酔漢庵【ゑゐどれあん】~エロケンの酔いどれ日記~

へっぽこプログラマーのつれづれなる日記です。

パブーで電子書籍を作ってみた

2014-12-14 23:29:49 | 電子書籍
クリスマスのショートストーリー「聖なる夜をあなたと」をブクログのパブー | 電子書籍作成・販売プラットフォームで電子書籍にしてみました。

20年ぐらい前に、パソコン通信をしていたときに書いたものがもとになっています。

元の原稿が残っていないので、内容を思い出して5年ぐらい前に、当ブログとは別のブログに投稿しました。
それをさらに修正して電子書籍にしています。

電子書籍版では誤字脱字を修正してエピソードをいくつか追加しています。
パソコン通信でも、別ブログでも、一つの記事として投稿しました。そのため、あまり長い物語にできませんでした。
そこで、電子書籍版では、説明不足のところを補って、ストーリー展開的に無理があるところを修正しました。

この記事のひとつ前の記事に、元ネタになったものをのせておきます。

興味がある方は、元ネタと電子書籍版を読みくらべてみてください。
もしかしたら、変に手を入れていない元ネタのほうがよかったりするのかもしれません。


電子書籍の元ネタ(聖なる夜をあなたと)

2014-12-14 23:23:34 | 電子書籍
クリスマス・ショートストーリー
「聖なる夜をあなたと」

クリスマスイブの夜。
通りはクリスマスのイルミネーションに彩られている。
交差点のそばにあるデパートの入り口にやや大きなクリスマスツリーがたっている。
麻奈美はツリーの近くのベンチに少し思いつめた顔をして座っていた。
なんとなくここ一ヶ月ぐらいのことを思い返してみた。

ファミレスで気心のしれた弘美、純一、麻奈美、良太、瞳、の五人がたわいのない雑談をしていた。
「クリスマスの日はね」真奈美がうれしそうに話し出した。
「メリークリスマスだけでお互いに気持ちを伝えあうの。それで、よけいなことは何も言わないの」
麻奈美は向かいに座っている純一の方を見ながら話していたが、その横にいる良太のほうにそっと視線を移しながらいった。
「相手がいればだけどね」
良太は真奈美の視線にり気づいていないようだった。
「だってよ」純一は笑いながら良太をひじで軽くこづいた。
「俺はいつものように一人で飲み屋だな」純一は真顔に戻って言った。
「あぁ、『る・シェール』にいくのね」瞳がからかうようにいった。
「そういえば、何度かみんなでいったことあったな」純一はそのときのことを思い出していった。

麻奈美は座っているベンチの上で両手をこすって息をふきかけた。
待ち合わせをしていた相手と一緒にその場を立ち去っていくので、まわにいた人がの数が少しずつ減っていく。
真奈美はなんとなく時計を見て時間をたしかめるとあたりを見回した。
そして、一週間ぐらい前のことを思い返していた。

「ごめんね買い物につきあわせちゃって」真奈美が申し訳なさそうにあやまる。
デパートでのクリスマスプレゼントの買い物につきあってほしいといって純一を呼び出したのだ。
「ま、ひましてたからかまわないけど」純一は笑って答えた。
「だけど、俺の意見なんかで参考になるのかな」
そんなこをいいながら二人はデパートの中をゆっくりと見て回った。
「これなんかどうかな」洋服店の中を見ているときに小さめのマフラーを手にして真奈美がいった。
「良太と二人でつけることを考えるともっと長いやつがいいんじゃないか」
同じマフラーを背の高い良太と小柄な真奈美が二人でつける様子を思い浮かべて純一はいった。
そんな純一の様子を見ながら真奈美は少し黙り込んでしまった。
「どうした?」と純一が聞くと真奈美は「ん……。なんでもないの」と答えた。

「どうした?」突然話しかけられて真奈美は驚いた。目の前に純一が立っていた。
回想と現実の純一がだぶってあせっていた。
「もしかして、良太と「うまくいかなかったのか?」
近くにある「る・シェール」で飲んでいたらしく、ほろ酔い気分のようだった。
「違うの。そうじゃないないの」麻奈美はちょっと黙り込んだ。

純一は腰をおとして真奈美と同じ視線になって、真奈美が答えるのを待っていた。
「私がクリスマスを一緒意に祝いたいのは……」
どういっていいかわからず、真奈美は少し黙り込んでいた。
それから、顔を真っ赤にして意を決したようにいった。
「私、純一のことが……。純一といっしょにいたいの」
それを聞いて純一はとまどっていた。
そしてここ一ヶ月ぐらいのことを思い返していた。
「ファミレスでみんなで話してるときなんかに、話のあいまに良太のことを気にしてを見てたじゃないか」
「純一の顔をまともにみることができなくて視線をずらしただけなの」
真奈美は困ったような顔でいった。「純一の横にはいつも良太が座ってるでしょ。」
「それから、クリスマスプレゼントの買い物につきあってくれっていわれたから相手は俺じゃないと思ってたよ」
「照れくさくて、本当のこといえなかったの」
真奈美はうつむいたまま答えた。「それに、「純一本人に選んでもらったから、まちがいなく喜んでもらえるかなって思って」

純一は黙って麻奈美の顔をみた。
麻奈美は下唇を軽くかんで純一の顔を見ていた。
「ここでずっと待ってたのか」
真奈美はコートを着ていたが、それでも顔や手が寒さで赤くなっていた。少しかじかんでいるのが見てとれた。
「クリスマスは『る・シエール』で飲むっていってたでしょ」
真奈美は照れくさそうに答えた。「だから、ここならきっと会えると思って」
純一は「る・シエール」で飲んだときはいつもこのデパートの前を通ってアパートの部屋に帰っていた。
前にみんなで「る・シエール」に飲みにいったときもここの前を通って帰ったのだった。

麻奈美は下唇を軽くかんで純一の顔を見ていた。
純一は腰をあげてたちあがったがどう答えていいかわからなかった。
デパートの前の通りを時々車が行きかう。
純一は麻奈美の脇の下に手を通して、体を持ち上げるとベンチの上に立たせた。
小柄な真奈美がベンチの上に立つと純一とほとんど同じぐらいの背の高さになった。

純一の目の前に真奈美の顔があった。純一は黙って真奈美の顔を見つめていた。
真奈美も黙って純一の顔を見つめていた。

しばらくして純一は真奈美の顔から目をそらさずに微笑んでいった。「メリークリスマス」
「メリークリスマス」麻奈美はクリスマスプレゼントのマフラーをとりだすと少し背伸びをして純一の首に腕をかけてあげた。
純一はマフラーのあまった部分を真奈美の首にかけてあげるとゆっくりと抱き寄せた。

あたりに静かに雪が降りはじめた。

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