疫病を描く・・・というと、日本の昔の疱瘡絵(疱瘡予防のお守りとしての絵)を思い出します。
はて、病はどんな姿で画かれてきたのか、ちょっと興味があります。
少し前に録画してあった番組を見てみました。
日曜美術館(2020.4.19 NHK-Eテレ)
<内容>
「疫病」をテーマとした美術をとりあげ、人間はどのように疫病と向き合い乗り越えてきたかを探る。小池寿子さん(西洋美術史)は中世ペスト期のイタリア壁画を読み解き、疫病の流行を経てルネサンスが準備されたと語る。山本聡美さん(日本美術史)は疫病を〈鬼〉の姿で表した絵巻を例に、可視化することで制御し病と折り合おうとしたと解説。ネットで護符として流行の妖怪「アマビエ」も登場、〈心が前に向く美術〉をご一緒に。
<内容>
「疫病」をテーマとした美術をとりあげ、人間はどのように疫病と向き合い乗り越えてきたかを探る。小池寿子さん(西洋美術史)は中世ペスト期のイタリア壁画を読み解き、疫病の流行を経てルネサンスが準備されたと語る。山本聡美さん(日本美術史)は疫病を〈鬼〉の姿で表した絵巻を例に、可視化することで制御し病と折り合おうとしたと解説。ネットで護符として流行の妖怪「アマビエ」も登場、〈心が前に向く美術〉をご一緒に。
この番組では、もっと昔に遡り、平安朝の絵巻に疫病が「鬼」として描かれていたと教えてくれました。
しかし、恐ろしい鬼というより、ちょっとユーモラスな印象。
おそらく、姿の見えない疫病への恐怖を、見える化して不安をやわらげる効果を期待したのだろう、と解説されました。
なるほど。
さて、それから800年が経った現在、日本は新型コロナウイルス流行に揺れています。
そこで突然登場したのが「アマビエ」という妖怪。
(⇩)これをパクった厚労省のCOVID-19感染拡大防止ロゴ
歴史を紐解くと、江戸時代末期に熊本県地方のかわら版に描かれたくらいの資料しか見当たらないそうです。
そこには、髪の毛が長くて、口がクチバシのように尖り、体は魚の姿をした、やはりちょっとユーモラスな姿をした妖怪が描かれています。
その妖怪は海から現れて、「私を書き写して人に見せなさい」と言い残して去って行きます。
別に見せたから疫病退散の御利益があるとか、一言も言っていません。
でも、SNS上で活躍する某漫画家がこれを取りあげ拡散したところ、現代人の不安な心に刺さってブームになったという経緯らしいです。
実は「アマビエ」、「海彦」(アマビコ)が変化したモノという説もあるそうです。
アマビコは三本足の猿の顔をした妖怪で、やはり疫病退散の御利益があるらしい。
さて、番組ではヨーロッパの絵も扱っていました。
想像通り、疫病は「悪魔」として描かれていました。
13世紀のヨーロッパで猛威を振るったペスト(黒死病)は、人口の3割を死に追いやった病。
キリスト教が普及していた当時のヨーロッパでは、病は「罪を背負った人間に神の与えた試練」と考えられていました。
だから神に祈れば救われるはず・・・しかし祈れども祈れども人はバタバタ死んでいく・・・神は人を救ってくれない、キリストはウソではないか?
とキリスト教社会を終焉させるキッカケにもなりました。
そして人々は病と向き合うようになり、当時流行したのがセレブと死人が手をつないで踊る「死の舞踏」というモチーフの絵画だそうです。
その先には、生きていることの素晴らしさを再認識するルネサンスが到来します。
ペストが中世を終わらせ、ルネサンスを導いたのですね。
さて、現在に戻ります。
新型コロナウイルス流行は人類に何をもたらすのでしょうか。
一定の比率で高齢者の命が奪われることは覚悟しなければなりません。
しかし、それよりも心配なのは、人々の心のありようです。
新型コロナに対峙して、
人類は協力して克服するのか?
人類は他罰的になり分断して疲弊するのか?
残念ながら、現時点では後者の色が濃いようです。