動に多くの日本人を巻き込んで、在日同胞社会と一歩でも二歩でも近づきたい」と話してくれました。

 高校3年生のある男子生徒は訴訟について、「不安もあり複雑な心境だけど、この裁判が自分たちの未来が開ける希望でもあると信じたい。全国の朝高生と団結してがんばっていきたい」と話していました。
 提訴の翌日に学校を訪ねると、前日のこわばった表情とは打って変わって子どもらしい無垢な笑顔で迎えてくれた生徒たち。学期末の総括や大掃除の慌ただしい合間にも、前日の提訴を報じたニュース番組の録画を、中学1年生から高校3年生まで全校生徒が順番で観ており、自分たちの学校でも長い闘いの火ぶたが切られたことを、学校中がひしひしと実感している空気が伝わってきました。

 一方、広島では18日、第一回口頭弁論が広島地裁で開かれ、48席の傍聴席を求め、多数の同胞、支援者らが裁判所に集まりました。広島朝鮮学園の韓政美理事長と足立弁護団長による意見陳述の後、別法廷に移り、生徒代表による意見陳述が非公開で行われました。とくに韓理事長と生徒による陳述は、それぞれの原体験に基づいて朝鮮学校と民族教育への思いが切々と語られ、傍聴席のあちこちですすり泣く声が聞こえてきました。「私たちは朝鮮人として胸を張って学び、育ち、受け継ぎたいだけなのです」。裁判官の前でそう訴える堂々たる姿に、傍聴席でメモを取っていた私も思わず手を止め、じっと聞き入っていました。



 その後の報告集会及び記者会見では、客席の保護者や支援者らからも「この問題は朝鮮学校の問題ではなく、日本の社会の中、日本の国内にある、日本の問題。そういう意識でこの問題に関わり続けて欲しい」「こんな日本社会でいいのか。日本人としても負けられない裁判」などと訴えが相次ぎました。
 まさに、人としての尊厳、朝鮮人として生きる権利をかけた裁判であるという、闘いの本質を突く第一回公判とその後の会見だったと思います。
 次回公判は来年3月12日。より多くの方が法廷に足を運び、生きた声を聞いてほしいと思います。(淑)

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