Dr. Mori Without Borders / Mori-san Sans Frontieres

森 一仁が医学・国際政治経済金融・人文教養教育など関心問題を国際的・学際的に考える。

昇格しアメリカに一言、言おうジマ・・・。

2007-02-01 09:32:22 | 地球社会:国際政治経済金融
(記事の公開が出遅れてしまい、結果論染みてしまうのだが、一応アップしておこう。)硫黄島関連の映画が流行っているらしい。「IWOJIMA」と聞くと軍事マニアは強襲揚陸艦を連想するだろう。なぜ今「硫黄島」なのだろうか?

太平洋戦争の激戦地として名高い硫黄島では、わが国の旧軍側が2万1000人の人的消耗だったそうだが、この時敵であったアメリカ合衆国軍は、物量・人的資源共に豊富であり、硫黄島を落としたら次は本州・本土へとの意気込みも旺盛だったと言う。

「2万1000人の将兵の損失」と聞けば、甚大な被害をと言う話になるのだが、事はそう簡単ではない。太平洋戦争終末期において、我が国が軍事的・工業的・政治的に末期症状となっていた頃、人員も物資も乏しかった頃である。敵側の損失は何と「2万6000人」とも言われている。圧倒的に有利な側の方が損失が甚大であったのだ。この数字をどう読むか?

逃げ場の無い島において幽閉された旧日本軍兵士。死はもとより覚悟の上である。戦闘に勝ち、生き延びる事よりも、一日でも長く持ちこたえて、米軍の本土上陸を阻止しようと言う覚悟である。生も死も超えた達観の境地と揺るぎ無い闘争心、郷土防衛の志・・・と同時にいくばくかの本音、死を怖れる気持ちとが鬩ぎ合っていた事だろう。

そこに次から次へと米軍の航空機が満載の燃料と爆弾を持って余裕の飛来を成し遂げる。島嶼には米海軍艦艇からの艦砲射撃が雨あられと着弾する。油断をしていると、強襲揚陸艦まで着岸している。中にいるのは刑務所よりも軍隊を選んだ荒くれ男たち、そう、世界最強と信じて疑わないアメリカ海兵隊員達である。屈強な敵兵は豊富な動物性タンパク源を摂取し、体格も豊かである。テストステロンレベルも高い連中だ。単なるマッチョではない。現在でも海兵隊員達=マリーンの中には軍隊の教練のお陰で犯罪者にならずに済んだと言える程の闘争心も筋肉も豊かな男臭い連中がいる。そんな彼らがフル武装して乗り込んでくるのだ。

狭苦しい島の中。武器・弾薬、はたまた兵員数も残りが限られた中で、押し寄せる敵兵。有り余る資源に裏打ちされた工業力と、それにより次から次へと新型兵器を開発し、損傷した兵器や傷病兵はすぐに回収する事の出来る合衆国軍。窮鼠猫を咬むどころの騒ぎではない。

劣悪な状況の中で、旧軍兵士達は戦い抜いた。アメリカ側は10日もあれば落とせるだろうと算段していた中で、その3倍の日数が硫黄島陥落に費やされた。10日と言う予測は、おそらく米軍の戦略・戦術関係の部署が、地理的条件と総合火器力・兵力の違いを考慮して算出したものだろう。それが10日過ぎ、20日過ぎても落とせない・・・兵員の損失も圧倒的に不利である日本側のそれに近づいてゆく・・・。なぜだ?!と思ったに違いない。結果として科学戦の勝利と言うのが第二次世界大戦の後世からの評価だが、精神論・精神主義が徹底すると、人間はかくも底力を発揮するものらしい。

さて硫黄島の激戦を見るに付け、現在の米軍再編問題やら日本のミサイル防衛システム導入問題とリンクさせて考えると、おそらくは「日本はアメリカと同等に戦えるのだ」と言う意識を植え付けたいに違いない。ハリウッドは伝統的にプロパガンダ映画が得意だが、今回もそうだろう。日本政府のアメリカに対する発言権を少しずつ増していくように国民一丸となって誘導されているように思えてならない。防衛省昇格も、警察予備隊設立当時の国際情勢とダブって見える。米軍再編し、在日米軍を縮小させるためには、「日本国民が自ら米軍を追い出す」という意識と構図が名目上必要なのだ。米軍に関するネガティブな情報が、少しずつリークされて報道されているところからも、アメリカ政府側による日本国民の世論誘導のスキルがよく見え隠れしているようである。

(この記事の草稿後に、久間初代防衛大臣によるイラク発言問題が発生。)

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