知らない世界へ帰りたい(日本探求)

自分の祖先はどんなことを考えていたのか・・・日本人の来し方、行く末を読み解く試み(本棚10)。

「生き残った日本人へ~高村薫、復興を問う」

2014年11月08日 15時08分58秒 | 震災
 (NHK-BSで2012年3月に放送した番組の再放送)

 神戸大震災を経験した作家の高村薫が、東日本大震災を見つめた内容です。
 冒頭で彼女が自分に言い聞かせるように言いました;

 「震災はそれまで抱えていた問題を流し去りはしない、あぶり出すだけ」
 「東北地方の高齢化、過疎化が復興により解決するわけではない」
 「“復興”というかけ声の下、元に戻す意味があるのだろうか」
 「復興してどういう未来が可能なのか、思い描いたらよいのか?~これが見えない」

 宮城県の某村では明治以降3回の津波を経験した(明治28年、昭和3年、そして東日本大震災)。
 津波被害に遭う度に高台へ移転したが、ほとぼりが冷めるとまた利便性を求めて沿岸に住み始め、同じ被害に遭うことを繰り返している。
 それを山口弥一郎という民俗学者がフィールドワークでによる記録を残していた事例を紹介。

 現在の民俗学者、赤坂憲雄と高村薫が対談。
 誰も言い出せないけど、汚染された地域を“廃墟に化す”必要性を検討すべきではないのか?
 現実には、そうする勇気を持つ行政も政治家も存在しない。

 赤坂憲雄が言うことばに私は頷いた;
 「再生可能エネルギーは自然とテクノロジーの結婚である」
 「復興の名の下に土建バブルを作っても数年で消えてしまう」
 「再生可能エネルギーは、これから縮んでいく日本が選択すべきキーワード」
 「放射能汚染で使えなくなった農地・漁場を風/地熱/波/潮流を利用した再生可能エネルギー源とすべきだ」

 最後に高村薫がつぶやく;
 「生き残った日本人はどのような未来を選ぶのか?」
 「“失う”理性と覚悟はあるのか?」

 以上、印象深い番組でした。

 昨日(2014.11.7)に川内原発再稼働を希望するという陳情が県議会で採択されました。
 子どもたちに残す負の遺産になるのを知っていながら、現在の生活を選択した日本人の姿がそこにあります。
 原発事故で廃墟となり、汚染物質のたまり場になり住めなくなっても今が大切、という選択です。

 理性、覚悟、英知・・・これらの言葉がむなしく響きます。