「茶屋四郎次郎、伊賀を駆ける」 諏訪宗篤 朝日新聞出版 2018.2.28
夜通し駆け続け、逸早く家康に本能寺の変を報せた茶屋四郎次郎。
かつて徳川家に仕えていたが、今は徳川家出入りの一商人である。
忠義心と打算の双方から、茶屋は奉行として一行を率いて、魑魅魍魎跋扈する伊賀の地を越えて家康を三河に戻す決意する。
一方、光秀の家老・明智左馬助は家康の首を獲るべく、肥田玄蕃を差し向ける。
戦国の世の一幕。
「紅けむり」 山本一力 双葉社 2014.4.20
鍋島藩有田の薪炭屋大店・山城屋の主である健太郎は、公儀隠密からにわかに信じがたい話を聞かされる。
「伊万里周辺には塩硝(爆薬)の密造一味が潜んでおる。密造された塩硝の多くは江戸に運び出されておる」
公儀御法度の爆薬を密造していることが明らかになれば、鍋島藩は取り潰しともなりかねない。
江戸に縁のある健太郎は隠密に頼まれ、密造一味を捕縛するために、伊万里焼の回漕船に扮した隠密船で江戸へと向かう……
のだが、健太郎が行かねばならない必然性が、よくわからなかった。
江戸についた健太郎は、不手際を隠匿しようとする別の隠密たちの思惑によって、
命を賭した決断を迫られることになる。
有田で健太郎を支える杢兵衛が良かった。
その彼の口癖は
「苦労の先取りをして、まだ起きてもいないというのに、顔つきを歪めるのは愚の骨頂だ。難儀なこととむきあったときに、初めて思いっきり顔をしかめたらいい」