King Crimson - Starless
クリムゾンの作品の中で、いや70年代のプログレッシブ・ロックの作品の中で最も好きな作品である。
80年代にクリムゾンは復活するのだが、
いわゆる全盛期の彼らはこの曲で一旦、幕を閉じるのである。
ロバート・フィリップ、ジョン・ウエットン、ビル・ブラフォードという最強のトリオは究極の傑作で自分たちのやりたかったことを終えた。
クリムゾン・ファンならみなさんご存知なのだが、太陽と戦慄からこのレッドまで時期の彼らのライブ・パフォーマンスはものすごい緊張感で満ちていて、フリージャズ的な味わいを持ちつつあくまでロックするというかっこよさがあった。
彼らはどうなっちゃうんだろうというような狂気にも似たパフォーマンスだった。
(そのころの音のウネリとしかいいようのない長い演奏は、ライブ作品で堪能できる。)
そして、発表されたラストスタジオアルバム、「レッド」。
実に素晴らしいアルバムである。前述のフリージャズ的な混沌の演奏を含みながらもあくまで叙情性のあるメロディを柱に、緊張の継続とその崩壊、激しさと優しさ、動と静を巧みにバランスしていた。
そして、このバンドを終わらせるというようなメッセージを、この曲でリスナーに提示していたような気がしたものだ。
そのようなメッセージを感じながらもリスナーとしては、十分満足した。
ついにここまでやったんだという感じがしたからだろう。
もちろん、彼らの最高傑作として、ファーストアルバムの「クリムゾン・キングの宮殿」をあげる人が多いのは百も承知であるが、私は、この作品が収められた「レッド」のもつリアルで冷たい感覚のほうが好みである。研ぎ澄まされたナイフに触るような感覚。楽器の音同士が戦う生々しさ。若かった彼らが突っ走って、行き着いた世界と言えばいいのだろうか。あまりの完成度に驚くしかない。そしてひれ伏す。
ロックのかっこよさは、こういう曲で語り合いたい。