傷だらけの悲哀を
まとって笑っていたわたしを
あなたはやわらかな愛の光で
やさしく包んでくれる
わたしに顔を見せないのは
人にはめったに見せたくない顔を
隠しているからでしょう
わかりますよ 赤きさそりの火よ
あなたの考えそうなことくらい
わたしにも
とんでもないひとですねえ
あなたは
おや お怒りを買いましたか
あやまっておかないと
あとが怖い
ふ 別に怒ってなどおりません
あなたときたら
ほんに 何もかもを
美しく歌いすぎる
わたしを そんなにも
美しく歌ってはいけません
あなたは わたしの
美しいところしか
見ようとしない
そうですね そのとおりです
まことに わたしは
美しいものしか 目に入らないほど
今 だいじなところが萎れている
ああ まことにそのとおり
ご心配なく 治りますよ
ああ 愛 を
形にしようとすれば
あなたはそのままの真実を
丁寧にこつこつと語られる
わたしは 愛に刺さる影を
魚を射るように刃に貫き
破り捨てては その叫びを
あからさまに書く
ふ 時には 馬鹿を殺さねば
人間は大変なことになる
ああ わかっています
そうでしょうとも
あなたとわたしのちがいは
悲哀ではない
すきとおるほどに切ない
真実の物語です
美しいですね
ふ
流れていた血は もう乾いたでしょうか
傷はもう ふさがったでしょうか
胸に刺さった棘は どれほどなくなったでしょうか
考えずにおりなさい あなたは
何も知らず 岩戸の中にいなさい
外に出てはいけません
わかっています わたしは
これからしばらく 世の中で起こることを
そう 絶対に見てはなりません
見たら 人類があなたを失うことになる
決して外に出てはなりません
わかりました