しろくま

軟い雑感、とりとめなく。

田舎のパン屋の経済学

2015-12-06 | 本棚
ドラッカー*もマルクスもまだだが、手に取った。

正確には
田舎のパン屋が見つけた『腐る経済』/渡邉格(いたる)(2013年出版)
田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」
クリエーター情報なし
講談社


バイクとバンドとバイトばかりの筆者が
父親(学者)のサバティカル(研究充電休暇)でハンガリーに1年間滞在し、食べ物/農業に目覚め
一念発起、会社勤めの後パン屋修行、でパン屋タルマーリーを出す。
2011の東日本大震災を機に良い水に惹かれて岡山の田舎、勝山で店を再開。

苦労時代:修業時代こき使われて、ピンハネされたのが肥やしになっている
“食べる”にこだわり、天然酵母によるパン作り。
今日の文明の恩恵:IT・交通インフラを享受しながらも伝統・文化の根っこは忘れない職人かたぎ。

「良いパンを食べさせたい」の一心だが**、
必ずしもみんながみんな、◎かどうかはわからない。
世襲/旧来の良い(?)ところ悪いところ、しがらみ、とは別なので、
妥協・アバウトも込みで考えている人には、硬さ・気難しさに感じるかもしれない。

父親から勧められた『マルクス』で考えた。
経済は腐らない。バブル弾けようが、リーマンだろうが、
「利潤」追求のしわ寄せに、犠牲・反作用を生活に強いる。
食べ物だってそうだ。肥料の大量投入、添加剤、
もともとの生命力にドーピングで「腐らない」ようにしているだけ。
さらにコンビニなどの大量廃棄、安全性やら偽装やら…

経済活動(で蓄積される)不自然さをチャラにしていこう。
余剰→拡大再生産、投機などに走る資本家的な考えをやめてみよう(腐る経済)
と、経済屋からまっこうからダメ出しされることが書かれている***。

帝国重工とか日本クラインとか、押しも押されもしない大企業ならまだしも、
夫婦で始めた田舎のパン屋だし****。
「発酵」「循環」「利益を生まない」「パンと人を育てる」
の4つの柱で、好きにやるさ。

パン作りだけでなく、その原料、さらに地元・地域つながりの輪
代々続く古い家なら「しがらみ」だろうが、
職人の町に水を求めての災害移住、ほぼベンチャーという点でも興味深い。
人口減の過疎の町だが、足元から地元創生。

ここから私感
マーケティング、経済物はバブルだの言葉の呼び水、キャッチフレーズ経済
「三本の矢」どこ行った? (最初からバッタもんだろが)^^
一億総活躍だの地方創生だのがどれだけ空虚に響くことか。
規模と効率のTPP論者に、是非、「労働/手間と熟成」を読み取ってもらいたいものだ。
(それでなくとも、御用ライター・メディアの成果無き内輪ボメが情けないのに…)

おまけながら
合間に1ページづつ息抜き。その1:「酒種仕込み」から、その10で酒種パンが出来上がり。
これもたのしい。


*『もしドラ』だろ (トラ姐)
**思い出した。
大昔の本だが
土を喰う日々―わが精進十二ヵ月 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社
馳走という意味。
***会社、従業員・労働力の維持の最低限なところは維持した上で
****「タルマーリー」=「イタル」+「マリコ」
なんといっても、富に埋もれた回顧録でないのがイイ。
「天然菌」「自然栽培」子育て中、これからだ

♪お父さんは米屋なのに、朝パンを食べる~ (矢野顕子)ってあったな。
♪Akiko Yano - たいようのおなら - おとうさん - おとうさん - ぼくがおとなになったら - せんせい - おかあさんのおひげ - もし一億円あったら - いぬ - ぼくはなきみそ - YouTube
子どもが感じたおとなの不条理

♪「ごはんができたよ」 矢野顕子 - YouTube