Going For The One (Remastered Version)
偉大なロック・バンド、イエスを語る時は
どうしても、「こわれもの」「危機」VS 「90125(ロンリーハート)」時代のイエス という構図になる感じがする。
特に、70年代にリアルタイムでロックを聴いてない40代以下の方々はそうなりがちかも。
それは、上記3枚のアルバムがあまりにも優れているからなのだからしょうがない。
複雑で、緻密な不可思議なロックを編み出した「こわれもの」「危機」とポップで音の隙間をうまく使った「90125」の比較は議論すると面白いのだ。
「90125」は時代に迎合したとか、トレヴァー・ラビンがいけないとか、エイジア同様のポップ化プログレの批判の対象となったりもした(これは、60代以上のプログレマニアに多い意見かも)。
でも、忘れてはいけない。
ポップ化は70年代の後半に起きたのだ。
私は、この曲を聴いたときはぶっ飛んだ。
ええっ?これがイエス?
軽い!軽薄?
スティーブ・ハウのスライド・ギター?
似合わねーぞ!
何だこれは?
と驚いた。
でも、「でも、聴きやすいなあー。こういうのもありかも!」とも思ったのも事実だったのだ。
実際、イエスは行き詰っていた。
「海洋地形学の物語」はイエスマニアにとっては、素晴らしい作品だったかもしれないが、普通のロックファンにとってはちょっと耐えられない長さの曲の作品だった。
しかも哲学的な雰囲気はついていけないと感じたかもしれない。
「リレイヤー」はかっこよかったが、ちょっと音が冷たく、何か高揚感がなかった。
何か違うと思ったファンも多かったと思う。
ぜひ違う展開がほしいと思ったのはファンサイドだけでなく、制作側もそうであったと思う。
結局、リック・ウエイクマンが戻っても、「こわれもの」「危機」の焼き直しは行われなかった。
そして・・・
ポップなイエスが生まれたのだ。
この曲を聴くと、「ロンリーハート」も「エイジア」も違和感を感じなくなる。
そういう作品である。
リマスターを聴くと、細かいアレンジがよくわかって、発売されたときよりいい曲に感じる。
けっこう、いい作品かもしれない・・・そう思うこのごろだ。