Dr. Mori Without Borders / Mori-san Sans Frontieres

森 一仁が医学・国際政治経済金融・人文教養教育など関心問題を国際的・学際的に考える。

クライシス・アクター ~災害や危機を演出する役者達~

2018-03-27 19:15:26 | 情報・技術・最先端理工学
インターネット上をある若い男性が騒がせている。この男性はDavid Hoggと言い、アメリカ合衆国はフロリダ州における銃撃事件等を皮切りにメディア露出が増え始めたようである。フロリダ州の事件では銃撃の被害者という事で報道からのインタビューに応えていたのだった。この事件の直後にカリフォルニア州で起きたライフセイバーをめぐったトラブルの折にもメディアでインタビューに応えていたところ、ネット市民たちが一斉に嫌疑の目を向け始めた。フロリダ州と言う東海岸に居たはずの人間が、なぜカリフォルニア州と言う西海岸の外れの事件でもインタビューに応えているのだろうか、と。

ここから彼はネット上で「クライシス・アクター」と認知されるようになった。この文脈で言われている「クライシス・アクター」とは事件・災害等の危機的状況に駆り出されて事件の様子を報道者の意のままに演ずる、いわば「さくら」役者たちの事である。では本来の「クライシス・アクター」とは何だろうか?

日本で言うと消防署や警察・海上保安庁等の法執行機関或いは自衛隊等を主催とした危機管理訓練が執り行われる事があるが、こうした際に傷病者の役柄をかって出るのが、本来の「クライシス・アクター」の役割であった。原子力発電所の事故を想定、あるいは地下鉄駅構内の火災を想定、或いはビル災害を想定、大地震を想定して多数傷病者事案(MCI)に対する対策訓練を行う場合に、どうしても訓練の一環として傷病者の役柄を演ずる人間が出てくる。

特撮メイクを施して疾病や傷害を演ずることで初動対応者のスキルアップに貢献するのが元来の「クライシス・アクター」の役目であった。さて、このDavid Hogg氏は、どういう役割を果たしていたのであろうか。本当に「クライシス・アクター」なのであろうか。もしそうだとしたら、傷病者役を演ずる危機管理訓練の為の「クライシス・アクター」であったのか、それとも一部ネットで言われていた情報撹乱の為の「クライシス・アクター」であったのだろうか。はたまたフロリダ州のインタビュー直後のカリフォルニア州での目撃は偶然であるのだろうか。



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