EMIRIO☆REPORT~雑貨ちょび読書たま~

☆日常生活を不定期レポするホニャララブログ☆

本泥棒

2007-10-15 | 読書小屋
     「本泥棒」 マークース・ズーサック著 入江真佐子訳  早川書房刊

わたしは死神。自己紹介はさして必要ではない。好むと好まざるとにかかわらず、いつの日か、あなたの魂はわたしの腕にゆだねられることになるのだから。
これからあなたに聞かせる話は、ナチス政権下のドイツの小さな町に暮らす少女リーゼルの物語だ。彼女は一風変わった里親と暮らし、隣の少年と友情をはぐくみ、匿ったユダヤ人青年と心を通わせることになる。リーゼルが抵抗できないもの、それは書物の魅力だった。墓地で、焚書の山から、町長の書斎から、リーゼルは書物を盗み、書物をよりどころとして自身の世界を変えていくのだった・・・。   ーカバー解説よりー

「リビアの小さな朱い実」という本でカダフィ大佐の独裁政治のもと制限された市民の暮らしを知って暗~い気持ちになった後、素敵なタイミングで「独裁政権つながり」とも呼べそうな本書の予約はめぐってきました。 もちろん、「リビア」がこんな暗い話だって知らなかったんですけど。

「本泥棒」のストーリーテラーはなんと死神です。 けっして明るい案内人とは言えません。 けれど、読み進んでいくとこの死神の存在が読者である私の救いとなっていることに気づきます。 もし話を語るのが、主人公のリーゼルだったとすれば、私は「戦争」ではなく、「連合軍」や「ナチスドイツ」「ソ連軍」といった敵味方の存在を憎んだかもしれません。 戦争平和に関係なく、平等に死を看取る死神が語ることによってこそ、より「戦争」の悲惨さ・無意味さを強調することができたのだと思います。 それは作者の意図であったのかもしれません。 

はっきり言って、この本をおすすめするつもりはないんです。 
なんたって長い話だし、映画化される予定もあるそうですから(あとがきで知りました)、そちらで十分だと思います。 ちなみにこの本の私個人の死神のイメージは「ベルリン天使の詩」みたいなおじさん死神です。 以前も書きましたが、暗い話は基本的にオススメしないです。 なのに何故、ここに紹介したのかといえば、ずばり、「感動」したからです! 後半は涙とハナミズで本を汚さないよーにどんだけ気を配ったか!! 最終的にはティッシュを両鼻に詰め込んでその先っちょで涙をふくという世界最低のカッコ&行儀悪さです。 あー、久々に大泣きした~。 さらに言えば、絶望の涙というわけではなく、悲しみのなかにもほんのりと暖かい気持ちや生きる希望がアコーディオンの音色とともに聞こえてくる感じなのです。 なぜアコーディオンなのか? その理由は本書か、いつか上映されるかもしれない映画で確かめてみて下さいネ♪ 乾燥してきたこの季節、ドライアイ気味の私の目玉に、久々にうるおいを与えてくれた(「麦ふみクーツェ」以来かも?)作品でした。