「星をつなぐ手」 村山早紀 PHP研究所 2018.8.14
「桜風堂ものがたり」の続編。
万引き事件がきっかけで銀河堂書店をやめて桜風堂書店で働くことになった月原一整。
他者と関わることを避ける傾向にあったが、
以前の仲間たちをはじめ、周りの人との関わりが変わってきた。
本好きの大女優にして元スーパーアイドルの鳴海は思う。
(伝えることが大事なんだ)
感謝の思いや、嬉しかったこと、大切に思っているということは、言葉にして伝えておこうと。そうすれば、いつか言葉は魔法になり、自分が大切にしている何かを守り、幸せにするかもしれないから。
自分がこんなにも幸運に恵まれてもいいのかと迷う一整に『星のカケス』から返信がくる。
『悲しい事件をあとから知ったとき、ひとは、自分の無力さに歯がみする。終わってしまった悲しい「物語」に自分が参加できなかったことを悲しむ。何で自分には何もできなかったんだろう、何とかしてあげたかったって。でも、もし、その「物語」に続きがあり、悲劇が何かしら救われたことを知ったら嬉しいよね?』
「いまもぼくは、彼のことを弟のように思っていますよ。
自慢の弟です」
と言う一整の従兄弟・蓬野に、渚砂が続ける。
「それを、その思いを、言葉にして伝えようよ。わたしたちは人魚じゃない。人間なんだから。言葉で思いを、伝えようよ」
思っているだけでは、通じないのだ。
存在しないと同じことになる。
書店に限ったことではない。
人間関係が煩わしくても、ネットで用が足せても、
人と人との出会いや関わり、言葉にすることの大切さが伝わってくる。
あったかくて、優しい。