翻訳者魂

人間は関係を持ちたい。人間は知られたい。人間は参加したい。人間は貢献したい。人間は自分に価値があると思いたい。

とらばーゆ

2009-11-24 18:11:32 | 文学
来る日も来る日も、立っても座っても、風呂でもトイレでも、英語とフランス語の単語ばかり眺めていると、なんだか、道に迷っていたのが、突然、知っている場所に出てきたような感覚を得られる瞬間があって、そんなときはとても幸せ。僕にとっては輝ける一瞬なんだけど、言語に長けた人はたくさんいて、そういうひとたちから見れば、ひじょうにくだらないのでごめんなさい。また、言葉に興味がないひとももちろんいるわけですから、そういう人にもごめんなさい。

今日は、ヘミングウェイの"IN OUR TIME"というのを読んでいました。医者であるお父さんが、子供をつれて、出産の現場に行き、お湯を湧かしている間に息子に話しかけます。


「この女の人はこれから子供を産む。わかるかい」
「はい」
「わかるわけないだろ。よく聞くんだよ。これからこの女の人がすることは、laborって言うんだ。赤ん坊はお母さんの体から出たがる。お母さんは赤ん坊に出てきて欲しい。お母さんの全身の筋肉は赤ん坊を外に出すためだけに使われるんだ。すぐにお母さんが叫び始める。それがlaborがはじまる合図だ」


"labor"の身元を調べてみます。なるほど、この言葉は、重荷を背負ってふらふらになりながら歩くというラテン語の"laborem"が元になっているのだな。そして、その同義語は "travail"か。"labor"よりも広い意味を持っているっと。語源は、古いフランス語の "travail" 。元の意味は「拷問」。

トラバーユですが、今のフランス語では、「仕事」または「勉強」を意味します。

添い寝クラブ

2008-01-30 00:38:51 | 文学
眠れる美女が流行っている。いくつかの雑誌で取り上げられたからだろう。

mixiのようなシステムを介して老人が老人を紹介する。老人が行くのはなんだか静かな二階家で、そこにはアンバランスな鳥が描かれた帯をしめた中年女がいる。この中年女が老人に言う。「おんなのこにへんなことをしちゃいけませんよ。」老人は手渡された鍵を使って、おんなのこが眠っている部屋に入る。おんなのこはなにかの薬で深い眠りの中にあるらしい。手を持ち上げて落としても目覚めない。落とされたままの形で、手はそこにありつづける。なんだか乳臭い。乳がでてるんぢゃないかと乳の先端をさわるが濡れてはいない。顔色がいいのは赤ビロードのカーテンが頬に映っているからかな。肌色の美しい娘と老人は添い寝をする・・・

このクラブのようなものには勃起しない老人だけが入れるのだが、じつはこの老人はまだ勃起する。

眠れる美女
川端 康成
新潮社
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ホームレス中学生の冒頭だけを読んだ

2008-01-26 11:50:26 | 文学
「一杯のかけそば」再び? 『ホームレス中学生』200万部へ(産経新聞) - goo ニュース

僕が中学生だったころ「中1コース」や「中一時代」という雑誌があり、そういう雑誌にはときどき『一週間一人旅』などという題名の小説が付録についてきた。中学生がひとりで旅をして、いろいろな人や出来事に遭遇するという内容。

『ホームレス中学生』の冒頭は、まるで少年冒険小説だ。

突然の家族解散で、主人公のホームレス生活が幕を開ける。ホームレスにあこがれているからかもしれないけれど、僕の胸は冒険が始まるようでワクワクする。

思春期の真っ只中にある主人公は、マンションからマキマキウンコに引っ越す。マキマキウンコから見る外の景色は、マンションから見る景色とは比べようもなく大きい。

主人公は、自分のちっぽけさと無力さを感じながらパンを噛み熱いファンタを飲む。そして、自分を保護してくれていた母の優しさを思い出す。

主人公はマキマキウンコから力強く一歩を踏み出そうとするのだが・・・

男の子ならワクワクする物語の始まりだ。名作『サバイバル』や『漂流教室』に没頭した大人は、土管基地で遊んだ少年時代に戻れるかもしれない。

ところでぼくは最初の14ページしか読んでいません。

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逆風満帆

2006-12-27 11:16:01 | 文学



逆風満帆


家族の病気、仕事の悩み、経済的な問題が原因でひどく落ち込み、誰にも会いたくない。眠れない。朝4時に布団に入り、3時間で布団から出る。

以前ここに書いた自殺しそうな人の見分け方 : 世界保健機関の報告に自分の状態があてはまり、ハッとする。友人が2年前に死んだときと状況もよく似ている。

自分が死んだら、家族がどんなに傷つくか。亡くなった友人の家族を見たのでよくわかる。

死ぬはずはないと思っているけれど、頭がキリキリしたときにどういう行動を起こすのか、予想はできない。特に、昨晩のような嵐は怖い。

自殺予防のサイトにアクセスしてみた。

「誰かに話すことが必要」というアドバイスがある。しかし、家族や友人や親戚には話せない。

いのちの電話の相談員に電話をしてみた。

ダイヤルしている間、助けて欲しい気持ちとどうせ親身になってはくれないだろうという気持ちが行き来する。

「ツーツーツー」、「ツーツーツー」、「ツーツーツー」。

何度かけても話中。今、まさに自分の命を絶とうとしている人がビジー音の向こうにいる。

ふと、新聞の切り抜きが目に入った。朝日新聞の「逆風満帆」。嘘ばかりついて、2回離婚した作家。3度目の結婚では、嘘をつかないことにする。「嘘をやめると、こんなに楽なんだ」と実感するくだりや、借金2億円を小説を書くことで返そうという話が、ぼくのギリギリの頭を撫でてくれたような気がした。

とりあえず、もう少し生きてみよう。

HOW TO DAD

2005-02-25 11:42:27 | 文学
子供が授けられたとき友人から"HOW TO DAD"という本をもらった。娘を背中におんぶして息子に自転車の乗り方を教えているお父さんが表紙に描かれている。父親が子供に教えること、たとえば、平べったい石で水面を切る方法、みみずに釣り針を刺す方法、ボートのこぎ方、ネクタイの結び方、敵チームを恐怖に陥れる野球選手のメーキャップ方法(目の下を炭で黒くしてマジックで無精ひげを描く) などをイラスト入りで説明している。この本の前書きがちょっと素敵。ご紹介しよう。

~ こどもが産まれるってこころにボーリングレーンができたようなもの ~

こどもが産まれるってことは、世界がひっくりかえるようなできごと。だって、自分よりも愛せるものがこの世にあらわれたんだ。

この本は、「おとうさんの三原理」をもとにしています。

第一原理は「ノスタルジー」。自分がおとうさんに教えてもらったことを、自分のこどもに伝える。すると、あのときの、たのしい記憶がどーっとあふれてくる。

第二原理は「ピーターパン」。40才でメリーゴーランドに乗ったり、砂の城を作ったりなんって、ふつうじゃできない。でも、こどもと一緒なら大丈夫。もういちどこどもになれるさ。

第三原理は「ミスターロジャース」。おとうさんっていうのは、こどもに対して権威を持ちたいもの。それと同時に、こどもの友だちでもありたいもの。友情はいろいろな笑い、経験、機会、時間を共有するなかで育まれる。

この本では、石投げや魚釣りや野球っていう昔遊びみたいなものから、写真の撮り方、オムレツのひっくり返し方、体操選手になる方法っていうモダンなことまで説明してます。クールな握手や風船ガムのふくらませ方やキャンプファイヤの組み方やトランプの切り方や最新式のネクタイの結び方も載せてます。

でも、この本で一番言いたいことは、こどもと一緒に楽しもう、笑おうっていうことです。

「こどもが産まれるってこころにボーリングレーンができたようなもの」って書いたけど、息子が自転車に乗れるようになった!娘が二塁打を打った!こういうのは、ボーリングで300点をだすよりもっともっと感動的なことだよ。