知らない世界へ帰りたい(日本探求)

自分の祖先はどんなことを考えていたのか・・・日本人の来し方、行く末を読み解く試み(本棚10)。

「風景の抒情詩人 広重の“東海道五十三次”」

2016年07月18日 11時36分51秒 | 日本の美
2016.6.5 NHK日曜美術館で放映

 誰もが知る“東海道五十三次”の紹介番組を視聴しました。

 思い起こせば、私と五十三次との出会いは、「国際文通週間」の切手絵柄としてでした。
 当時小学生だった私にもそこはかとない日本情緒を感じた記憶があります。
 もっとも、人気は価値に比例して、蒲原>箱根>日本橋、という相場でしたが(^^;)。

 まず、各版画は摺りを20回前後経て完成することを知り、その繊細さに脱帽しました。
 美しいグラデーションの秘密です。

 ベストセラー&ロングセラーの第一の要素は「旅人目線」。
 版画を買った人があたかも自分で旅をしているような、うれしい錯覚を起こすカラクリが仕込まれています。
 作者の思い入れの強い版画には、旅人がすれ違う姿があると解説者がコメントしていました。

 風景描写が有名な中で、「人物描写」に焦点を当てた解説に興味が沸きました。

 人物を描かせたら“北斎漫画”の葛飾北斎の右に出るものはいない、と思い込んでいた私。
 しかし東海道五十三次をよくよく見てみると、広重の描写もなかなかのものです。
 人物の所作や表情から、その場の会話さえ聞こえてきそう。
 上方の「鳥羽絵」の影響を受けたちょっとデフォルメしたぎこちない動きが絵に膨らみを持たせているとの解説でした。

 以上、私には新鮮な発見がいくつもありました。
 この版画は、江戸時代の風景を残してくれただけでなく、当時の風俗や人情までもが詰め込まれたタイムカプセルなのですね。