翻訳者魂

人間は関係を持ちたい。人間は知られたい。人間は参加したい。人間は貢献したい。人間は自分に価値があると思いたい。

Fragile: Sting

2005-02-23 11:01:22 | 社会
スティングがFragileを書いたきっかけは、ある米国人の死だった。

1987年4月30日、太陽がギラギラと照りつける中、マタガルパの町を葬式の行列が進んでいた。棺の後ろにはニカラグア大統領ダニエル・オルテガと妻ロサリオ、そのさらに後ろにはアメリカ人デビッド・リンダーとエリザベス・リンダーが続いた。

棺の中にいたのはベンジャミン・アーネスト・リンダー。27歳のアメリカ人エンジニア。彼はニカラグアの戦闘地帯にある村に電力と水を供給するダムで働いていた。彼は、米国に支援されていた反サンディニスタ軍コントラに殺された。ベンジャミンの死は、世界中で報道された。

政府のニカラグア政策に反対する人々はベンジャミンを「英雄」と呼び、政府を支援する人々はベンジャミンを「合法的なターゲット」と形容した。「彼は社会主義者か?」ブッシュ副大統領は「ベンジャミン・アーネスト・リンダーは我々とは反対側にいた。」とコメントした。

CBS のダン・ラザーはコントラによる初めてのアメリカ人の殺害について次のように語った。「ベンジャミン・リンダーは革命の煽動者ではなかった。革命を語ったわけでもなければ、ライフルをニカラグアに運んだわけでもない。ベンジャミンは華奢で思慮深い男だった。23歳で快適で安全な米国を離れニカラグアに行った。そのとき、彼が何を求めていたのかはわからない。しかし、ベンジャミンは自分の目でニカラグアを見てみたかった。機械の知識と若さのエネルギーという武装だけで彼はニカラグアに向かった。彼の死は何千ものニカラグアでの犠牲とは意味が違う。彼は米国人の税金で買った武器で殺された米国人なのだ。彼の死は皮肉に満ちている。ベンジャミンは、米国が税金を使って壊している国を、立て直そうとしていた。そして、彼は米国の破壊の犠牲者となってしまった。この勇気ある米国人青年が快適な職場で高い給料を稼ぐのは簡単だったに違いない。しかし、彼は彼の良心に従った。」

ベンジャミンはニカラグアの戦闘地帯に行き、電力を村に届けた。 ベンジャミンは農民の子供たちと遊び一輪車ででこぼこ道を駆けた。彼は、そこがどれだけ危険なのかを知っていたが、その危険には十分価値があると思っていた。

ベンジャミンはこう書いている。「戦争と空腹がおさまるまで、エルクアが豊かになり子供たちがなんの心配もなく暮らせるようになるまで、ハーメルンの笛吹き男のように、この子供たちを戦争から隠していたい。でもそれはぼくにはできない。たとえできたとしても、その他の村を助けることはできない。その代わり、ぼくはみんなの役にたちたい。戦争が終わることを祈る。」



ブログ繋がり:

ハーメルンの笛吹き

ダン・ラザー


参照: Stingの音楽

参照: サッカー選手デラクルーズの夢

参照: The Death of Ben Linder

参照: ダン・ラザーが引退、米大統領軍歴誤報で傷 (ロイター) - goo ニュース


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3 コメント

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ありがとうございました (kaaa)
2005-02-27 01:01:11
先日はコメントをありがとうございました。

「Fragile」が意味しているものに対して、漠然と想像はしていましたが、このような事実の元、作られた歌だというのは初めてしりました。



とても悲しい現実の姿ですね。

これは米国に限らず、私達の問題でもあるような気がします。

いつも被害にあうのは、罪のない一般の人々です。とても悲しい現実です。



ブックマークをさせていただきます。

それではまた。





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はじめまして (Nao)
2005-02-26 19:09:17
先日は私のblogに、コメントをありがとうございました。

興味深いお話が多くて、いろいろ読ませていただきました。



昨年イラクで亡くなった日本人青年と、彼に対する世間の声を思い出しました。ちょうど昨日、中村哲氏の「アフガニスタンの診療所から」という本を読んでいて、様々なことに思いを馳せていたところです。



ブックマークに入れさせていただきました。

またお邪魔させてください。

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考えこんでしまいました (eirakusan)
2005-02-23 13:56:07
自分を見直す機会がこの記事によってさらに与えられました。einichiさんありがとう。



今日もFragileを何度も聴いていました。これから聴くFragileをまた別の心でとらえることができます。



米国のすべての矛盾がここには示唆されています。日本も同じようなことをしているのかもしれない。



私はほかの友人にもこの記事を知らせます。



拙い私の記事を後ほどTBさせてください。
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