とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

キートンのセブンチャンス

2007年01月14日 15時41分52秒 | バスター・キートンと仲間
『キートンのセブンチャンス』
(別題:キートンの栃麺棒 Seven Chances バスタ-・キ-トン監督 1925 アメリカ)


どうしよう・・・ますます恋しちゃった・・・♪

<あらすじ>
若き株仲買人のジミー(バスター・キートン)は、親友のビリー(T・ロイ・バーンズ)と共同で証券会社を経営しているが、多額の負債をかかえて追い込まれている。そこへ、ジミーの祖父が遺産をのこして亡くなったとの知らせがくる。しかし遺言にはひとつ条件が。ジミーが27才の誕生日の夜7時までに結婚すれば、遺産を相続できるというのだ。27才の誕生日は、なんと今日!あと数時間で誰かと結婚しなければならないジミーは、最愛の女性メリー(ルース・ドワイヤー)のもとへかけつけるが・・・


お正月の間、キートン映画をいくつかまとめてDVD鑑賞する機会にめぐまれました。『キートンの探偵学入門(または忍術キートン)』、『荒武者キートン』、『キートンの大列車追跡(またはキートンの将軍)』、そして本作。

ああ・・・なんておもしろいんだ・・・なんてすてき、なんてかわいい人なんでしょう!

『セブンチャンス』は、キ-トン自身はあまり好きな作品ではなかったらしく、ファンの間でも「キートンらしからぬ作品」という評価があるんだとか。

キートン初心者のわたしには、その理由はよくわかりませんが、むしろ知らないからこそ先入観なく楽しめたのかもしれません。

とにかく、一度目で爆笑につぐ爆笑、二度目は爆笑&感嘆、三度目には爆笑&涙ホロリ・・・と、くりかえしくりかえし観てしまいました。


クリス・オドネル主演の『プロポーズ』(1999)を観た方にはピンときているでしょうが、元ネタがこの『セブンチャンス』だったんですね。わたし初めて知りました。もちろん、花嫁の大集団におっかけられる場面が『セブンチャンス』のクライマックスです。

ジミーはいろんな女性にプロポーズしてまわるが、ことごとく断られ、万策尽き果てて、ついに「花嫁募集」の新聞広告を出す。百万長者の妻になれるとあって、大量の花嫁が教会に集まってくるのだが、驚いた神父の「あなたがたは騙されとるんですよ!」の一言に、女たちは怒れる花嫁の大群と化し、ジミーに猛然と襲いかかる・・・(笑)。

もう、なんというか・・・逃げるキートンのアクションがすごいのはアタリマエなんだけど、その撮り方が、とにかく粋というかしゃれてるというか、とにかくセンスがいいのです。

誰もいない教会に、ひとりまたひとりと花嫁があつまってくる場面とか(ヒッチコックの『鳥』はもしかしてこれをパクった!?)、通りを歩くキートンの背後に、花嫁たちがせまってくる場面とか・・・。

くわしく書きたいけど、このおもしろさはとても言葉にできない!とにかく観てください、としか言えません。

なぜか荒野に逃げのびたキートン、山の斜面で今度は大量の落石から逃げるハメに。この場面が圧巻です。あれこれと手を変え品を変えたギャグでみちあふれていて、そのすべてがキートンの決死のアクションにかかっている。

「決死」って、比喩じゃないですよ。マジなんですよ。本当にマジで、命がけのアクション。
しかも、それを誇示しようともせず、ただただ彼は観客を笑わせようとしている。笑いに文字通り命をかけるコメディアンが、ここにいる・・・!


アクション以外でも、各ショットに必ずなんらかのギャグを入れるその姿勢。
たとえば、養蜂場でキートンが逃げまどう場面では、画面の隅に「Honey For Sale」の立て看板が映っている。もちろん「蜂蜜売ります」の看板だけど、「夫」の意味のHoneyもひっかけてるんですね。小粋だねえ~!


映画の中では終始無表情だったキートンは、「偉大なる無表情(Great Stone Face)」と呼ばれているそうです。

キートンの代名詞のひとつ「Seriously Funny」・・・直訳すれば「マジでおもしろい」ですが、キートンの場合は「マジメな顔しておもしろい」であり、「おもしろいことをマジメにやる」ということでもあるんでしょう。


困ったなァ・・・80年も前のコメディアンに恋しちゃうなんて。
この切ない想い、どこにぶつければいいのかしら・・・(ためいき)・・・






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