ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

T-34 レジェンド・オブ・ウォー

2021年03月08日 | 映画みたで
監督 アレクセイ・シドロフ
出演 アレサンドル・ペトロフ、ヴィンツェンツ・キーファー、イリーナ・スタルシェンバウム

 映画の楽しみの一つにキャラクターを楽しむという楽しみ方がある。だいたいが人物のキャラクターを楽しむことが多い。主人公や恋人役、はたまた敵役のキャラクターを観て楽しむのである。
 このキャラを楽しむ。人間以外にキャラクターを付与されている映画もある。怪獣映画などがそうだ。あれはゴジラやガメラといった怪獣のキャラが立っているから面白いのである。これは人間や怪獣といった生物だけとは限らない。無機物=機械にキャラクターをつけて楽しむ映画もある。「栄光への5000キロ」などは車のブルーバード510があたかも感情を持った生き物のごとく描かれている。また「新幹線大爆破」では0系新幹線のひかり109号がキャラを持ったもう一人の主人公といえるだろう。
 で、この映画だ。この映画の人間の主人公はソ連陸軍の戦車兵イヴシュキン少尉だが、もう一人の主人公は戦車のT-34だ。映画の全編にわたってT-34の勇姿がずっと描写される。なにせ武骨なT-34が優雅にバレー「白鳥の湖」を踊るのだから。
 スローモーションを多用した砲撃シーンは迫力があり、弾がT-34の装甲をかすっても車内はたいへんな衝撃で乗員は大きなショックを受ける。「バルジ大作戦」や「パットン大戦車軍団」など戦車が出てくる映画はいろいろあったが、こんなに戦車内部をリアルに描いた映画初めてだ。
 T-34と敵のパンツァー戦車と一騎打ちになるシーンは、あたかも西部劇のガンマンの決闘か時代劇の剣豪どおしの立ち合いを観ているようだった。砲塔を早く敵に回した方が勝つ。このシーンなどドキドキする。
 出色のアクション映画であるが難点が一つある。捕虜収容所で通訳をやっているロシア人女性を連れて逃げて、イヴシュキン少尉と恋仲となるのだが、女性を登場させるのはこの映画の監督だか脚本家だかの迷いと見る。殺伐な戦車戦ばかりではなく、ちょっとラブロマンス色模様も入れなくっちゃ、と考えたのではないか。「シン・ゴジラ」はその点は成功している。あの映画は余計な愁嘆場や色恋沙汰は一切なく対ゴジラ対策だけを描いていた。この映画もひたすら戦車とそれを動かす戦車兵だけを描いたら良かったのではないか。