Box of Days

~日々の雑念をつらつらと綴るもの也~ by MIYAI

Iceman

2005年05月19日 | old diary
 リバプールやロンドンには行ったことがないけれど、フリーホールドとアズベリーパークには行ったことがある。つまり、ビートルズの町には行ったことがないけど、ブルース・スプリングスティーンの町には行ったことがある……ということになる。

 でも、ニューヨークには行ったな。ジョンが最後に生きた町。僕はセントラルパークのベンチに座って、ダコタのアパートを見上げながら、ジョンのアコースティック・デモを聴いた。そのことは忘れられない想い出のひとつとなっている。

 そして、スプリングスティーンの町に行ったときのことも忘れることができない。あのときに町を歩きながらずっと聴いていたのは『Tracks』の1枚目だった。フリーホールドという小さな町。スプリングスティーンの家族が住んでいたという3つの家は、どれもなんなく歩ける距離の間にあった。そして青春の愚行と純情とすれっからしな感情が詰まったアズベリーパーク。

 ひとつの音楽やひとりのアーティストを好きになることは、誰かに恋をするのとどこか似ている。ささいなことが、その人と関わりがあるというだけで、特別なものに変わるのだから。あんなにささやかなフリーホールドが、哀しいほどに廃れてしまったアズベリーパークが、僕には特別な意味をもっている。こうして日本にいても、“Santa Ana”や“Zero and Blind Terry”を聴けば、あの日見た風景が鮮やかに蘇ってくる。“My Hometown”のシングル盤ジャケット、パレス、ストーン・ポニー、ボードウォーク、マダム・マリーの占い小屋。どういうわけか、そこに僕の10代の記憶が重なっていく。時空を越えて、スプリングスティーンと僕の時間がシンクロする。つくづく不思議なものだと思う。

 第二の聖地=フィリーで歌われた“Iceman”。メロディも歌詞もそれほどすぐれているとは思わないけれど、いい曲だし、スプリングスティーンが過ごした10代という時間に関わったあらゆる人や場所と密接に繋がっているという気はする。

 天国へとつづく道よりも
 地獄へつづくぬかるんだ道を進んだ方がいい
 明るく輝くフリーウェイよりも
 お前の親父の教会の影よりも
 ずっと待ちつづけるよりも
 自らすすんで探求した方がいい

 ちょっと陳腐かな。でも、10代とか20歳くらいの頃ってそんなもんだったような気もする。いくら醒めてみても、結局は醒めきれなくて、なにかがくすぶっていて、でもそのことに気づくのが死ぬほど恥ずかしかったりした…ような気がする。もう昔のことだから、忘れてることもすごく多いのだけど。