かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 107

2022-08-05 14:07:14 | 短歌の鑑賞
  2022年度版 渡辺松男研究2の14(2018年8月実施)
    【はだか】『泡宇宙の蛙』(1999年)P69~
     参加者:泉真帆、A・K、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:泉真帆   司会と記録:鹿取未放
  

107 川となり家族は眠る月夜にて水こぼしつつ川うらがえる

    (レポート)
 お父さん・子どもたち・お母さん。布団に寝るさまを川の字で寝るというが、その家族の川が、寝返りをうちながら月夜にしんしんと寝ているのだ。寝返るさまを「川うらがえる」と表現し、水こぼすという。「月夜」が効果的で美しいポエムに仕上がっていて、余韻がすばらしい。(真帆)


     (当日意見)
★きれいですよね。きっと月光が差したんでしょうね、それで光る感じがして。川の字にな
 ったこの家族だけではなく他の家族にも、人類にも広がっていく普遍性を持っている。裏
 返るも詩的で、ここに時間があって永遠性というものも考えられる。ほんとうに好きな歌
 です。(A・K)
★「水こぼしつつ」はどういう状態なんですか?(T・S)
★月の光が当たっているので、それが水に濡れたような感じになる。月夜という場面設定が
 用意周到ですね。一首の中に透明な月の光がスーと流れているような感じがする。川も2
 回使っているけれど嫌な感じがしないし。この人のいい歌って難しい言葉を絶対に使わな
 いんですよね。(A・K)
★うーん、松男さんの歌に難しい言葉が全くでてこない訳でも無いですけど。精神現象学的
 な巨大ビルとか、意馬心猿のごときものがビルを高くするとか難しい概念の言葉が出てき
 て、うわあぁ~となった歌もありましたけどね。まあ、今のは「いい歌は」という限定付
 きだから違うけど。この歌は日頃猥雑な家族の形態が、川の字の眠りと月光によって浄化
 されていて、ほんとうに美 しい歌になっていますね。(鹿取)
コメント
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