かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の鑑賞  102,103

2022-08-01 11:29:36 | 短歌の鑑賞
  2022年度版 渡辺松男研究2の14(2018年8月実施)
    【はだか】『泡宇宙の蛙』(1999年)P69~
     参加者:泉真帆、A・K、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:泉真帆   司会と記録:鹿取未放
  

102 らっきょうのように濡れているはだか 一年生が湯舟から立つ

      (レポート)
 言葉を少しずつズラしながら詠っている。〈らっきょう〉ときくと一般に臭いや味を思うかもしれないが、一首は「濡れているはだか」だという。そのつやつやとして少々硬質ならっきょうを想起させておいて、一字アケのあと、湯舟から上がってほやほや湯気でも立てていそうな一年生の張りのある瑞々しい体が登場する。カメラワークといい、触感といい、実に鮮やかな歌だとおもう。(真帆)

      (当日意見)
★一年生がいいですね。やわらかそうでつるんとして。(T・S)

103 てんとう虫にとても似ている姪がいててんとう虫がランドセル背負(しょ)う

      (レポート)
 よく、〈ランドセルにしょわれてる〉と新一年生の愛らしさを言うが、この歌では、てんとう虫に似ている姪っ子なのだという。結句の「背負う」に「しょう」とルビをしたところにも、イメージ喚起への作者の周到な用意がうかがえる。(真帆)


      (当日意見)
★二つ目の天道虫は姪ってことですよね。「てんとうむしに似ている姪が」ランドセルを背
 負うのではなくて、「てんとうむし」がランドセルを背負うと行ったところが鮮やか。と
 ても意識的な言葉の使い方をしている。「せおう」ではなく「しょう」というのもいいで
 すよね。「て」が多いとおっしゃったけど、読んでいても「て」がピーときますよね。
    (A・K)
★てんとうむしが学校へ行っているという気がしますね。めだかの学校じゃないけど。
    (慧子)
★てんとうむしに似ているって言われてもどこがどう似ているのか具体的には分からないけ
 ど小さくて可愛らしいのでしょうね。一つ前の歌はらっきようでしたが湯舟からあがるら
 っきょうとランドセルをしょう天道虫は、小学一年生の同じ姪なんですね。(鹿取)
★人が思いつかないような比喩を持ってくるって、感覚ですよね。普通は可愛い花に例える
 んだけど、虫を持ってくる。そこが今の若い人の歌と違う。若い人の歌は閉じているから
 仲間内では分かるけど、おばあさんにはさっぱり分からない。(A・K)

コメント
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