かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 114

2022-08-12 12:05:57 | 短歌の鑑賞
  2022年度版 渡辺松男研究2の15(2018年9月実施)
    【〈ぼく〉】『泡宇宙の蛙』(1999年)P75~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、T・S、曽我亮子、
         渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子   司会と記録:鹿取未放


114 〈ぼく〉を糸で草木につなぎとめておく風のある日は気持ちよいから

         (レポート)
 〈ぼく〉を括弧で括っている。これは111番歌(ぼくはもう居ないんでしょうおかあさん試験管立てに試験管がない)で詠われた非在のぼくなのだろう。(慧子)

           (当日意見)
★111番の歌と聞いてやっと解釈ができました。(T・S)
★う~ん、解釈できない歌があってもいいのよ、きっと。合理的に解釈できないけどいい歌
 っていっぱいあるから。私は111番の非在のぼくがこのぼくだとは思いませんでした
 が。(鹿取)
★つなぎ止めておくというのは自分で自分をつなぎ止める訳ではないから、考えているんで
 すが。下句はよく分かります。じゃあ、風のない日は自分から抜け出してあちらこちらに
 行くのかなあ。糸で草木にとめておくのは面白い。(真帆)
★113番歌(休日はピアスして木の上にいる気体のようなぼくのときめき)の気体のよう
 なぼくだったら糸で止めやすいけどね。自分で自分をつなぎ止めるんでしょう。(鹿取)
★松男さんの歌って全て隅から隅まで計算して出来上がった歌ではないですよね。迢空が言
 った女歌の成り立ちみたいに、言葉と言葉を繋げてふっと出来上がる。でも、これでいい
 って作者が形にする。(鹿取)
★ロープとか鎖でなくて糸で繋いでおくのが面白い。ぼくを山かっこにしているところが松
 男さん。とっても素直で下句は独り言みたい。(A・K)
★やっぱり遍在するぼくなんでしょうかね。そうは言いたくないけど分身と言えば分かりや
 すいかな。分身のぼくはいっぱいいるんだけど、その一つ。ピアスしているぼくもその一
 つ。(鹿取)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする