東北大学原子分子材料科学高等研究機構の平田秋彦助教、陳明偉教授らの研究グループは、鉄鋼材料中に酸化物を分散した強度の高い複合材料であり、原子炉内などの高温下で使える「酸化物分散強化型鋼(ODS鋼)」中に存在するナノ酸化物の構造的な特徴を明らかにした。ODS鋼の高温下における優れた強度と、中性子照射に対する耐性などの物性を知る手がかりになる。英科学誌ネイチャー・マテリアルズ電子版に発表した。
研究グループは、球面収差を補正する装置を搭載した走査型透過電子顕微鏡を使ってODS鋼を観察した。ビーム径が1オングストローム(オングストロームは0・1ナノメートル、ナノは10億分の1)の集束した電子線を試料の上に走査すると、直径2ナノ―4ナノメートルの微細な酸化物の像が撮像できた。この像を使って、ODS鋼中の特徴的な酸化物の構造モデルをシミュレーションによって作製した。
東京農工大学大学院工学研究院の養王田正文教授、ADEKAなどの研究グループは、塩素を含む揮発性有機化合物のうち「シス―ジクロロエチレン(cDCE)」の塩素を、短期間で取り除くことができる微生物集団(コンソーシア)を作ることに成功した。
この微生物集団は大量培養しやすい。集団に含まれる細菌が、別の有機化合物の塩素も取り除ける新たな種類であることも明らかにした。有毒な揮発性有機化合物の浄化手法に応用できそうだ。
今回作った微生物集団は、10ppm(ppmは100万分の1)のcDCEを、約3週間で塩素のない無害なエチレンに変えられた。通常、cDCEの脱塩素化は数カ月かかることが多い。5リットルの培養装置を使って、cDCEを繰り返し添加すると2倍に増殖し、培養しやすいことも確認した。