かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 38

2022-03-31 10:23:09 | 短歌の鑑賞
  追加版 渡辺松男研究2の5(2017年10月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【白根葵】P28~
     参加者:曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子    司会と記録:鹿取未放


38 木は開き木のなかの蝶見するなりつぎつぎと木が開く木の胸
        (レポート)
 林、森、並木、そんな場で木のいっぽん、いっぽんを愛でたり話しかけたり、そのような作者像がうかぶ。そんなある時、木から蝶が舞い出た。それを木は胸を開いて胸中の大切を見せてくれた、との見立てだろう。まず一本がクローズアップされたのち、画面がつぎつぎ展開する。みんな各々の胸を開くべく。(慧子)


      (当日意見)
★つぎつぎと、というのは別の木なんですね。分かりました。(鹿取)
★ある一本の木にとても親近感を覚えた、そのことを蝶を見せてくれたと言っているのかも知れま
 せん。実際は蝶なんかいなかったかもしれない。(慧子)
★なるほどね、まあ、リアルな現実の歌ではないですね。蝶はまあいてもいなくてもいいですけど。
 大切なもの、美しいものをそれぞれの木が見せてくれたってことですね。(鹿取)


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渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 37

2022-03-30 10:43:23 | 短歌の鑑賞
  追加版 渡辺松男研究2の5(2017年10月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【白根葵】P28~
     参加者:曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子    司会と記録:鹿取未放


37 恋人は押し黙るときひんやりとスイショウランのようにも見ゆる

      (レポート)
 「押し黙る」という状態が作者の恋人においては不機嫌ではなく「ひんやり」していて「スイショウラン」のように感じるらしい。水晶という鉱石、さらに四君子のひとつの蘭から、清潔と賢明のイメージをあわせもつ恋人らしい。さらに、それらどちらも山、森、そんな場と切り離せず、恋人は森の精のような人だろう。(慧子)


    (当日意見)
★スイショウランは斑になった薄のような長い葉に、鈴蘭のような美しい花を付けるようです。こ
 ちらも可愛らしいですね。この花のように押し黙られたら憎めないですね。(鹿取)

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追加版 渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 36

2022-03-30 10:04:26 | 短歌の鑑賞
  追加版 渡辺松男研究2の5(2017年10月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【白根葵】P28~
     参加者:曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子    司会と記録:鹿取未放

       ◆後日意見を追加しました。

36 森深くあゆみ来たれば恋人のうしろにサンゴハリタケがいる

          (当日意見)
★レポーターのいう、恋人と同行したのではないには反対です。森深く女性が一人で行くのは危険 
 だし、別々に行く必然性はないし、大事な恋人なんだから一緒に行ったのでしょう。ふっとみた
 ら恋人のうしろにサンゴハリタケが花のように美しい姿で現れた。恋人の美しさと二重写しにな
 っているのでしょう。キノコですから動かないんだけど、「いる」と捉えたのが面白いですね。
 馬場あき子もたくさん植物を「いる」て表現していますが。(鹿取)


        (レポート)
 森深くへ分け入った。同行したのではなく、そこで会った恋人なのだろう。恋人の後ろにサンゴハリタケがいるという。傘のない白くて美しいきのこで、雲のようと例えたきサンゴハリタケである。まるで、恋人がそれに乗って天上界から会いに来ていたごとく。(慧子)

          (後日意見)  
 サンゴハリタケは「ブナ科の広葉樹の枯れ木や倒木の上などに発生する。食用になる」とネットには書かれているが、映像検索すると山毛欅の倒木ではなく立木に生えている例も多い。名前のように珊瑚のような形状で白くて美しい。この歌で、ブナの木に直接生えているサンゴハリタケを恋人のうしろに発見して、あっと思った設定なのだろう。(鹿取)
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渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 36

2022-03-29 14:21:24 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の5(2017年10月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【白根葵】P28~
     参加者:曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子    司会と記録:鹿取未放


36 森深くあゆみ来たれば恋人のうしろにサンゴハリタケがいる

        (当日意見)
★レポーターのいう、恋人と同行したのではないには反対です。森深く女性が一人で行くのは危険
 だし、別々に行く必然性はないし、大事な恋人なんだから一緒に行ったのでしょう。ふっとみた
 ら恋人のうしろにサンゴハリタケが花のように美しい姿で現れた。恋人の美しさと二重写しにな
 っているのでしょう。キノコですから動かないんだけど、「いる」と捉えたのが面白いですね。
 馬場あき子もたくさん植物を「いる」て表現していますが。(鹿取)


     (レポート)
 森深くへ分け入った。同行したのではなく、そこで会った恋人なのだろう。恋人の後ろにサンゴハリタケがいるという。傘のない白くて美しいきのこで、雲のようと例えたきサンゴハリタケである。まるで、恋人がそれに乗って天上界から会いに来ていたごとく。(慧子)
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渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 35

2022-03-28 11:53:26 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の5(2017年10月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【白根葵】P28~
     参加者:曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子    司会と記録:鹿取未放


35 こいびとの林檎学われのゲーデル論 霧晴れて別の尾瀬沼はあり

    (当日意見)
★レポーターは「ゲーデル論とはゲーテについての学究だろう」と書いていますが、ゲーデル論が
 なぜ名前からして違うゲーテについての学究になるのか乱暴すぎます。きちんと調べてください。
 ゲーデルというのは数学者です。不完全性定理という難しい論を打ち立てた人だそうです。松男
 さんは高校時代「数学の渡辺」と言われていたほど数学が好きで得意だったそうですから、ゲー
 デルについても詳しいのでしょうね。恋人の「林檎学」の方は専門に研究しているというのでは
 なく、おそらく恋人が林檎についてあれこれしゃべっている程度のことだろうと私は思いますが、
 林檎学を専攻しているのではないという証拠も歌の中にはないので、レポーターの解釈もありだ
 と思います。
 霧の中で君と林檎やゲーデルについてお喋りしているうちに、霧が晴れて素晴らしい景が現れた
 というのでしょう。「霧晴れて別の尾瀬沼はあり」はゲーデルの打ち立てた不完全性定理の裏側
 の比喩になっているのかもしれません、いろんな見え方があるって。ただ定理自体は読んでみて
 も私には難しくて分かりませんでした。(鹿取)


     (レポート)
 恋人は農学に携わり、特に林檎について深く研究しているのだろう。作者の造語であろう「林檎学」が新鮮にひびく。そして、作者のゲーデル論とはゲーテについての学究だろう。日々研鑽を積んでいるらしい三句まで。下句「霧晴れて別の尾瀬沼はあり」ときれいな風景に託されている内容は、霧が晴れるように理解したり成果を上げてもまた新しい不可解点、問題が起こり、さらに学び続けなければならない。そんな状況を「別の尾瀬沼はあり」としていよう。まなざしを先に置いている二人なのだろう。
   (慧子)

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