「水爆実験 60年目の真実~ヒロシマが迫る“埋もれた被曝”~」
2014.8.6 NHKスペシャル

<番組紹介>
1954年、太平洋ビキニ環礁でアメリカが行った水爆実験。その当時、周辺ではのべ1000隻近くの日本のマグロ漁船が操業し、多くの漁船員が放射性物質を含む「死の灰」を浴びた。しかし、それ以降の研究者やメディアなどの追及にもかかわらず、第5福竜丸以外の漁船員たちの大量被ばくは認められてこなかった。
あれから60年、「なかったとされてきた被ばく」が科学調査や新資料から、明らかにされようとしている。立ち上がったのは、広島の研究者たちだ。長年、がんなどの病気と放射線被ばくとの因果関係が認められない原爆被爆者らを支援する中で編み出された科学的手法を用い、ビキニの漁船員の歯や血液を解析。「被ばくの痕跡」を探し出そうとしている。
東西冷戦の大きなうねりの中で、埋もれてきたビキニの被ばく者たち。被爆の苦しみに向き合ってきたヒロシマが共に手を携え、明らかにしようとする「真実」を、克明に記録していく。
“核”に関する番組を見る度に暗澹たる気持ちにさせられます。
このNHKスペシャルもしかり。
ビキニ環礁における水爆実験で、付近で漁業を営んでいた第五福竜丸が被曝したことは歴史的に有名です。
しかし、第五福竜丸ほど近くではありませんが、周囲で操業していたマグロ漁船は約100隻にのぼり、無視できない被曝と健康被害があったことが証明されたという内容。
アメリカの水爆実験は2ヶ月半の間に6回行われたことをはじめて知りました。
一回一回に台風のように名前まで付けるご丁寧さ。
水爆1つはヒロシマに落とされた原爆の1000倍の破壊力があります。
当時水爆実験場所から1300km離れた位置で操業していた第二幸成丸の乗組員だった老人の話;
「あるとき黒い雪のようなものが降ってきて甲板に1-2cm積もった。それが“死の灰”であることを後で知った。」
「水爆実験による被曝を疑いつつも、小さな漁村では水爆に関する話題はタブーだった。それがわかってしまうと漁ができなくなる、するとこの漁村は生きていけない。」
「そのうち漁師仲間が若くしてたくさん死んでいった。心の中で被曝による病気と感じつつも、誰も口にできなかった。」
・・・悲しい裏事情です。
過去の被曝を評価・測定する方法をヒロシマの原爆関連研究者が確立しています。
歯のエナメル質は代謝されないので正確ですが入手しにくい。
血液は入手しやすいが正確性に劣るそうです。
ビキニ環礁から1300km離れた場所で操業していた第五明賀丸の乗組員の歯が検査されました。
すると、319mSv という測定結果が得られました。
国際基準の許容範囲は100mSv以下ですから、異常高値と判定されます。
ヒロシマ原爆に例えると「爆心地から1.6kmで受ける放射線量と同じ」という驚異的な数字だそうです。
爆心地から1.6kmの被爆者は、被曝健康手帳が交付され、医療費が全額免除されるレベル。
血液検査では染色体が調べられました。
ビキニ環礁から1300km以内の乗組員18人中13人が高い染色体異常率を示しました。
計算によると、18人中8人が100mSv以上の放射線を被曝したことになるそうです。
日本政府は前項で記したように第五福竜丸の調査をしましたが途中で打ち切りました。
その他の漁船乗組員の調査も行ったものの異常が検出されるとそれも打ち切り、こちらは公表さえされずに闇に消えました。
おそらくアメリカの圧力があったのでしょう。
密かにアメリカには測定データが報告され、一方日本では“なかったことに”と封印されたのでした。
第五福竜丸による被曝が問題になり、反米・反核運動が盛んになった1950年代後半の日本。
当時のアメリカの文書が開示されました;
「日本における“放射能パニック”が共産主義勢力にアジアで勢力を伸ばすチャンスを与えており危険である」
「対策として“核の平和利用”をアピールすべきである」(アイゼンハワー)
「日本で原子力の活用を推進することは、被害を最小限にするもっとも効果的な方法である」
なんてことでしょう!
アメリカは冷戦相手のソ連との水爆開発競争で頭の中がいっぱいで、日本人の被爆など目に入らなかった様子が見て取れます。
さらにアメリカは、ヒロシマ/ナガサキ原爆+第五福竜丸の被曝による日本の反核感情を、“核の平和利用”を推進することにより抑え込もうと画策したのです。
つまり“毒をもって毒を制す”という構図。
そのしたたかさに日本はイヌのように従い、今日に至りました。
“核”に関するマイナスデータは、原発も含めて“隠蔽”する体質ができあがったのでした。
まあ、日本政府だけを責めることはできません。
戦争に負けると云うことはこういう事なのでしょう。
もし水爆実験をアメリカが停止してその開発でソ連が優位になり、アジアに勢力を伸ばして共産主義国家が乱立したら、今の日本はなかったかもしれないのですから。
当時被曝した漁船員が厚労省相手に調査と補償を求める映像で番組は終わりました。
しかし、この手の番組でいつも釈然としない感覚が残ります。
水爆実験をしたのはアメリカ。
誰が考えても諸悪の根源はアメリカ。
日本政府に責任を求めるのは、黒幕に手をつけず中間管理職や請負業者を訴えるようなもの。
「原爆による被曝」
「水爆実験による被曝」
これらに対して国際裁判所にアメリカを訴えるのが筋ではないでしょうか。
「大国の論理」を振りかざして相手にされないことは目に見えていますが・・・。
2014.8.6 NHKスペシャル

<番組紹介>
1954年、太平洋ビキニ環礁でアメリカが行った水爆実験。その当時、周辺ではのべ1000隻近くの日本のマグロ漁船が操業し、多くの漁船員が放射性物質を含む「死の灰」を浴びた。しかし、それ以降の研究者やメディアなどの追及にもかかわらず、第5福竜丸以外の漁船員たちの大量被ばくは認められてこなかった。
あれから60年、「なかったとされてきた被ばく」が科学調査や新資料から、明らかにされようとしている。立ち上がったのは、広島の研究者たちだ。長年、がんなどの病気と放射線被ばくとの因果関係が認められない原爆被爆者らを支援する中で編み出された科学的手法を用い、ビキニの漁船員の歯や血液を解析。「被ばくの痕跡」を探し出そうとしている。
東西冷戦の大きなうねりの中で、埋もれてきたビキニの被ばく者たち。被爆の苦しみに向き合ってきたヒロシマが共に手を携え、明らかにしようとする「真実」を、克明に記録していく。
“核”に関する番組を見る度に暗澹たる気持ちにさせられます。
このNHKスペシャルもしかり。
ビキニ環礁における水爆実験で、付近で漁業を営んでいた第五福竜丸が被曝したことは歴史的に有名です。
しかし、第五福竜丸ほど近くではありませんが、周囲で操業していたマグロ漁船は約100隻にのぼり、無視できない被曝と健康被害があったことが証明されたという内容。
アメリカの水爆実験は2ヶ月半の間に6回行われたことをはじめて知りました。
一回一回に台風のように名前まで付けるご丁寧さ。
水爆1つはヒロシマに落とされた原爆の1000倍の破壊力があります。
当時水爆実験場所から1300km離れた位置で操業していた第二幸成丸の乗組員だった老人の話;
「あるとき黒い雪のようなものが降ってきて甲板に1-2cm積もった。それが“死の灰”であることを後で知った。」
「水爆実験による被曝を疑いつつも、小さな漁村では水爆に関する話題はタブーだった。それがわかってしまうと漁ができなくなる、するとこの漁村は生きていけない。」
「そのうち漁師仲間が若くしてたくさん死んでいった。心の中で被曝による病気と感じつつも、誰も口にできなかった。」
・・・悲しい裏事情です。
過去の被曝を評価・測定する方法をヒロシマの原爆関連研究者が確立しています。
歯のエナメル質は代謝されないので正確ですが入手しにくい。
血液は入手しやすいが正確性に劣るそうです。
ビキニ環礁から1300km離れた場所で操業していた第五明賀丸の乗組員の歯が検査されました。
すると、319mSv という測定結果が得られました。
国際基準の許容範囲は100mSv以下ですから、異常高値と判定されます。
ヒロシマ原爆に例えると「爆心地から1.6kmで受ける放射線量と同じ」という驚異的な数字だそうです。
爆心地から1.6kmの被爆者は、被曝健康手帳が交付され、医療費が全額免除されるレベル。
血液検査では染色体が調べられました。
ビキニ環礁から1300km以内の乗組員18人中13人が高い染色体異常率を示しました。
計算によると、18人中8人が100mSv以上の放射線を被曝したことになるそうです。
日本政府は前項で記したように第五福竜丸の調査をしましたが途中で打ち切りました。
その他の漁船乗組員の調査も行ったものの異常が検出されるとそれも打ち切り、こちらは公表さえされずに闇に消えました。
おそらくアメリカの圧力があったのでしょう。
密かにアメリカには測定データが報告され、一方日本では“なかったことに”と封印されたのでした。
第五福竜丸による被曝が問題になり、反米・反核運動が盛んになった1950年代後半の日本。
当時のアメリカの文書が開示されました;
「日本における“放射能パニック”が共産主義勢力にアジアで勢力を伸ばすチャンスを与えており危険である」
「対策として“核の平和利用”をアピールすべきである」(アイゼンハワー)
「日本で原子力の活用を推進することは、被害を最小限にするもっとも効果的な方法である」
なんてことでしょう!
アメリカは冷戦相手のソ連との水爆開発競争で頭の中がいっぱいで、日本人の被爆など目に入らなかった様子が見て取れます。
さらにアメリカは、ヒロシマ/ナガサキ原爆+第五福竜丸の被曝による日本の反核感情を、“核の平和利用”を推進することにより抑え込もうと画策したのです。
つまり“毒をもって毒を制す”という構図。
そのしたたかさに日本はイヌのように従い、今日に至りました。
“核”に関するマイナスデータは、原発も含めて“隠蔽”する体質ができあがったのでした。
まあ、日本政府だけを責めることはできません。
戦争に負けると云うことはこういう事なのでしょう。
もし水爆実験をアメリカが停止してその開発でソ連が優位になり、アジアに勢力を伸ばして共産主義国家が乱立したら、今の日本はなかったかもしれないのですから。
当時被曝した漁船員が厚労省相手に調査と補償を求める映像で番組は終わりました。
しかし、この手の番組でいつも釈然としない感覚が残ります。
水爆実験をしたのはアメリカ。
誰が考えても諸悪の根源はアメリカ。
日本政府に責任を求めるのは、黒幕に手をつけず中間管理職や請負業者を訴えるようなもの。
「原爆による被曝」
「水爆実験による被曝」
これらに対して国際裁判所にアメリカを訴えるのが筋ではないでしょうか。
「大国の論理」を振りかざして相手にされないことは目に見えていますが・・・。