楕円と円 By I.SATO

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日本酒ラベルにアイヌ文様

2024年08月28日 | 日記
二日酔いのように頭がすっきりとしない。水を差す気は無いが複雑な感情が湧く。ラベルにアイヌ文様の入った高級日本酒が発売されるという8月23日付の北海道新聞の記事だ。

大雪酒造の「Niptayニプタイ」(750ml)は3万3千円、高砂酒造の「旭神威」(1.8リットル)は1万3,200円と超高価で、販売先は訪日外国人や東南アジアへの輸出を考えているという。

道産の酒米、醸造技術、どれも本州の酒どころに負けないレベルだろう。世界に打って出るのは今や日本酒に限らずどの分野も常識なので結構なことだ。

しかし、冒頭の記事を読んでアイヌのリーダーが松前藩に反旗を翻した「シャクシャインの戦い」が直ぐに思い浮んだ。


蝦夷地の松前藩は米が獲れないので、収入源となったのがアイヌとの交易による鮭や砂金などであり、藩からアイヌにもたらされたのはコメ、什器、鉄瓶などの生活必需品、刀剣などの鉄器、日本酒などであった。

やがてアイヌの人たちの生活習慣や文化などの暮らしの基盤が徐々に奪われ、遂に1669年にアイヌの部族対立をきっかけに、「シャクシャインの戦い」が起きた。

シャクシャインは松前藩に和睦を申し出る。しかし、その酒宴で酔ったところを殺害され、反乱はほどなく収束した。

アイヌと和人との抗争で酒に酔わせられてリーダーらが謀殺された事件は他にも道東の「クナシリ・メナシの戦い」が有名である。


私には日本酒とアイヌ文様と聞いた時にこのような悲劇が直ぐに浮かんでしまった。酒造メーカーには日本酒の販売戦略があり、「価値を感じる人は高額でも購入する。」としているが、私には眺めるだけである。

デザインしたアイヌ工芸家は「お酒を通じて、アイヌ文化の自然観にも興味を持ってほしい。」と期待感を示している。


アイヌ民族に関して、2007年の国連の「先住民族の権利に関する宣言」がある。先住民族の権利を保護し、尊重するための国際的な枠組みを提供している。

日本政府もアイヌを先住民族として認める決議を行い、文化や権利の保護が進められているが、伝統的なサケ漁の復活など具体的な権利の回復や自決権の保障については課題が残ったままという。


アイヌ文様ラベルの日本酒で外国人のみならず国内のアイヌ民族への関心が深まればと思う。





「シャクシャインの戦い」から120年後の「クナシリ・メナシの戦い」の鎮圧に功績があったとして松前藩に同行された道東のアイヌリーダーのひとりであるツキノエの肖像画。
松前藩家老の蠣崎波響が描いた。何故、交易で得た中国の官僚服を着ているのか、様々な解釈があるが経緯は謎である。(フランス ブザンソン美術館所蔵)




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