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月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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コル・スコルピイ・5

2013-05-10 06:51:57 | 詩集・瑠璃の籠

傷だらけの悲哀を
まとって笑っていたわたしを
あなたはやわらかな愛の光で
やさしく包んでくれる
わたしに顔を見せないのは
人にはめったに見せたくない顔を
隠しているからでしょう
わかりますよ 赤きさそりの火よ
あなたの考えそうなことくらい
わたしにも

とんでもないひとですねえ
あなたは

おや お怒りを買いましたか
あやまっておかないと
あとが怖い

ふ 別に怒ってなどおりません
あなたときたら
ほんに 何もかもを
美しく歌いすぎる
わたしを そんなにも
美しく歌ってはいけません
あなたは わたしの
美しいところしか
見ようとしない

そうですね そのとおりです
まことに わたしは
美しいものしか 目に入らないほど
今 だいじなところが萎れている

ああ まことにそのとおり
ご心配なく 治りますよ
ああ 愛 を
形にしようとすれば
あなたはそのままの真実を
丁寧にこつこつと語られる
わたしは 愛に刺さる影を
魚を射るように刃に貫き
破り捨てては その叫びを
あからさまに書く
ふ 時には 馬鹿を殺さねば
人間は大変なことになる

ああ わかっています

そうでしょうとも
あなたとわたしのちがいは
悲哀ではない
すきとおるほどに切ない
真実の物語です

美しいですね



流れていた血は もう乾いたでしょうか
傷はもう ふさがったでしょうか
胸に刺さった棘は どれほどなくなったでしょうか

考えずにおりなさい あなたは
何も知らず 岩戸の中にいなさい
外に出てはいけません

わかっています わたしは
これからしばらく 世の中で起こることを

そう 絶対に見てはなりません
見たら 人類があなたを失うことになる
決して外に出てはなりません

わかりました



コメント (1)
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