何が 欲しかった
すべてを 灰にしてまで
人間が 欲しかったのは
釈尊でした
自分ではない
理想的な
美しい人 立派な人 不思議な人
そんな人になるために
人間は数限りなく
虚妄の塔をこの世に造り続けてきたのです
そして文字通り
人の心の世界は
すべて灰になっています
なにもない
火星の砂漠が広がっています
人は虚妄の花を食べ続けて
とうとう願いがかない
自分以外の人間
釈尊になったのです
自分以外の人の皮をかぶり
声を盗み
思想を盗み
何もかも自分を造り変えてしまった
そうなることができれば
幸せだと思っていた
人類よ 今
幸せですか
栄光の大地 火星の砂に立ち
大観衆の視線を浴びているスターのように
両腕をひろげ
一体誰に自分を見てもらっていると
思っているのですか