2025年度版 渡辺松男研究 2の35(24年11月実施)
『泡宇宙の蛙』(1999年刊)P171~ Ⅳ〈蝶いちまい〉
参加者:M・A、(岡東)和子、鹿取未放
事前意見:菅原あつ子、・山田公子
270 足裏を月面に向け眠るなりれいれいとよく洗いしのちに
(事前意見)
◆よく洗って清めたひんやりした足を(たぶん満月)月光があたるように出して眠る。「れいれいと」がとても効いていると思う。そして、とても気持ちよさそう!(菅原)
★常に汚れた足裏を洗い、更に清めるように月の光にさらして眠る小気味よさに爽快感を感じます。〈れいれいと〉はこの一首の前には…「一尺の雷魚を裂きて冷冷と夜のくりやに水流すなり」馬場あき子『早笛』の歌が。(山田)
(当日意見)
●山田さんが引いている馬場あき子の歌は『早笛』に載る有名な歌ですが、「冷冷と」という少し珍しい言い回しで忘れられない歌ですね。二十二,三歳の頃の歌だそうです。松男さんの歌もれいれいとが活きていて、月に対するリスペクトなのでしょうか。足を浄めてから眠るのですから。(鹿取)
●足の裏を月面に向けて眠る姿勢ってどんなんだろうと考えてしまいました。うつ伏せ?(岡東)
●私もお布団を掛けていたら足の裏は向けられないから、くるぶしから下くらいはお布団から出しているのかな、とか思いました。(鹿取)
●まあ、きれいに洗ったということで、あとは腹ばいとかそういうことは書かないで省いているのかなと。(岡東)
●何の為に月に向けているのでしょう?普通は尊いものに足を向けない訳で、恩人の方角などに足を向けて寝られないとか言いますけど。(鹿取)
●そういう言い方は誰でも知っているけれど、でも自分は月に足裏を向けて寝るんだという強い思いがあるのかもしれませんね。足ではなくて足裏というところがいいですね。たとえば月の霊気をいただくとか、異次元のものに変身するとか。実際の姿勢というよりも、意識の問題ではないでしょうか。(M・A)