エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

スマートイノベーション第6回;「スマートプラットフォームを構築せよ!」

2013-03-15 06:33:48 | Weblog
 スマートグリッド、スマートコミュニティに関する新産業の創生やイノベーション(=スマートイノベーション)の6回目として、1.シリコンバレーの秘訣は、新たな技術を商業化するスピードとそのためのインフラ 、2.「スマートプラットフォーム」と「スマート会社」の構造でのプロジェクト推進を提案、3.従来のスマートグリッドの推進における“難点”とスマートプロジェクト 、について解説します。

 全文は以下の通りです。ご関心があれば、お読みください。


●シリコンバレーの秘訣は、新たな技術を商業化するスピードとそのためのインフラ

 今やICTとエネルギーの統合した“スマートバレー”へと変貌しているシリコンバレーは、そのネットワークの中心に位置し続け、競争力を低下させるどころか、向上させてきました。なぜ、シリコンバレーがネットワークの中心であり続けられるのか。今までの連載でその理由についてご紹介してきましたが、一言でいうと、シリコンバレーの秘訣は新たな技術を商業化するスピードとそのためのインフラが整っていることにあります。
 かつて商業化された技術は、必ずしもシリコンバレーで発明されたものではありません。トランジスタはベル研究所、インターネットの原型はアメリカの国防省が発明しました。これらの技術がシリコンバレーで花開いたのは、商業化のスピードとインフラの故です。商業化のスピードが速いのは、シリコンバレーが技術の革新に即応できる柔軟性を備えているからにほかなりません。2008年9月のリーマンショック、それ以降の金融危機で深刻な打撃を受けたアメリカ経済が再生しつつある起点はシリコンバレーですが、それはシリコンバレーがそのような柔軟性を保有し、10年以降の世界的なスマートグリッドの進展に応じて、いち早く “スマートバレー”へと変貌しているのです。

●「スマートプラットフォーム」と「スマート会社」の構造でのプロジェクト推進を提案
 こうしたシリコンバレーのダイナミズムを日本においても形成するため、新たな技術を商業化するスピードとそのためのインフラとして「スマートプラットフォーム」と「スマート会社」の構造でスマートグリッド関連のプロジェクトを推進することを提案したいと思います。
 このうち「スマートプラットフォーム」は、1990年代後半のIT革命勃興時の「スマートバレー公社」に相当するものです。IT革命勃興時においては、シリコンバレーにおいて誕生した「スマートバレー公社」(ジョン・ヤング会長(元ヒューレット・パッカードCEO)、ビル・ミラー副会長(スタンフォード大学教授)、ハリー・サール社長(起業家))がインターネットの民生利用のパイロット&ファシリテーターとして機能しました。「スマートバレー公社」は非営利の民間会社として認められた簡素で柔軟な組織体であり、数名の事務局で構成されていました。
 実際の活動は、当時の「現在利用可能な最善の技術」(BAT;Best Available Technology)であるダイアルアップ技術を活用した「コマースネット」(インターネットを活用した商取引)、「スマートスクール」(インターネットを活用した教育)、「テレコミューティング」(インターネットによるテレワークの促進)などのプロジェクトをコンソーシアム方式で推進することで遂行されました。たとえて言えば、インターネットのネットワーク環境として光ファイバーや無線ブロードバンドが整備されたから革命が起こったわけではありません。ダイアルアップの下でもメール送受信、ホームページ閲覧、電子商取引、テレコミューティング、遠隔教育などができることを実証して膨大な数のユーザに使用させ、それにより膨大な需要を創出して需要と供給との好循環のサイクルを作り上げ、その上で速度が遅いので何とか早くしてほしいとのユーザの切実なウォンツに基づいて、ADSL、光ファイバーや無線ブロードバンドへとネットワーク環境をグレードアップしてきたから、インターネットという変革が「革命」になったのです。
 「ダイアルアップ→ADSL→光ファイバーや無線ブロードバンド」という発展パターンであって、その逆ではありません。詳細は「スマートプロジェクトはST革命のパイロット&ファシリテーター」および「スマートプロジェクトはソーシャルエンジニアリングを重視します」(http://www.smartproject.jp/about)を参照してください。

●従来のスマートグリッドの推進における“難点”とスマートプロジェクト
 従来のスマートグリッドの推進は、いきなり光ファイバーや無線ブロードバンドに相当する段階に行こうとして、国が指定する4つの地域において、技術開発やそのための実証事業だけをリニアに推進しているところに問題がありました。
 スマートグリッドにおいても、インターネットによる「サイバーワールド」での変革力と相まって、ユーザそれぞれが主体となり、それをサポートするアプリケーションが提供されて、HEMSやBEMSなどにより構築されるスマートネットワークそのものが相乗効果によって付加価値を付けていって需要が指数関数的に拡大する構図を構築することが必要です。
 また、日本には技術者と市場をつなぐプロデューサのような存在が少ないことから、大学やベンチャーに眠っている技術を商業化まで引き上げることのできるプロデューサ人材の育成も行うことも必要です。
 私が代表を務める一般社団法人スマートプロジェクトは、こうした“難点”を克服するため、「スマートプラットフォーム」と「スマート会社」の構造でのプロジェクト推進を提案するとともに、栃木県足利市における「足利市民総発電所構想」(http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/page/souhatsuden.html)へのサポートなどの具体的な事業を展開して、その実践に努めています。
 次回は、「スマート会社」の在り方について解説してみたいと思います。