ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

素晴らしき哉、人生

2023年03月27日 | 映画みたで

監督 フランク・キャプラ
出演 ジェームス・スチュアート、ドナ・リード、ライオネル・バリモア、ヘンリー・トラヴァース

 いかにもアメリカ人が好むファンタジー映画である。大昔、早川が「異色作家短編集」という叢書を出していたが、その中に入っていそうなお話しだ。
 天使のクラレンスは2級だから翼がない。上司の大天使からあの男を救ったら翼を与えるといわれる。その男ジョージはまもなく自殺する。クラレンスはジョージの守護天使となる。ジョージは今までいかなる人生を送って来たか、よく知っておくように。クラレンスは大天使にジョージの人生を照会される。
 桂米朝師匠がマクラによういわはるんですが「弱り目にたたり目。泣きっ面に蜂。ワラ打ちゃ手打つ。便所に行ったら先にだれか入っとる」ジョージの人生はまさにこの米朝師匠のマクラみたいな人生だった。
 冬、弟が池にはまった。弟は助けたが自分は左耳が聞こえなくなった。高校を卒業したら世界を旅行して大学に入って、建築家になって大きな仕事をしてやるんだ。小さな住宅金融会社を経営してた父が急死。会社は弟が継ぐはずだったが弟は結婚、妻の父の会社を手伝うことになった。急遽ジョージが新社長に。旅行と大学はパー。幼なじみの恋人のメアリーと結婚するが会社の資金繰りが苦しい。出資者に責められる。新婚旅行にも行けず。それでも4人の子宝に恵まれたが、最大の危機に。
 会社の重役としてジョージを支えてきた叔父が会社の金を紛失。どうも商売敵の因業家主のポッターの画策のような。その金がないと会社はつぶれジョージは逮捕される。もう死ぬしかない。米朝師匠の落語なら、ジョージは法螺尾福海、和屋竹の野良一、松井泉水、山井養仙の4人の亡者とともに人呑鬼相手に楽しく地獄めぐりするのだが。なんせこれはキリスト教色の強い映画。閻魔や人呑鬼、4人の亡者がいるような仏教色の地獄には行きません。
 2級天使クラレンスに助けられる。「そんなに死にたいのか」「ぼくなんかいない方がいいんだ」「ではきみがいない世界をみせてあげよう」
 ジョージのいない世界をジョージは見る。「ぼくの人生捨てたもんじゃないな」
ちゃんちゃん。おあとがよろしいようで。