1週間のテレビ視聴率のランキングで、ワースト記録が生まれた。1位がたったの18.1%しかなかったのだ。テレビ離れは、どこまで深刻化しているのだろうか。
産経新聞は、ビデオリサーチの数字(関東地区)をもとに「週間視聴率トップ30」を毎週まとめている。2011年10月3~9日の1位の視聴率は、「史上最低」の18.1%(笑点、日本テレビ)だった。
「12%台でトップ30入り」という悲惨状態
産経記事(10月12日付)によると、「18.1%」は、2009年4月末から5月頭の週の18.9%を下回るワースト記録だ。「週間1位が17%台」が目の前に迫っている形だ。
また今回は、ほかにも「前代未聞」の低い数字が相次いだ。2位(連続テレビ小説カーネーション、NHK)が17%台で、4位が16%台という低さだった。
今の時期は、多くの新番組のスタートを控えた「特番週」ではあるが、それは例年のことだ。
前週(9月26日~10月2日)も「前代未聞」の低い数字があった。12%台の番組がトップ30に入ってしまった。記事担当者は「ついにその日がきた、という感じだ」と書いた。
直近4週のトップ30を見比べると、20%台が上位6位(トップは25.9%、首都圏ネットワーク、NHK)まで続く週もあれば、1位は21.3%とかろうじて20%台で、2位は17.6%の週もある。「1位が17%台」は現実味を帯びているようだ。
6月中旬には、ゴールデンタイムの入り口、19時台の民放全局の視聴率(関東地区)が1ケタになったことがネットで話題になったこともある。
こうした数字をどうみるか。「テレビのゆくえ」などの著書がある同志社女子大の影山貴彦教授(メディア・エンターテインメント論)に聞いた。影山教授は、元毎日放送プロデューサーだ。
「保身や惰性で番組を作っている」
影山教授によると、経済的理由から「番組を安く作り、かつすぐに視聴率を求める」という傾向がしばらく続いたため、最近のテレビ局の現場では、「番組作りへの熱の低さ」や「あきらめ」が蔓延しているそうだ。
「保身や惰性で番組を作っている」のが画面を通じて視聴者に伝わるほどのレベルに達しており、「低視聴率が話題になることが続くのは、不思議ではない」と指摘する。
一方で影山教授はエールも送る。
現場も「上司」も、「当たりそうな番組」ではなく、「本当に作りたい番組」を視聴者にぶつけてほしい。最初の視聴率は低いかもしれないが、情熱が伝われば結果的には視聴率につながるのではないか。
「視聴率をいったんは捨てる開き直りが必要な時期に来ている」。目先の視聴率を追うばかりでは、じり貧傾向に歯止めはかからないだろう、というわけだ。
テレビの地上波は、インターネット利用の増加だけでなく、テレビ番組の録画視聴や衛星放送との競争にもさらされている。
また、7月の地上デジタル放送への完全移行(被災東北3県は除く)に伴い、NHK受信契約の解約件数は、9月末までに9万8000件にのぼった。
対応型テレビへの買い換えに伴い、一端解約して再度契約するケースも少なくないため、9万8000件の内、どの程度が「テレビなし生活」を選んだ人なのかはまだはっきりしないが、テレビの世界に異変が起きているのは間違いない。