ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

チョコレートドーナツ

2023年03月13日 | 映画みたで

監督 トラヴィス・ファイン
出演 アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイヴィア

 静かな怒りと大きな悲しみで、この映画は終わる。この世にある、あってはならない偏見と身勝手に対して、静謐な怒りとともに、深い感動をともなった哀しみに満ちた映画だ。
 ルディはゲイである。女装してゲイバーで歌っている。検事局に務める弁護士のポールと愛し合っている。ポールは検事局の上司には、ルディはホモの相手ではなく従弟だといっている。
 ルディのアパートの隣の女はろくでもない女。ダウン症の子供がいるが、クスリをやって逮捕される。ダウン症の少年マルコをかわいそうに思ったルディとポールは服役中の母親の同意を得て、マルコの面倒を見る。行政が強引にマルコを家庭局に入れる。
 マルコのは私たちで面倒を見ると、ルディとポールは訴訟を起こす。ホモの二人は偏見と闘いながら、検事や判事と対峙する。
 主人公の一人ルディを演じたアラン・カミングが好演。ルディがたいへんに魅力的な人物に見える。真に上質な人物とはなにか。ルディはゲイで、アパートの家賃も家主に督促されがちな貧乏人。マルコは母に捨てられた、知恵遅れのダウン症で肥満体の少年。母は薬物依存症、釈放されたその日に男を連れ込みクスリをやっている。マルコは母に捨てられた少年だ。彼はチョコレートドーナツが好きだ。たぶん肥満しているのは子供にモノを食べさせるのがめんどうな母に、チョコレートドーナツばかり食わされていたので肥満したのだろう。赤の他人のそんな子供をだれが親身に世話をする?ルディはそれができるのだ。ルディはゲイで貧乏で芸人としても下積みだけど、真に人間の優しさを持った上質な人間だ。