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ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

喜楽館で「米朝ウィーク」桂米朝五年祭特別公演

2020年11月04日 | 上方落語楽しんだで
 昨日の休日は喜楽館に行っておりました。喜楽館では11月2日から11月8日まで「米朝ウィーク」桂米朝五年祭特別公演をやっております。桂米朝師匠が彼岸に旅立たれて5年なんですね。と、いうわけで米朝一門の落語家さんがぞろぞろ出てまいります
 まず、開演前の一席、露払いをつとめたのは桂二豆さん。桂米二師匠の3番目のお弟子さんです。「煮売り屋」をやらはった。この噺、「東の旅」の発端で「七度狐」の冒頭部分です。若い落語家さんがよくやる噺ですが、二豆さんは無難に演じてはった。
 さて開口一番は二豆さんのお姉さん弟子桂二葉さん。例によって高い声でごあいさつ。「上方落語界の白木みのる」だそうです。「てなもんや三度笠」を知ってる人はかなりのお年ですね。二葉さんも見たことないと思いますが。
 演じはったのは「つる」です。この二葉さん、女性落語家というくくりでくくらなくても上方落語界でアホやらせたらかなり上位にはいるでしょう。二葉さんのアホは突き抜けた異次元のアホになります。二葉さん、かわいい♡
 二番手は桂歌之助さん。あの「死神歌之助」さんは2代目ですが、この歌之助さんは3代目です。3代目歌之助さんが落語会をやっても大惨事はおきませんからご安心を。
「片棒」をやらはった。ケチで名高い大店の旦那が自分の死後どの息子に跡目を相続せるか、どんな葬式をやるかで決める噺です。どれほどバカバカしい葬式にするかが演者の工夫でいくらでも面白くなる噺です。歌之助さんはさすがに派手に陽気なお葬式を演出してはった。長男、次男、三男と三つのお葬式案があるのですが、この時は次男の分までで半ばでした。トリならばフルでできるでしょうが2番手では時間が足らないでしょう。
 色もんは豊来家一輝さんの太神楽です。見事な芸ですが、ちょいちょい失敗しはるのはご愛敬。
 さて、中トリは米朝一門のベテラン桂勢朝さん。まくらで大阪府知事吉村さんの替え歌を。早速都構想断念をネタにしてはった。コロナ禍のこのご時世、こんな噺をやってええんやろかという噺をします。と、いってはった。いま「きめつのやいば」ちゅう映画が当たってますが、この噺は「ひまつのやばい」です。前列の人は気をつけてください。今から大声をだします。と、いうことで「餅屋問答」です。後半の禅問答のシーンは大きな声です。大爆笑でした。
 中入り後、トリ前は桂雀三郎師匠。医者が出てくる噺です。落語に出てくる医者にはろくな医者はいません。手遅れ医者、ご寿命医者、葛根湯医者。一番一般的なのは藪医者です。上方落語の藪医者といえば赤壁周庵先生。この先生の手にかかると健康な者は病気になる、病人は死ぬ、という医者です。その赤壁周庵先生大活躍の噺「ちしゃ医者」をやらはった。雀三郎師匠、枝雀師匠によく似てきました。
 トリは米朝師匠の実子の桂米團治師匠。歌舞伎役者のマクラです、芝居噺です。「七段目」です。米團治師匠の芝居噺は派手で華やかでトリにふさわしいです。こちらは米朝師匠によく似てきました。はっぱりお弟子さんは師匠に似てくるのですね。
 

まめだ

2020年10月21日 | 上方落語楽しんだで
 ええ、秋でございます。上方落語で秋の噺といえば、ワシがぱっと思いつくのは「まめだ」ですな。元は三田純一先生が、上方落語に秋の噺が少ないということで桂米朝師匠に書いた落語です。
 若手の役者が仕事帰りに傘の上に異変を感じるんですな。ずっしりと重い。で、なんぞが取り憑いたに違いない。ちゅうんで傘をさしたまま、トンボを切ると、なにかが叩きつけられました。
 この若手役者の実家が薬屋。膏薬を売っております。母親が一人で店番しとると絣の着物を着た子供が膏薬を買いに来る。店を閉めて金勘定するとお金と現物があわん。銭箱に木の葉が1枚入っとる。ちゅう噺です。子狸がイチョウの葉を銭に変えて膏薬を買いにきてたちゅうこった。
 この噺、オチがよろしいな。死んだ小狸のにようけイチョウの葉が舞い集まって来る。「ほれ、見てみい、狸の仲間からようけ香典が集まった」情緒があって哀しくて秋の風情がようでとる。米朝師匠の口演で聞くと、しみじみとしますなあ。

久しぶりの喜楽館。新型コロナ対策は万全やった

2020年09月21日 | 上方落語楽しんだで
 ずいぶん久しぶりに生の落語を聞きに行く。何か月ぶりやろか。喜楽館から無料招待状が届いたのや。ワシは喜楽館のタニマチや。いくばくかの寄付をしたらいろんな特典をくれる。喜楽館も新型コロナで長い間休館で苦しかったのやろ。そこで万全の感染対策を施したから、喜楽館支援者であるタニマチの皆さんを昼席に招待して、「喜楽館コロナ対策実感キャンペーン」を展開して、対策の実情をしっかり視察してもらおうというわけや。
 開場前の待合のベンチはなし。入口で体温測定、手の消毒、万が一感染者が出たときのための追跡調査用に名前と電話を登録。会場に入ると最前列のA列B列は閉鎖。ワシはC席やったから最前列やった。座席は一人飛ばし。半数しか客は入れないようにしている。換気も充分に行っているようや。これなら安心や。
 まず、開演前、出番ゼロ番ということで桂鹿えもんさん。この噺家さんは初めて。桂文福一門。「動物園」をやらはった。オーソドックスな動物園であったが少し大人しい。オチを変えてはった。最後に出てくるライオンの中身は園長やった。
 開口一番は「石段」の出囃子で出て来はった桂あおばさん。羽織を脱いで「すぐ脱ぐんやったら最初から着てこんかったらえんですが、まあ、羽織も持っとるということで」師匠ざこばのマクラをそっくりそのまま継承。あのマクラはベテランのざこば師匠やからおもろいんであって、若いあおばさんじゃ違和感があった。「秘伝書」をやらはったが、マクラでの「裸でからみあってる」というくすぐりが、あとで兄弟子のひろばさんも指摘してはったが、「白鳳VS日馬富士」じゃ古い。いまいない相撲取りじゃネタにならん。
 2番手は露の眞さん。露の都師匠のお弟子さん。演目は「松山鏡」鏡のない孝行息子の噺やが、珍しい噺で、長年上方落語に親しんどるワシも生で聞くのは初めて。この眞さん、なかなかうまい女性落語家さん。
 色もんは曲芸。暁あんこさんの足芸。
 中入り前は、こんど師匠桂米朝の俳号「八十八」を襲名する桂宗助さん。「骨つり」をやはった。安心して楽しめる「骨つり」であった。
 さて、中入り後の最初はさっきのあおばさんの兄弟子桂ひろばさん。師匠ざこばが得意とする「笠碁」をやらはった。少しだけざこば師匠の「笠碁」よりは、ほんまは仲良しな碁仇どうしの心理描写が薄いように感じた。
 トリは会長笑福亭仁智師匠。例によって「オクラホマミキサー」の出囃子で登場。地震、台風、大雨、繁昌亭の大ちょうちん落下、さらにはこのたびに新型コロナ騒動。私が会長になってろくなことがおまへん。で、ついてない男の噺ということで「ハードラック」を。ワシ、この噺CDで持ってるから音声ではよう聞くけど、生で仁智師匠の「ハードラック」を聞くのは初めて。
 楽しかった。やっぱ、落語は生で聞くにかぎるな。

癪の合い薬

2020年07月27日 | 上方落語楽しんだで

 えー、最近はよっぽど大きな出来事がないかぎり、流行り病のおうわさがトップニュースになりますな。私はウィルスのことはよう知らんのですが、新型コロナウィルスちゅうのがまん延しとってようけの人が感染してます。日本だけやのうて世界中で感染しとるというから、実に、もう、困ったもんです。
 さて病気がネタの落語もいろいろおます。病気というと頼りになるのが薬ですな。それぞれの病気に効くそれぞれの薬がおます。ヤブ医者の仲間に葛根湯医者ちゅう医者がおますが、あれは、どんな病気にも葛根湯のませなさい、ゆうんですな。
 葛根湯のような万能薬やのて、その人のその病気にだけ効く薬があります。これを合い薬といいます。で、上方落語には「癪の合い薬」つう噺がおます。さる大店のごりょんさん。持病が癪。お腹が痛くなる。胃けいれんでっしゃろな。このごりょんさん、なんかのひょうしにヤカンをなめたらお腹痛が治まって楽になった。それから癪がおきるとヤカンをなめる。ヤカン、お湯を沸かすコレがごりょんさんの癪の合い薬となったわけですな。
 ある日、女衆をひとり連れて野がけをしていると持病の癪が。こんな所にヤカンは持って来てません。すると向こうから見事な禿頭のお侍が。女衆は命がけで侍に、ごりょんさんにおつむをなめさせてくれるように頼みます。
 このごりょんさんの癪の合い薬はヤカンだったわけです。いま、いちばん求められているのはコロナの合い薬ではないでしゃろか。マスク、手洗い、うがいが合い薬ですが、これは感染せえへん合い薬ですが、感染してしもても、一発で治る合い薬があればよろしいな。ひょっとするとあんたの家のヤカンがコロナの合い薬かも知れませんで。いちどヤカンをなめてみなはれ。
 

風の神送り

2020年05月19日 | 上方落語楽しんだで
 ええ、ようお運びで。といいたいんやけど、今日は無観客落語会ちゅうこって、これ読んでるあんさんには判りまへんやろけど、私の前にはだれも座ってない椅子がずらっと並んどるだけですわ。私も長い間落語家やってますけど、椅子相手に落語やんのんは初めてでおます。
 こまった病気が流行ってますな。新型コロナウィルスちゅうウィルスがまん延してるんですな。この新型ちゅうのんがワザしてるんでっしゃろ。旧型コロナウィルスやったら、おなじみの風邪やインフルエンザのウィルスやそうです。新型やから、どないなウィルスやよう判らん。治療薬もワクチンもないから困っとるんですな。
 いま21世紀やから、判っとる病気がほとんどやけど、昔は、ほとんどが判っとらん病気やったんです。ただの風邪でもようわからん。そやもんでヤブ医者やったらマシな方で、ヤブになる前の竹の子医者とか、なんでも葛根湯のます葛根湯医者とか、どんな病気でも「手遅れじゃ」いう手遅れ医者のとこへ連れて行くんですな。それで治ったか治らんかったんか私はよう判りまへん。
 いま、みなさんが困っとる新型コロナみたいな疫病はどないしたらええんやろ。妖怪アマビエに頼むんも一つの方法や。上方落語はえらいもんで、たいていのことには、ちゃんと対処法が紹介されとる。もちろん困りもんの流行り病の対処法もある。
昔は風邪も怖い病気だったんですね。風邪がまん延して困ると、こりゃ風の神がおるからあかんのや。風の神を送らあかん。「風の神送り」ちゅう落語ですな。忘れられた落語でしたけど、桂米朝師匠が発掘して今に残っておます。
 風邪が流行っとる。風の神を川に流して海へ送らなあかん。はりぼての人形をつくって、それを風の神に見立てて、お供えもんして「風の神送ろ」「風の神送ろ」とにぎやかに川に流したんですな。
 今はこないなもんを川に流したらあかんけど、どないかして新型コロナをどっかへ流したいもんでおます。「新型コロナ送ろ」「新型コロナ送ろ」

くっしゃみ講釈

2020年04月17日 | 上方落語楽しんだで
 繁昌亭も喜楽館も休みである。もとまち寄席恋雅亭も最終公演となるはずであった500回記念公演も中止となった。いくつかの落語会の前売りを買っておいたのだが、すべて中止で払い戻ししてもらった。新型コロナ肺炎感染拡大を防ぐためで致し方ないが、上方落語ファンとしては、まことに禁断症状に苦しめらる日々が続いているのである。6月に兵庫県立芸術文化センターで笑福亭松喬師匠の独演会があるが、この切符だけまだ手元にある。そのころにはこの騒動もおさまっているかと思うのである。なんの心配もなく松喬師匠の落語を楽しみたいものだ。
 と、いうわけであるからして、もっぱら自宅でDVDで落語観賞している。小生にはコレクション癖はないが、上方落語のコレクションはしている。主にテレビで放映されたのを録画したモノだが、上方落語のだいたいの演目はあるはずだ。どうせ自宅で観るのだから、このご時世、絶対に生では観れない落語を観たいものだ。
 新型コロナ肺炎で最も感染リスクが高いのが、さんざんニュースでいわれていて耳タコ状態の「三蜜」だ。別に壇蜜女史が三人いるわけではない。「密閉」「密集」「密接」の三つの「蜜」
 考えてみれば落語会などは典型的な三蜜状態。しかもおおぜいの人が大口開けてアハハアハハと笑うのだから感染しほうだい。その落語会で、いま、最も禁断の演目は「くっしゃみ講釈」だろう。なんせ、唐辛子くすべて講釈師に盛大にくっしゃみをさせる噺であるからして、演者も盛大に「へーくしょん」「はっくしょん」とやるわけ。もし演者が新型コロナに感染していたら、その場の客はほとんど感染するだろう。
 と、いうわけで「くっしゃみ講釈」大会を自宅で開催した。演者は次の通り。笑福亭仁鶴、笑福亭松之助、桂枝雀、桂雀々、桂福団治、桂文珍、林家小染。小生のコレクションの中にこれだけの「くっしゃみ講釈」がある。不思議なことに桂米朝師匠のはない。
バーボンのブッカーズをちびちびなめながら、いろんな「くっしゃみ講釈」を観て、アハハハハと笑って「ヘークション」とやったら、たまったストレスが少しは吹き飛んだ。

上方落語の医者

2020年03月17日 | 上方落語楽しんだで
 やっかいな病がまん延して、世界中が困ってまんな。私ら落語家は、お客さんの前で一席うかがうのが商売でおます。繁昌亭も喜楽館も公演中止で、仕事ができまへん。こんなんが続くと江戸でも上方でも落語家の干物がようさんできまっしゃろな。
 病ちゅうと、お医者が頼りでんな。お医者が出てくる上方落語もあります。「ちしゃ医者」「夏の医者」なんかがそうですな。それから大河落語「地獄八景亡者戯」にもお医者がでてきます。
「ちしゃ医者」に出てくるのは赤壁周庵先生。私ら病気になっても、できたら、この赤壁先生にかかるのはごめんでんな。たいない医者を藪医者ゆうけど、兵庫県に養父郡(やぶぐん)ちゅうところがおます。昔、この但馬の養父に名医がおった。それから養父の医者=名医となったんですな。で、どんな医者でも養父の医者と名乗るようになった。そんなかにも、とんでもないヘボ医者もおったんでっしゃろ。それからヘボ医者をヤブ医者というようになったとか。
 この赤壁周庵先生は藪医者なんてなまやさしいもんやおまへん。竹の子医者=これから藪になる。すずめ医者。藪に向かっていく。手遅れ医者=なんでもかんでも手遅れ。「手遅れじゃ」「先生さま、いま、屋根から落ちたばかりなんじゃ。いつ連れてきたらええんじゃ」「屋根から落ちる前ならなんとかなる」
「夏の医者」に出てくるお医者は、うではどうか判りまへんが、度胸はピカいちですな。うわばみに呑み込まれてもハラの中で平然とたばこを一服。「わしゃ長年の医者でな。あちこちで薬を調合したが、うわばみのハラのなかで調合すんのは初めてじゃ」とゆうて、うわばみのハラの中に下し薬をまくんですな。うわばみは下し薬なんか飲んだことおません。初めて飲む薬はよう効くもんです。うわばみ、えげつない下痢。げっそりして肩を落としますな。どこが肩か判りまへんけど。
「地獄八景亡者戯」のお医者は山井養仙先生。中日に山井大介ちゅうピッチャーがおりますな。メガネかけてて2007年の日本シリーズで完全試合目前で監督の落合に岩瀬に交代させられたかわいそうなピッチャーでしたな。この中日の山井の先祖が山井養仙かどうかは知りまへんけど。
 この山井養仙先生は、「夏の医者」の先生さまの上手を行く度胸ですな。山井先生が呑み込まれたのはうわばみやのうて人呑鬼。人を呑む鬼。ごっついでっかい鬼ですな。こんな鬼に呑み込まれても平気で鬼のハラの中で仲間と大暴れするんですな。この人呑鬼に呑まれた4人の亡者。医者の山井養仙、歯抜き師の松井泉水、山伏の螺尾福海、軽業師の和屋竹の野良一ですな。メリケンの漫画マーベルコミックに「ファンタスティック・フォー」つうのんがおます。あれは4人の超能力者ですが、この4人の亡者と対戦させてみたいもんですな。おもろいやろな。「ファンタスティック・フォー」は2015年に映画になって続編は作られてまへんけど、もし作るんやったら日米合作で20世紀フォックスと米朝事務所が製作の「ファンタスティック・フォーVS4人の亡者」というのんを観たいな。ファンタスティック・フォーの4人はこの4人でええやん。4人の亡者は、山井養仙=桂文之助、松井泉水=桂米團治、螺尾福海=桂雀三郎、和屋竹の野良一=桂吉弥。おもろそうやろ。 

池田の猪買い

2020年02月20日 | 上方落語楽しんだで
 お寒うございます。こないに寒い時の上方落語といえば「池田の猪買い」ですな。猪の肉は身体をほこほこと温めますでな。この噺、最近はあまり演じられまへん。もとまち寄席でも繁昌亭でも喜楽館でも聞きまへん。なんででっしゃろな。
 船場から池田へ猪の肉を買い出しに行く噺でおます。昔のことですから、歩いて大阪の船場から池田まで行ったんですな。
「喜ィ公は丼池筋を北へ北浜に突き当り、淀屋橋、大江橋、蜆橋と橋を三つ渡り、お初天神の西門のところの『紅う』という寿司屋の看板を目印に北へ、十三の渡し、三国の渡しを越え、服部の天神さんを後にして岡町から池田へと入る頃には雪がちらついて来た」
 というぐあいに歩いたわけですが、酔狂なご仁ならこのとおり歩いて行ったらよろしい。確実に池田に着きます。ま、今は、普通の人は電車を使いますな。
 関西の人やったら、よう知ってると思うけど、いちおう電車で行くにはどう行ったらええんか。
 船場からやったら、地下鉄御堂筋線の本町で地下鉄に乗るんや。御堂筋線は痴漢の巣だとか。ご婦人方は痴漢にあわぬよう、殿方は痴漢の冤罪で逮捕されぬよう、お気をつけくださいますように。
 で、本町から二駅目梅田で降りるんや。途中にある駅は淀屋橋。なんなら本町から御堂筋を北に向かってぶらぶら歩いてったら30分ほどで梅田や。
 梅田で阪急電車に乗り換える。すぐそこや。寄り道したかったら地下から地上へ出たらええねん。道の向こうがヨドバシカメラでそしてグランフロント大阪。こっち側に小さな食堂がごじゃごじゃある所があるけど、新梅田食堂街や。大阪の名物のひとつに串カツがあるな。串カツ屋には2種類ある。上品な店と庶民的な店や。上品な店の串カツ(串揚げといった方がええかな)は、カウンターに座ると銅の容器かなんかにキャベツや野菜が上品に盛ってある。目の前には塩やこしょう、何種類かのタレが少量づつ入った小皿。カウンターの向こうのおじさんが揚がった串を「××でお召し上がりください」と指示してくれる。
 新梅田食堂街にある串カツ屋は、庶民的な大阪の串カツ屋の代表みないな店。松葉ゆうんやけど、のれんをくぐって入るとカウンターだけ。揚げてある串が目の前にならんどる。そこから好きなんを取って食う。食べ終わった串はそこに置いておく。足もとに捨てたりしたら店の人におこられるで。串を数えて勘定するのやから。
 ソースは共同で使うから2度づけ禁止や。どうしてもソースをもっとつけたい人はキャベツでソースをすくって自分の串につけたらええねん。
 ここは人気のある店で、夕暮れともなるとすぐいっぱいになる。カウンターに正対することがでけんから、斜めになって立つ。これをダークダックス食いというな。ワシの周辺では。この松葉の串カツ屋、長い間、阪神の梅田駅からJR大阪に向かう階段の横にあったけど、いまはもうないな。
 猪買いの噺やけど串カツの話になってしもたな。ところで、このへんは大阪ではキタという。商都大阪の中心や。近鉄と南海以外の大阪を走る鉄道はみんなここに駅を持っとる。地下鉄四つ橋線、御堂筋線、谷町線、阪神、阪急、そしてJR.。六つの駅がある。それぞれ西梅田、梅田、東梅田、梅田、梅田。みんな「梅田」やけどJRだけ「大阪」やねんな。
 そういうわけで、梅田で地下鉄から阪急に乗り換えたら、30分ほどで池田に着く。池田に行っても、たぶん山猟師の六太夫さんは、いまはいてはらへんやろ。池田まで行っても猪肉は入手しにくいんではないやろか。ワシはいつもここでこうとる。

2月のもとまち寄席恋雅亭

2020年02月11日 | 上方落語楽しんだで

 昨日は2月の10日でございます。毎月10日は落語の日です。もとまち寄席恋雅亭がある日です。と、いってるのも4月で終わりです。42年続いたもとまち寄席恋雅亭も4月の第500回でおしまい。3月10日は所用で行けませんので、私にとっては、この寄席に来るのはあと1回です。さみしいです。じゃあ神戸の上方落語ファンはどこに行けばええんやとなると、喜楽館があるわけですから、喜楽館の存在はありがたいです。
 さて、開口一番は石段の出囃子でお出ましの桂華紋さん。もとまち寄席は初めて。と、いうことは、最後のもとまち寄席初登場の落語家さんということになります。喜八が女にもてるにはどうすればええかと聞くオープニング。で、指南役のジンべはん「いちミエ、にオトコ、さんカネ、しゲイ」とゆう。このオープニングから三つの落語に枝分かれするんですな。「色事根問い」「稽古屋」「首の仕替え」で、華紋さん、「色事根問い」に行かはった。
 2番手は4代目桂春団治門下の桂壱之輔さん。まくらで師匠春団治の春之輔時代の話しを。春之輔タクシー待ちしとると、そのタクシー暴走。春之輔タクシーにはね飛ばされて電柱に頭ぶつける。脳挫傷。6日間意識不明。奇跡的な回復力で復活。落語家を続けて現代に至る。で、壱之輔さんがやったのは新作落語の「生まれかわり」春之輔さんは生き返ったが、ほんまに死んだ噺。死んだあと何に生まれかわるかリクエストできる。なかなかおもしろい新作落語でありました。
 さて次の演者は。お茶子のおねえさんがめくりをめくると「桂南天」とある。あれえ、おかしいな。桂あさ吉さんのはずですが。めくりの間違いちゃうか。ところが南天さんがほんまに出てきはった。なんでもあさ吉さんは声が出んようになったんですって。風邪ではなさそう。新型コロナウィルス肺炎やないので、ご安心を。南天さん休みやったけど、とつぜん米朝事務所から電話かかってきてピッチヒッターを頼まれたそうです。
 JRの新快速に乗って神戸までやってこられたとか。その新快速の座席をネタにしたまくらでした。「粗忽長屋」をやらはった。行き倒れが知り合いや。ほんまやで。その本人連れてくるで。で、ほんまに本人連れてくる噺。南天さん、はこういとぼけた噺はお得意ですね。
 中トリは桂梅団治師匠。撮り鉄として有名な師匠です。「ねずみ」をやらはった。「竹の水仙」と同じく左甚五郎が出て来ます。この甚五郎はきたないおっさんやのうて、まともな人です。甚五郎、番頭と仲居頭に宿を乗っ取られた、宿の主人を助けます。
 中入り後、後半戦の最初は林家花丸さん。梅団治師匠はご趣味は撮り鉄ですが、花丸さんはヅカファンです。しょっちゅう宝塚に歌劇を観に行かはるそうです。本職の落語も油断すると宝塚調のセリフになるんですって。「金明竹」をやらはった。後半、七つの道具をスラスラと早口でいうところは、さすがに見事でした。
 さて、この日のトリは桂米團治師匠。なんと「はてなの茶碗」をやらはった。実はこのブログには書きませんでしたが1月の17日に喜楽館での米團治師匠も「はてなの茶碗」でした。おんなじ演者でおんなじ演目。おもろないんとちゃうかと思わはるかもしれませんが。これがなかなか興味深いんですな。DVDや録画録音されたもんで同じもんをなんべん観たり聞いたりしてもおんなじやけど、生の落語は生もんです。これが落語は生で聞くにかぎるゆえんですが、おんなじ演者おんなじ演目でも、時や場所が違うとちゃうんですな。まずやってる落語家さんも生きてはるから、その時の気分体調がちゃう。やる場所、きのうはもとまち寄席でしたが1月は喜楽館でした。それに聞くこちらの気分体調も違う。いろんな要素が有機的にからみあって、微妙にちゃうんですな。だから落語は生に限ります。1月ときのうでは米團治師匠、細かいくすぐりを変えてはったし、昨日の方が少しテンションが高ったんではないですか。

笑福亭鶴瓶落語会

2020年01月26日 | 上方落語楽しんだで

 きのう、土曜日の午後は落語鑑賞です。阪急西宮北口の県立芸術文化センターの中ホールです。この会館へ来るのは初めてです。ずいぶん立派な会館で、規模も大きいです。中ホールでも収容人数が800人ですって。
 さて、この時の落語家ですが笑福亭鶴瓶師匠です。私は、現存の上方落語家の噺はほとんどDVDで持っておりますが鶴瓶師匠のはありません。また。月に1度か2度は生の落語を鑑賞しますが、鶴瓶師匠の落語は見たことがありません。どんな落語をするのか前売り券を買った時からずいぶん楽しみにしてました。その前売り券も入手したのはまったくの幸運でした。前売り発売の瞬間売り切れ。私は奇跡的に残っていた2階席を手に入れました。鶴瓶師匠の人気の高さが判ります。
 さて、開演です。中ホールがぎっしり満員です。舞台の緞帳には「つるべ」と書いてあります。えらいもんです。マイ緞帳を持ってはるんですね。
 笑福亭鶴瓶師匠登壇。洋服で立って話し始めました。最初のあいさつかと思いましたが、長い間しゃべってはる。延々と漫談をやらはった。「声がおかしいでっしゃろ。風邪ちゃいますねん。ああ、前の人、そんな引かんでも心配おまへん。こないだまでハワイにはおったけど武漢には行ってまへんから」とタイムリーなくすぐりから、ヨメのぐちやら耳に水がたまる話なんか、ずいぶん長い間しゃっべてはった。漫談はもうええから早う落語せえと怒鳴りたくなりました。
 さて、長い鶴瓶師匠の漫談も終わり開口一番は、鶴瓶師匠の12番目末っ子のお弟子さん、笑福亭べ瓶さんです。べ瓶さん元はタレントになりたくてタレントの鶴瓶師匠に弟子入りしたそうですが、師匠が落語を始めたから落語家になったんですって。演目は桂文枝師匠が三枝時代につくった創作落語「読書の時間」です。学校の読書の時間に、おとうさんの「竜馬が行く」を借りて持ってきた柴田君、この本カバーだけ司馬遼太郎の「竜馬が行く」で中身はポルノ小説。それを先生に朗読させられます。べ瓶さん、若いがなかなかけっこうな落語家さんです。笑わされました。銀瓶さんといい、由瓶さん、鉄瓶さん、鶴瓶師匠はけっこうなお弟子さんを多く持たれてます。弟子を育てるのが上手なんですね。
 さて、いよいよ笑福亭鶴瓶師匠の出番です。今度は羽織はかまで見台膝かくしの前に座らはった。漫談ではなく落語をやらはるんですね。で「宮戸川」をやらはった。本格的な古典落語です。途中、お花から逃げる半七の追っかけあいのシーンは、サム・ペキンパーもかくやと思わせるスローモーションのアクションで表現されていて大笑いでした。ううむ。鶴瓶師匠がこんなまっとうな落語をやるとは思いませんでした。
 中入りの後は桂吉坊さん。この日のゲスト、べ瓶さんと吉坊さんは西宮出身なんです。鶴瓶師匠は西宮在住。実は私(ごろりん)も西宮出身なんです。高座に西宮人で客席に西宮人がおる構造です。私以外西宮人がおるんかおらんか判りまへんけどな。
 吉坊さん吉朝師匠5番目のお弟子さん。その名のとおりぼっちゃんみたいな風貌ですがキャリア20年のもう中堅といっていい落語家さんです。米朝一門らしく歌舞伎狂言にも造詣が深い落語家さんです。本格的芝居噺「本能寺」をやらはった。なんか師匠の吉朝師匠より米朝師匠をほうふつとさせる「本能寺」でした。吉坊さんが入門した時1999年には吉朝師匠は胃がんを発病してたんですね。吉朝師匠は6年後に亡くなるわけですから、吉坊さんは吉朝師匠より米朝師匠に稽古をしてもらった方が多いのではないでしょうか。
 トリはもちろん笑福亭鶴瓶師匠。人情離「子はかすがい」桂ざこば師匠が得意とされてる噺です。ざこば師匠はまくらで「かすがいって知らん人も多いでっしゃろ。これがかすがいです」といって懐から実物のかすがいを出さはる。鶴瓶師匠「オレざこば兄さんとは仲が悪いでんねん。落語やんのに重いもん持ち歩いてまんねんな。オレは持ってまへんで」と、「子はかすがい」をやらはった。これが、もう、非常に良い出来の「子はかすがい」この噺、ざこば師匠や桂福団治師匠がよくやらはりますが、この時の鶴瓶師匠のはそれらに勝るとも劣らんできでした。充分に間をとって親子の情愛を表現されてました。考えてみれば鶴瓶師匠は演技者としても一流で「おとうと」「ディア・ドクター」などの映画でも名演技を演じておられます。落語も演じるわけですから納得がいきますね。
 鶴瓶師匠の落語を初めて鑑賞しましたが、堪能しました。次回はぜひ「らくだ」をやってほしいもんです。
 さて落語を楽しんだ後は夕食です。西宮北口駅の北側の「すすき野」というラーメン屋に入りました。その名のとおりの札幌ラーメンのお店ですが、これがうまいです。私は外のラーメンでめったにうまいにのあたらないのですが、ここのラーメンはおいしかったです。
 

1月のもとまち寄席恋雅亭

2020年01月11日 | 上方落語楽しんだで

 昨日は1月の10日でございます。十日戎なんですが、私、えべっさんへのお参りは1月4日にすることにしておりますので、昨夜は毎月吉例もとまち寄席恋雅亭へ行ってまいりました。
 最初にこの寄席の世話人桂春蝶師匠が登壇。あれ、春蝶師匠にきょうの出番の予定はないはず。年の初めの回なんで新年のごあいさつなんかなと思いました。ところが春蝶師匠が「重大なお知らせがあります」とおっしゃった。北の某独裁国の「重大なお知らせ」ではのうて、ほんまに「重大なお知らせ」でした。
 この、もとまち寄席恋雅亭は4月の500回目で終わります。ですから、来月の2月10日、3月10日、そして4月10日の3回終わりです。私は3月10日は所用があるので、この寄席に来るのもあと2回です。会場となっている風月堂地下のホールが老朽化して使えなくなるからですって。神戸新聞によれば恋雅亭同人会代表の吉村高也さんは「500回という区切りで終わる。他の場所での継続を考えたが『元町』という場所にこだわりたかった」とおっしゃった。
 役目を終わったということでしょう。この寄席が始まった42年前とは上方落語の状況も大きく変わりました。落語家の数も増え、大阪に繁昌亭、神戸に喜楽館もでき、上方落語に接する機会も増えました。まことにさみしい限りでございますが、いたしかたないことだと私は思います。吉村さん、春蝶師匠を初め関係者へは感謝と慰労の言葉をおくりたく存じます。「ありがとうございました。ご苦労さまでした」
 さて、衝撃の発表のあと、客席のざわめきがおさまらぬ中、開口一番の笑福亭呂好さんがお出まし。「へっつい盗人」をやらはった。喜六、清八の二人が荒物屋に忍び込み、へっついを盗もうとするくだりです。「ええか、音たてんなよ。静かにせえよ」と清八が喜六に注意するところで、客席からスマホの鳴る音が。呂好さん、そっちを向いて「音をたてるなよとゆたやろ」大笑いです。スマホの電源を切り忘れるアホのおかげで大うけの落語となりました。こういうことは生の落語会ならではです。
 二人目は桂紅雀さん。もとから元気な紅雀さん。「つる」をやらはった。元気な紅雀さんが思いっきり熱を入れてハイテンションな「つる」でありました。こういう軽い噺でも演じ方次第で大爆笑となるのです。
 3人目は桂文鹿さん。文鹿さんは毎年インドへ行くんですって、インドへ新作落語を書きに行くそうです。今年も2月に行く予定だそうです。そういう文鹿さんですから格安航空の研究は熱心です。安くインドへ飛ぶ飛行機をなんとか探し出すそうです。そんな文鹿さんの演目は新作です。3000円で東京から大阪まで飛べる飛行機に乗った男二人の噺です。もとろんJAFや全日空とは大違いです。
 中トリは桂塩鯛師匠。他の落語会なら大トリで出てくる塩鯛師匠がこんなところに出てくるのがもとまち寄席ならではです。寒い季節ですから「池田の猪買い」をやらはった。このときの塩鯛師匠の「池田の猪買い」は伯父の桂枝雀師匠の「池田の猪買い」ではなく、笑福亭仁鶴師匠のではないでしょうか。六太夫さんが鉄砲を撃って「当たった当たった。線の上に止まったらやりなおし」というくすぐりは仁鶴師匠がやらはる。
 さて中入り後の最初は桂春雨さん。だれもやったことにない噺をしようと、楽屋にある保存してあるネタ帳をくって考えて、三遊亭円朝作の「にゅう」という噺をやらはった。この噺いまの上方では桂文我さんだけがやったことがあるそうです。ものすごく珍しい噺です。私は初めて聞きました。トリで出てくる桂文珍師匠も初めてだとおっしゃってました。なるほど、なんでだれもやらん噺かよく判りました。
 トリは桂文珍師匠。間男噺です。「包丁間男」です。「間男見つけた。そこを動くな」という噺です。
 こうして1月のもとまち寄席は終わりました。私はあと2回です。さみしいです。
 徳島ラーメンを食べてJRに乗りました。今朝、私が作った酒粕ラーメンの方がおいしかったです。

桂雀々独演会 地獄八景亡者戯2019

2019年12月21日 | 上方落語楽しんだで
 今年最後の上方落語鑑賞は桂雀々師匠の独演会です。「桂雀々独演会 地獄八景亡者戯2019」雀々師匠は興に乗ると狂気に走ることがあるハイテンション落語家。その雀々師匠が超大ネタ地獄八景を演じまする。いかなることになりますやら。恐れつつも楽しみにしてました。
 開口一番は雀々師匠のお弟子さん、桂優々さん。弟子は師匠から一字もらうのですが、優々さんは「々」という字をもらったんですって。これ、一字ではなんと読むんでしょう。「子ほめ」をやらはった。
 さて、いよいよ雀々師匠の出番です。まくらで、「1時間20分もある噺です。途中でおしっこに行きたい人は行ってください。 寝たい人は寝てください」
 知り合いからもらったサバを食って死んだ男と、どこに出しても恥ずかしくないヤブの中のヤブの医者にもろた薬で死んだご隠居のオープニングは普通の地獄八景でした。最初はおとなしいめ米朝スタイルの地獄八景でしたが、雀々師匠らしくだんだんテンションが上がってきて枝雀スタイルの地獄八景となりました。
 フグを食って死んだ船場へんの若だんなのところでは、わが一門の若だんなといえばY団治さんですが、といって桂Y団治師匠をイジって笑わせられました。
随所に雀々師匠らしいネタが入ってましたが、三途の川の渡し船のところでは、卵の黄身を食べてサルモネラ中毒で死んだ男が出てきます。
 鬼の船頭「黄身か。う~む。キミ。キミたち男の子。ゴーゴー。で、5万5千円じゃ」
 それから黄身で死んだ男が何人も出てきて、鬼の船頭を困らせます。「キミね。キミ」なかなか出てこなくなります。「キミいがわ世をは」「キミだけを、キミだけを」このあと、一行は閻魔の庁へ行くわけですが、ここで前半の山場、閻魔のお出ましです。「閻魔さんの顔をご覧にいれる」「閻魔の出御、下におろう」
ここで演者は扇子で隠している顔を出すわけですが、米朝師匠は、ほんまに恐い顔を出してきます。「これやるとしばらく元に戻りまへんねん」枝雀師匠はにこっーと満面の笑顔で出てきます。雀々師匠はどうだったでしょう。ここでは書きません。機会があればご自分で桂雀々師匠の地獄八景を観てください。
 閻魔さんが一芸ある者は出でよ。と芸のある亡者に芸をさせるわけですが、手品や曲屁といった定番の芸のあと、耳あてを使っていろんな芸を見せてくれました。この芸は雀々師匠オリジナルでしょう。
 このあと、4人の亡者と人呑鬼のくだりになるわけですが、このころになると雀々師匠のテンションも絶頂を迎えます。もう1時間以上じゃべっているわけですが、たいへんなスタミナですね。
 さて、いよいよサゲです。4人の亡者、人呑鬼の肛門の前でがんばって出てきません。このままやったら肛門が壊れます。
「閻魔さま助けてください」
「もう二人亡者を呑め」
「え、さらに二人も」
「黄門を助けるため助さん格さんを呑むんじゃ」
 と、いうわけで、熱狂の地獄八景亡者戯2019は終わりました。このあとゲストの内海英華姐さんが出て来はった。英華姐さんのお色気で熱くなった場内を鎮めてもらおうということでしょうか。「あつくるしい芸を1時間20分もご苦労さまでした」とお客をねぎらったあと女道楽で、目と耳を楽しませていただきました。あいかわらず色っぽいです。たまりませんな。もちろん三味線の曲弾きも。いつもながらの超絶技巧の三味線です。
 中入りのあと、雀々師匠がもう一度登場。こんどは軽く「田楽食い」で笑わせてもらっておひらき。楽しい落語会でありました。 

25年後の延陽伯

2019年12月14日 | 上方落語楽しんだで
 独身でヤモメな男が、初婚の美女を紹介されたら、そら、もう、飛びつきますわな。ここにございますのが、われわれ同様というヤモメ。いつものごとく、ひとり無聊をかこっております。このままでは噺になりまへん。出雲の神さんが登場するわけですな。
「いてるかや」ご隠居のじんべはんが来ました。このじんべはん世話やきで、このヤモメに嫁さんを世話しようということですな。
 聞くところによると、そのお嬢さん、年は22で、鼻筋の通った色白で目元涼やか口元に愛嬌があってえらいべっぴん。お茶お花料理裁縫、女ひととおりのことがでける。もちろん、ヤモメ、いやもおうもない、ダボハゼみたいに、この話に食いつきます。で、じんべはんの「ところがな」が入ります。
「このお嬢さんに、ひとつだけ傷がある」
「なんだんねん。お茶を飲むとヘソからもれるとか」
「そんなんやない。このお嬢さん、以前は京都のお公家はんに奉公いっとって言葉が丁寧なんや」
「言葉がぞんざいなんは傷やけど丁寧がなんで傷ですねん。丁寧けっこう。いただきましょ。もらいましょ」
 と、このヤモメ、ことばの丁寧なべっぴん延陽伯とめでたく夫婦になりました。それから25年。
「ああら、わが君。朝餉の膳を離れましたら塵芥の袋を出しておじゃれ」
「昨日の塵芥は山のごとし。かくなるは二つ袋に入れ、めてに一つゆんでに一つもって捨てに行くでおじゃる」
「そつじながら、本日は水曜でおじゃる。塵芥の廃棄は明日木曜でおじゃる」
「それは、わらわ、うかつでござりました。持ち帰るといたしましょう」
「わが妻、塵芥は明日でおじゃるぞえ」
「ああら、わが君、それはそれは。わらわの記憶違いでおじゃりました。許してたも」
「ぴんぽおおん」
「わが家をおとなう者ありけり」
「隣家のお内儀にそろ」
「おはようございます。そつじながら、わらわの国もと安芸の国から、かようなモノを送ってまいりました。おすそ分けをしとうおじゃる」
「これはこれは。カキではござらぬか。ありがたくいただくでおじゃる」
 この町の住民はみんな丁寧なお公家さんの言葉になりましたとさ。よってくだんのごとし。


12月のもとまち寄席恋雅亭

2019年12月11日 | 上方落語楽しんだで
 毎月10日は、もとまち寄席恋雅亭の日です。11月10日は所用で行けなかったので2か月ぶりです。私は月に2回以上は上方落語を生で聞かなくては禁断症状が出て、頭ぼんやり目ちかちか手ぶるぶる足がくがくしてきます。
 さて、トップバッターは桂紋四郎さん。あとで出てくる桂春蝶師匠のお弟子さん。春の蝶の弟子だからモンシロだそうです。少し前、声がおかしくなったんですって。落語家にとっては大切な商売道具です。病院に行きました。リハビリが必要でボイストレーニングをしました。専任のボイストレーナーがついたそうです。このボイストレーナーというのが、若い、ものすごおおおおおいべっぴん。このべっぴんと毎日1時間個室で二人っきりで。なんといいましょうか、ご病気なのにうらやましいような。私(ごろりん)が手術した時の麻酔医もべっぴんの女医さんでした。病気は嫌なもんですが、少しはいいこともあったりして。「浮世根問い」をやらはった。
 二つ目は吉朝門下の桂佐ん吉さん。まくらで昨今のタピオカブームについてひとくさり。私もこの落語会が終わって、高架下を元町から三宮まで歩いたのですが、かようなところにタピオカ屋が何軒もできてたのにはびっくりしました。やらはった演目は「桃太郎」私は、この噺はいささか現代にそぐわんと思うのですが、この時の佐ん吉さん、ものすごく熱い大熱演の「桃太郎」で腕力で「桃太郎」を聞かせてしまいました。
 三つ目は桂坊枝さん。どうも佐ん吉さんとは仲がお悪いそうで、ちくちくとイヤミをいってはった。佐ん吉さんが「桃太郎」をやったからかどうか知りませんが、坊枝さん、ぼくもごく当たり前の無難な噺をします。と、いうことで「時うどん」をやらはった。こういう無難な定番な噺をやると、その落語家の腕が判ります。どうも坊枝さん、佐ん吉さんにライバル意識があるようです。坊枝さんのほうが年上で先輩なんですが。桂佐ん吉VS桂坊枝。この勝負互角とみました。とうぜんながら坊枝さんの「時うどん」も大熱演でした。
 中トリは笑福亭鶴志さん。大病なさったそうで、椅子に座っての高座となりました。豪放磊落な風情は6代目松鶴師匠をほうふつとさせ、いかにも笑福亭の落語家さんです。まくらは若いころのお話。芸人は社会の裏街道を行く的なところがあって、昔の芸人はそんな人が多かったそうです。先輩にはクスリをやってはった人もおったし、ヤの字のみなさんともごく普通につきあってたそうです。
「平の陰」をやらはった。字の読めない喜六が物知りのじんべはんに手紙を読んでもらいに来ます。ところが、ほんまはじんべはんも字が読めまへん。字が読めへんことを知られまいと、じんべはん四苦八苦しながら手紙を読みます。字が読めへんのにどうして読むかが聞かせどころの噺です。喜六がしゃべるのを聞いてじんべはんが「書いたある」と何度もいうのですが、鶴志さんの「書いたある」は、まるで6代目松鶴師匠が「書いたある」といってるようでした。笑福亭の落語を堪能しました。
 中入り後のトリ前は桂春蝶師匠。まくらは実父である先代春蝶の話。昔、先代春蝶、笑福亭鶴瓶、桂福団治、漫才の若井ぼんの4人が麻雀をしました。先代春蝶が見え見えの国士無双をてんばった。白待ち。鶴瓶が白をつかんだ。鶴瓶自身もええ手をてんばっている。鶴瓶、白を手に持ちううんとうなった。そしてその白を飲み込んだ。麻雀の牌を飲み込んだのです。息が詰まり死にそう。先代春蝶が鶴瓶の背中をたたいた。鶴瓶の口からポロッと白が出た。それを見た先代春蝶が「ロン」
 と、いうまくらのあとやらはったのは「やかん」という噺。上方落語でやかんの噺といえば「癪の合い薬」です。あれはやかんをなめると持病の癪が治るという噺です。ところが昨日の春蝶師匠の噺は、後半からは、「難波戦記「忠臣蔵」「義経千本桜」など落語で使う講談講釈のメドレーです。これがなんで「やかん」なんかよう判らんかったけど大爆笑でした。
 さて、トリは月亭八方師匠。どんなまくらか楽しみにしていたのですが、まくらなしで本編に入られました。「竹の水仙」です。サゲがさすがでした。名工左甚五郎の噺ですが、細川の殿様に竹の水仙を200両で売って宿の主人に大もうけさせて立ち去る甚五郎。「お名前は」「名乗るほどの者じゃない」「どんなお仕事ですか」「さしたる仕事はしておらん」甚五郎、鼻歌歌いながら行く「チャラチャラチャラチャラ。チャラチャラチャラチャララ」「あ、ダイクや」八方師匠、年末やからこのサゲを考えはったんでしょう。
 笑福亭鶴光師匠がゆうてはったんやけど、江戸の落語では前座や二つ目三つ目といった前に出る人は、全員、トリを取る真打をきわだたせるために落語をやるそうです。上方はそんなことはおまへんけど、前に出る落語家は後ろを演じる先輩を多少は気にしまんな。
 ところが、このもとまち寄席ではそんなことを気にしてない。前座であろうが二つ目であろうが、リミッターを外してフルスロットルで力いっぱい演じる。昨日の佐ん吉さんや坊枝さんは大張り切りでした。そのかわりトリの八方師匠は少しおとなしいめでした。
 このもとまち寄席、小さな小屋でやっていた落語の雰囲気を色濃く残している落語会です。

喜楽館でラジ関寄席を楽しむ

2019年11月19日 | 上方落語楽しんだで

 昨夜は喜楽館で行われた、「内海英華のラジ閑寄席」へ行ってきました。神戸の放送局ラジオ関西の寄席番組の公開録音です。
 幕が上がる前に、司会の内海英華姐さんがお出ましになりました。前ふりのおしゃべりです。相変わらず色っぽい英華姐さんです。
 開口一番は笑福亭呂好さんの予定でしたが、都合で桂弥っこさんがつとめました。吉弥門下の次男さんです。吉朝師匠の孫、米朝師匠のひ孫弟子です。
「石段」のお囃子で高座に上がった弥っこさん。まくらは乗り物の話題。乗り物の噺というと「三十石」か「いらち俥」か「稲荷俥」かな。「三十石」みたいな大ネタをこんな前座ではやらないでしょう。「稲荷俥」をやるには弥っこさんは若いです。となると「いらち俥」では?正解でした。弥っこさんもいってたのですが、こういう乗り物の噺で「昔の汽車はのんびりしててよろしかったですな。新幹線は風情がおません。乗ったら、すぐ『東京東京』」新幹線ができて、どれぐらい経ったと思う。新幹線の速さをくすぐりのネタにするのは、もうダメ。いっこも笑えない。弥っこさん、まくらを工夫すべし。落語は師匠から教わったことをそのまま演じるのも大切ですが、自分なりの工夫(とくにまくら)を施すのも大切です。
 二番目は六代目笑福亭松喬師匠の末っ子笑福亭風喬さん。風喬さん似顔絵の名人だそうで、風喬さん描くところの上方落語家の似顔絵がいっぱいのクリアファイルがあって300円だそうです。また、今度買いましょう。
 大店の若ぼんが病でふせっている。なんかで思い悩んでいる。どうも誰かに恋い焦がれているらしい。と、ここまでで「千両みかん」「千早ふる」かと思いましたが、風喬さんがやったのは「擬宝珠」橋の欄干なんかにある擬宝珠をなめるのが大好きなぼんです。このぼん、天王寺の五重塔の先端の擬宝珠をなめたいと思い悩んでいたわけです。で、ほんとうに天王寺に頼みこんで五重塔の周りに足場を組んで若ぼんに擬宝珠をなめさせるわけです。いかにも落語らしいバカバカしい噺です。
 3番手も末っ子さんです。といっても芸歴30年の大ベテランです。笑福亭鶴二さん。六代目笑福亭松鶴師匠最後のお弟子さんです。「算段の平兵衛」桂米朝師匠が得意としてはった噺ですが、悪人が活躍するピカレスク落語です。数ある上方落語の登場人物の中で、この平兵衛が一番頭が良い人物でしょう。鶴二さんオチを変えてはった。米朝師匠のは最後に平兵衛が按摩の徳の市にゆすられるのですが、鶴二さんのオチは庄屋の死を不審に思った奉行所が動き出すのですが、その奉行所のお役人まで平兵衛に相談に行くというオチです。
 中入り後の最初は、笑福亭由瓶さん。鶴瓶門下です。笑福亭鶴瓶師匠の落語は聞いたことがありませんが、鶴瓶師匠、良いお弟子さんをたくさん育てておられます。由瓶さんがやらはったのは「持参金」番頭さんが借金取りに来ます。今日中に返さなくてはなりません。番頭さんと入れ替わりに金物屋の佐助さんが縁談を持ってきました。一目見たら忘れられない顔のお嬢さん。このお嬢さんお腹に子供がいるけど、持参金20円つけるから嫁さんにもらってくれへんか。で、このヤモメ持参金欲しさにOKします。ようは、この20円がぐるぐる回るわけですな。金は天下の周りもの、経済学の勉強になる噺です。
 さて、トリは笑福亭の大ベテラン笑福亭呂鶴師匠。年取って風格がいちだんと増して松鶴師匠によく似てきはりました。やらはったのは師匠松鶴お得意のお酒の噺。「ご酒家のおうわさです」という出だしは松鶴そっくりでした。「三人上戸」です。「にわとり上戸」「左官上戸」「くすり上戸」など、酔っ払いの描写で笑わせていただきました。「ご酒家のおうわさ」の定番うどん屋もちゃんと出てきて、酔っ払いが唐辛子でうどんを真っ赤にします。
 この時の呂鶴師匠の酔っ払いは神戸の三宮にも出没。「なんや。おおきなビルやな。デパートかいな。確か、ここにはそごうがあったはずやけど。ん、いつの間にか阪急になっとる」というくすぐりをいれてはった。
 さて、楽しい落語会も終わりました。内海英華姐さんに見送られながら喜楽館を出ました。