しろくま

軟い雑感、とりとめなく。

樅の木は残った

2014-12-21 | 本棚
山本周五郎。
津波で残った本。もらい物 なかなか減らない 未読本
季節柄、樅の木だし。



思い入れのまま書いてるので、わかりづらいかもしれないが、
不明点はAmazonなりWikiなり参考にしてください。

新聞連載だったせいもあり、ひとつひとつのエピソードは長さも話も読みやすい。
当り前だが、藤沢周平、岡本綺堂、池上正太郎の
最初から読み物・エンタメというギミックの楽しみみたいなやつとは別の
史実の緊張感、解釈、脚色が魅力。
上杉鷹山とか藩主の舵取りでなく、黒田官兵衛とか仕える身分の方。

仙台藩、世に言うお家騒動を、原田甲斐を通して描いた。
世間では、お家騒動の悪の側とされている。wikiにも、甲斐は返り討ちの傷がもとで亡くなり、
事件の責任を取らされ、原田家は切腹、お家断絶になっている。真相はどうなのだろう。

他にもこのような作品/構成もあるだろうが(なにぶん、時代物あまり読んでないもので)
伊達“お主も悪よのう”兵部と側近“御屋形様こそ”隼人らの所々の密談/断章が上手い具合で飽き飽きさせない*。

*綾瀬はるかで大河ドラマに開眼したが、逆引きで辿るのもおもしろい。

おみや、新八、黒田玄四郎の横道も味がある。伏線というには悲しい、
男たち/事件の陰の女のこと。情の部分。作者の目でもある。
ドラマ化では、このへんのキャスト、脚色も見せ所かな(テレビの見ていないが、たぶん)。

策士というより、普段の物腰などから、思慮深い情に篤い人物に描かれている。
鬼方(毒見)塩谷丹三郎のしらせに駆け付ける段。
死は生より受け入れるべきものとする死生観の甲斐だが、丹三郎を悼み伊達家を案じていた。
この辺は、忠義との天秤でもあり、じっくり考えたい。今の世、特攻と一緒くたにされそうで言いたくない。
真相は分からないが、甲斐がもし事件のこっち側の人だったなら…
伊達家と原田家と無常感が樅の木の題になったのだろう。
“くびじろ”(大鹿)もどこか、因縁を思わせる。長年追い続け他の者に撃たれたそれが甲斐とダブる。
あと最後に、甲斐の亡き後、宇乃がつぶやく。伊達家の危機が無事に救われ、残された樅の木、おじさまに。

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