Dr. Mori Without Borders / Mori-san Sans Frontieres

森 一仁が医学・国際政治経済金融・人文教養教育など関心問題を国際的・学際的に考える。

脳波判読と人相・手相観

2005-09-06 22:04:35 | 人間行動学:精神医学・心理学・行動科学
精神医学の授業で脳波学を講ずる。基礎及び臨床脳波という事で、脳波の生理学的基礎と脳波計測時の留意点などを述べた。一通り教えた直後に、台風警報で学校は緊急閉校に。学生は皆下校と相成った。帰り際、街中を通る際に気になった看板があった。「印相・手相観ます。」ここで考え事を始めた。印相も手相も一種のパターン認識である。特定のパターンに特定の人格やら人生の傾向とがもしも対応しているのだとすれば、印相やら人相には充分意味があり、その鑑定には妥当性がある事になる。これと脳波の判読とどこが違うのか?

脳波の判読は熟練を要し、絶え間ない修業が必要であると思う。各電極からの神経細胞の電気活動の記録の背後を読み取り、それを頭蓋表皮の位置関係をもとに再構築しながら、頭の中で「脳波トポグラフィー」とでも言うべき再構築イメージを組み立てる。一定のパターンは存在するが、各患者・被験者には個性がある。勿論脳波学の方は神経生理学・内分泌学・神経解剖学・電磁気学・内科学・臨床化学などから借用した根拠がある。実験医学・実験科学を基にした根拠に基づいて異常脳波か正常脳波か鑑別診断を下す。人相の方は、根拠はサイエンスでは無いが、それなりに経験的蓄積があるのだろう。サイエンスの方の歴史はまだ浅いが、こうした経験知の蓄積は有史以来の伝統がある。どちらが一体妥当な知識体系なのか、考えているうちに、今日もまたバス停を一つ乗り過ごしそうになってしまった。

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