知らない世界へ帰りたい(日本探求)

自分の祖先はどんなことを考えていたのか・・・日本人の来し方、行く末を読み解く試み(本棚10)。

日本国憲法の歴史と特徴を知る

2018年11月11日 14時42分45秒 | 日本人論
 2018年5月頃に放送された、憲法関連番組をまとめて見てみました。

① あさいち「知ってビックリ!世界のユニークな憲法」
(2018.5.2:NHK)
②「憲法と日本人 〜1949-1964 知られざる攻防〜」(2018.5.3:NHK



 ①は入門編という感じ。
 世界各国の憲法と日本憲法を比較することにより、日本憲法の性質をあぶり出そうという試みです。
 日本憲法は世界の中ではとても短い文章で、細かいことは規定せず、主に理念・概念が記されてるのが特徴とのこと。
 細則は憲法の下に位置する法律で定めればよいというスタンス。
 理念中心の文章は、解釈の幅が広いという特徴(番組では「ゴム型憲法」と呼んでいました)も内包します。
 これがメリットなのか、デメリットなのかは使い方次第。

 一方、世界各国の憲法を眺めると、コンクリート型憲法と呼ぶべき長い文章の憲法も存在し、そこには細則が記載されていて、日本の法律部分も含む構成になっている様子。
 国家権力の暴走を経験してきた国々では、キチンと規定しておかないと危ないという不安があるようです。

 なお、「あさいち」では憲法の具体的な内容や改正のポイントなどは話題に出ませんでした。
 ポイントをメモしておきます;

① あさいち「知ってビックリ!世界のユニークな憲法」
(2018.5.2:NHK)
解説は、ケネス・盛・マッケルウェインさん(東京大学社会化学研究所准教授)ほか。

□ 憲法とは?
 国の仕組みを決め、権力を制限するもの
 憲法はその国の取説(取扱説明書)である

□ 日本国憲法の特徴

1.平和憲法
「戦争放棄」を定めているのは世界で日本のみ(世界でも有名)。

2.人に優しい憲法:保障される人権の数が多い。
(第24条)男女平等(制定当時世界の憲法の35%)
(第25条)生存権(制定当時珍しかった)

3.短い憲法
 世界平均は2万ワード:最長はインドで14万、フランスは1万、アメリカは7千ワード・・・日本は5000ワード。
 日本のように短い憲法(ゴム型憲法)では、解釈の幅が広く、社会の変化に合わせやすい。
 ドイツのように長い憲法(コンクリート型憲法)では、解釈の余地が少なく、社会の変化に合わせにくい → たびたび改正が必要になる。
 どちらがよいのか?・・・国民性によるが、ヨーロッパではコンクリート型が好まれるようだ。ヨーロッパはEU設立の際に改訂・追加された条文が多いらしい。

4.世界で一番古い憲法
 約70年間改正されていないのは日本だけ。
 改正の条件は、①のみが70%、+②が30%
 ①議会の2/3が賛成、②国民投票で半分以上
 過去の改正回数は・・・インド約100回、ドイツ62回、フランス24回、韓国9回・・・日本0回。

□ 世界の憲法、条文例
【イタリア】
・労働者は休日と有給休暇を放棄できない。
【セルビア】
・人間のクローン化を禁止する。
【フィリピン】
・家族は老人を介護しなければならない。
【ドイツ】
・毎年GDPの0.35%を越えなければ国債の発行が認められる。
【インド】
・宗教や人種を理由にホテル・井戸などの利用を妨げてはならない。
・牛や子牛を殺さないように努める。

□ 憲法には改正できない条項も存在する
・米国の憲法では1つだけ:「上院議員は各州から2名を選出する」・・・人口80万人のワイオミング州でも、人口4000万人のカリフォルニア州でも同じ2名であり、日本が憲法違反とした2倍ではなく50倍も差がある!

□ 憲法改正の失敗例
・米国の禁酒法:キリスト教の教義にならい制定したが、闇取引が横行して収拾がつかなくなり、歳改定せざるを得なかった。



 ②のドキュメンタリーは戦後の憲法改正論議の経緯を追った内容です。
 米国のわがまま言いたい放題がすごい!
 なんだか現在のトランプ大統領は、米国そのものを体現しているような気になってきました。
 米国は日本の軍国主義の芽を摘むために第九条「戦争放棄」を盛り込んだのに、東西冷戦に日本の軍事力を使いたくなると、舌の乾く間もないたった2年後には掌を返して「軍備可能」となるよう憲法改正しろと圧力をかけてきたのです。

 改憲には、次の二つの流れがあると解説していました。
1.軍備を可能にしたい(米国からの圧力がメイン)
2.米国に一方的に押しつけられた憲法はイヤ

 しかし日本国民は1956年、憲法改正に「No!」と主張し、現在に至ります。
 そうです。日本国民は過去に一度、「No!」といっているのです。
 この事実、私は知りませんでした。

 現在の安倍政権は、なぜ改憲を訴えるのでしょうか?
 「再軍備」なのか、「自主制定憲法」なのか・・・
 ただし、前回の改憲の時と「再軍備」の質が異なってきているように感じます。
 米国のための「再軍備」ではなく、日本を守るための「再軍備」へと。
 やはり究極は「再軍備は必要なのか?」を国民がよく考えて判断すべきことだと思います。

 ポイントをメモ;

②「憲法と日本人 〜1949-1964 知られざる攻防〜」

□ 1947年、日本国憲法制定
・米国GHQ主導による作成
・日本の軍国主義復活を阻止する目的で「戦争放棄」の条文を記載した唯一の憲法。

□ 米国による憲法改正への圧力
・しかし、第二次世界大戦後の冷戦激化の世界情勢の中で、米国は日本の軍事力を使いたくなり、軍備ができるよう改正を迫り圧力をかけ始めた。
・米国は日本の経済団体へも働きかけた。
・経団連内の「防衛生産委員会」(初代会長は郷古潔:三菱重工社長)が政府に試案を提出した。

□ 池田・ロバートソン会談
・保安隊(のちの自衛隊)の大幅な増員を要求:11万人 → 30万人
・日本国民が望遠の必要性に目覚めるためにどう教育していく必要があるのかが話題に。

□ 宮沢喜一の英文(!)日記
・彼は吉田茂内閣の時、池田勇人とともに「池田・ロバートソン会談」に参加した。
・1947年に憲法が制定されたが、間もなく、1949年に米国から改憲を迫られていた事実が記録されている。
・米国は共産主義に対する防波堤として日本に再軍備を要求した。それを「防衛ビジネスに引き込もうとしている」と記している。

□ 「押しつけ憲法」反対の動き
・1955年に自由民主党結党
・鳩山一郎、岸信介が、現憲法を「押しつけ憲法」と主張し、党の理念の一つに「自主憲法制定」を掲げた。

□ 複数の憲法改正試案
・今枝常男(元参議院法制局長)の改憲試案の作成には、外務省・大蔵省・防衛省の官僚のみならず、法の番人であるべき内閣法制局も関与していた。その理由として、法制局内には、GHQに強引に押し切られ、法制局で十分な議論がないまま制定された憲法に違和感・不満がくすぶっていたことが挙げられる。
・広瀬久忠(自主憲法期成議員同盟会長)試案に対する国民の反対が広がりはじめた。310万人の犠牲を払って手に入れた平和憲法を誇りに思い、その改正は戦前回帰につながるという雰囲気。

□ 自主憲法期成議員同盟
・初代会長は広瀬久忠。
・現在も継続している。

□ 1956年の小選挙区法案(鳩山内閣)で挫折した憲法改正派
・参議院・衆議院で2/3を占めるために小選挙区法案を提案したが、憲法改正の動きが見え見えでかえって国民の反発を買い、国政選挙で敗退した。
・これは、国民が改憲派に「No!」を突きつけた歴史的事実である。

□ 1957年「憲法調査会」設立
・憲法改正を目的とした団体だったが、結局報告書に改憲と護憲の意見を併記するにとどまり、解散した。

 それ以降、安倍内閣が登場するまで、歴代の自民党政権が改憲を主張することがなくなった。
 米国の改正圧力も、自衛隊ができてから弱まっていた。
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