Sweet Dadaism

無意味で美しいものこそが、日々を彩る糧となる。

秋の輪舞。

2005-11-30 | 春夏秋冬
吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ (文屋康秀)


街灯と、冷たいビルの窓から漏れる灯かりにに照らされる夜道。
闇に温度を与え、彩るのは人工の光そのものではなく
高貴で且つ獰猛に巻き上げる風に呼応して
我先にとその身を闇の虚空に投じる光の色した銀杏の葉。

風はしゃらしゃらと枝を楽器に騒がしく豪奢な音を奏で
小さな掌のような、羽のような葉先を惜しみなく呼び寄せて
着飾らせた踊り子にそうするように、自らの周りを舞い躍らせる。

わたしは先ほどまで闇だった頭上で繰り広げられる
華やかな輪舞を見上げて溜息をつく。

踊りの輪から順に抜けてゆく葉は
地面に着いたそばから冬へ向かう休息の眠りについてしまうから
わたしの手の届かないノスタルジーの彼方へ沈んでしまうから

するりと列を外れた一葉が、中空で友の掌にするりと捕まえられる。
笑顔でわたしに差し出された葉は、友の掌を経てもなおひんやりと冷たく
眠りを妨げられたことを非難するかのように
わたしの掌のなかで一度だけちいさくふるっと震えた。