紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

お久しぶりです。

2008-05-20 23:24:43 | 独り言
皆様、お久しぶりです。

先週末は、私の両親、私の家族(妻&犬2匹)、妹の家族、一番下の妹の家族と…生まれて初めて4家族合同で、信州(長野県)の蓼科に、旅行に行ってきました。

愚息「ルパン」は、ドライブ慣れしているのですが、愚娘「ノエル」は初めてのロング・ドライブなので心配していましたが、何とか車酔いせずに、無事に旅行から帰還しました。(笑)

ところで、やはり信州…食べ物は「そば」が美味しかったです。

勿論、空気も水もですけどね。。。

自分の人生の中でも、全家族(私は3人兄妹です)で旅行するのは、勿論初めてで、今度いつこう言った旅行が出来るのかは?未定ですねぇ。
でも、兄妹、とても中が良いので、いつかまた機会が有ったら実施したいなぁって思います。

それから、昨日は会社の総会が有りまして、無事済みましたが、大変忙しくてブログ書けませんでした。

そんな訳で今日は約、一週間ぶりのブログ更新となります。

この後、goodなアルバム…1枚紹介しますので、お楽しみに…。。。

続き…ヴィレッジ・ゲートのクリス・コナー

2008-05-14 20:58:33 | ジャズ・ヴォーカル
さて、それでは、この歌手&バック・ミュージシャン、演奏曲、と3拍子揃った名アルバムの解説をして行きましょう。

ところで、実は…以前も言い訳じみた事を書いてお叱りを頂いた事が有るのですが、昨日このアルバムの記事を書いていたら…???久しぶりに投稿保存をしていなくて、記事を消失してしまいました。(涙)(涙)

私のブログ…記事を書き続けて20分ぐらいした時、一時保存しないと…駄目なんですね!
何回もこんなことやってたらいかんですねぇ!

さて、1曲目「ロット・オブ・リヴィン~」…オープニング曲に相応しく「クリス・コナー」が、とにかく元気良く歌い上げるナンバーで、曲間の「ロニー・ボール」のブギ・ウギピアノが、更に元気さを加速させます。

2曲目「エニープレイス・アイ・ハング~」…「クリス・コナー」のスキャット入りのディープなナンバーで、「ショーネシー」の繊細なドラミングと、「ロニー・ボール」の明るめのブロック・トーンが上手く絡み合って、goodです。
「マンデル・ロウ」の渋いギターも○です。
「クリス」は、とにかく歌詞を大事に、且つシャウトも入れて、完璧な歌唱をします。

3曲目「オール・オア・ナッシング・アット・オール」…私、個人的に大好きな曲ですが、「ショーネシー」のご機嫌なラテン・ドラミングに乗って、「ロニー・ボール」もラテン・ピアノで「クリス」の名唱を飾り立てます。
中間からは「マンデル・ロウ」の技巧高き伴奏ソロも突き抜けて来るし、「リチャード・デイヴィス」の重厚なベース演奏もハイになってくる。
「クリス」の歌も益々冴え渡り、ここに又、名唱が生まれました。

4曲目「サムシング・カミング」…「ロニー・ボール」、「マンデル・ロウ」とも急速調の演奏で序奏し、その後の「デイヴィス」のぶっといベース一発で、更に疾走系のナッバーに仕上げて行く。
その後、曲調が一転して「クリス・コナー」がじっくり情感たっぷりに、ハスキー・ヴォイスで歌い込む。
そして、もう一度曲調が疾走をして、フィニッシュへと導いて行く。
とにかく、劇的で、「クリス」の唱とバック・メンバーの素晴らしい技巧が堪能出切る逸品です。
このアルバム中でも屈指の出来栄えです。

5曲目「セントルイスからはるばると」…古きロックンロール調で、楽しいナンバーで、「クリス」はこう言うポップス曲を歌わせても、抜群に上手い…って当たり前か?
白人ジャズ歌手として、最高峰に位置する人(シンガー)だもん、ポップス曲なんてお手の物ですよねぇ?

6曲目「オ-ルド・デヴィル・ムーン」…「リチャード・デイヴィス」の地鳴りベースと「ショーネシー」のセンシティブなリズムから序奏が始まり、「クリス」が余裕と一寸遊び心を出した歌で、ややラフに仕上げています。
勿論、ラフって言うのはワザとで、「クリス・コナー」流の計算が有っての事でしょう。
ライヴ客を飽きさせないように、各歌に(歌い方)の変化を付けているんですね。

7曲目「あなたに夢中」…この曲では「クリス・コナー」は大人歌いをして、じっくり聴かせる。
バックでは特に「マンデル・ロウ」のギターが冴えてる。
大人の歌唱に対する大人の伴奏です。
勿論、「ロニー・ボール」の煌くピアノも良いし、ラテン・リズムで遊ぶ「ショーネシー」も上手いです。

8曲目「ブラック・コーヒー」…ジャズ歌手が登らなければならないエヴェレスト曲の一つがこれでょう。
「クリス・コナー」は敢えて正面から登山はしないで、アンニュイでけだるい、あばずれ女で攻撃する。
勿論、これも彼女の計算に則ってのことで、この曲は投げやり風の歌唱がピッタリ来ると判断しての所業でしょう。
彼女のアンニュイさにピッタリ寄りそう様に伴奏を仕上げる「ロニー・ボール」のピアノ演奏と、「リチャード・デイヴィス」の硬派なベース演奏に痺れます。

9曲目「グッドバイ」…この曲もじんわり…じっくり「クリス」が歌い込む。
ここでも「デイヴィス」のぶんぶんのブ厚いベース演奏が、ガッツリと彼女を包み込んで、曲の格調を上げている。
「リチャード・デイヴィス」…まじで寡黙で大きな仕事を平然と演ってのける漢です。
男の中の男(漢)ですねぇ!!

10曲目「オンリー・ザ・ロンリー」…「グッドバイ」に続いて「デイヴィス」が男気満開で、ベースで燃えます。
とにかく渋くてカッコイイし、この後の「クリス」の名唱を予感させる導入です。
逆に「ロニー・ボール」は、華麗に女性的に伴奏を仕上げて行って…「クリス」の歌唱を美しくサポートします。
「クリス」は一言一言を大事に丁寧に歌い上げて、この二人の芸術性に応えます。
ラストの「マンデル・ロウ」の一発ソロも素敵で、「クリス」とバック・カルテットの5人がとても高い打点で融合が計られた名唱、名演で、このアルバム、ベスト1でしょう。

11曲目「10セントひと踊り」…この曲も「クリス」がじっくり歌い上げて、ここでは「マンデル・ロウ」と「デイヴィス」の伴奏が行けてます。
そしてラストになると「クリス・コナー」が、ここぞとばかり絶唱で〆て、このグレートなライヴ・アルバムを締めくくるんです。

冒頭に言った通り、「クリス・コナー」(歌手)と言う名歌手と、ソロでも充分行ける、名人バック・ミュージシャン4人ががっぷり4つに組んだ、音楽の総合芸術が、高いステージで結合した名盤です。

難点は唯一点…録音が悪い事…これだけです。
もう少し録音が良ければ、コンプリートな1枚だったのが…一寸残念です。
でも、多くの人に聴いて欲しいですね。

ライヴで魅せる…ヴィレッジ・ゲイトのクリス・コナー

2008-05-12 23:23:19 | ジャズ・ヴォーカル
比較的小編成のコンボ(メンバーは相当強力ですよ!)をバックに、「クリス・コナー」が、パワフルに、伸びやかに、良く知られたスタンダード曲をメインに歌い上げた録音が、今日紹介するこのライヴ・アルバムです。

ライヴ故に、録音が余り良くないのが難点ですが、歌、曲、バックの演奏と…高水準でパーフォーマンスがなされており、聴き応え充分な名盤ですので、是非お楽しみ下さい。

アルバムタイトル…ヴィレッジ・ゲイトのクリス・コナー

パーソネル…クリス・コナー(vo)
      ロニー・ボール(p)
      マンデル・ロウ(g)
      リチャード・デイヴィス(b)
      エド・ショーネシー(ds)

曲目…1.ロット・オブ・リヴィン・トゥ・ドゥ、2.エニープレイス・アイ・ハング・マイ・ハット・イズ・ホーム、3.オール・オア・ナッシング・アット・オール、4.サムシング・カミング、5.セントルイスからはるばると、6.オールド・デヴィル・ムーン、7.あなたに夢中、8.ブラック・コーヒー、9.グッドバイ、10.オンリー・ザ・ロンリー、11.10セントひと踊り

1963年 ヴィレッジ・ゲイトにてライヴ録音

原盤…ROULETTE  発売…日本コロムビア
CD番号…30CY-1433

演奏・歌について…とにかく「クリス・コナー」のジャジーで、抜群に上手い歌唱力による歌もともかく、バックの名人たちの演奏にも耳が必ず行ってしまいます。
そんな訳で詳細はまた明日以降と言うことで…。。。

センス抜群のコンボ演奏…ジョージ・シアリング・アンド・ザ・モンゴメリー・ブラザーズ

2008-05-11 12:36:58 | ジャズ・ピアノ・コンボ
盲目の天才、白人ピアニスト「ジョージ・シアリング」と、南部出身のブルージィ且つダイナミズム抜群の天才、黒人ギタリスト「ウエス・モンゴメリー」&「モゴメリー・ブラザーズ」がコンボを組んだ、センス抜群のアルバムが、今日紹介する2枚目です。

アルバムタイトル…ジョージ・シアリング・アンド・ザ・モンゴメリー・ブラザーズ

パーソネル…リーダー;ジョージ・シアリング(p)
      リーダー;ウエス・モンゴメリー(g)
      バディ・モンゴメリー(vib)
      モンク・モンゴメリー(b)
      ウォルター・パーキンス(ds)
      アーマンド・ペラザ(congas)
      リカルド・チメリス(timbales、bongos)

曲目…1.ラヴ・ウォークト・イン(take11)、2.ラヴ・フォー・セール、3.ノー・ハード・フィーリングス、4.エンチャーンテッド、5.ストレンジャー・イン・パラダイス、6.亡き王女のためのパヴァーヌ、7.ダブル・ディール、8.アンド・ゼン・アイ・ロウト、9.ダーン・ザット・ドリーム(take8)、10.ルイズ・アン、11.マンボ・イン・チャイムズ(take11)、※12.ラヴ・ウォークト・イン(take1)、※13.ダーン・ザット・ドリーム(take1)、※14.マンボ・イン・チャイムズ(take1)

※3曲はCDボーナス・トラック

1961年10月9日、10日 L.Aにて録音

原盤…RIVERSIDE JAZZLAND JLP-55
発売…ビクター・エンターテインメント㈱
CD番号…VICJ-60018

演奏について…1曲目「ラヴ・ウォークト・イン(take11)」…「ウエス・モンゴメリー」がお得意のオクターブ奏法をヨーイ・ドンから繰り出し、次いで弟「バディ・モンゴメリー」が、短いがセンシティブなソロを演る。
「シアリング」は伴奏に専念し、「モンゴメリー・ブラザーズ」を優しく見守る。

2曲目「ラヴ・フォー・セール」…「コール・ポーター」作曲の有名なスタンダード・ナンバーだが、まるでMJQが演奏しているが如く、寛ぎとハイ・センスで纏められていて、好感が持てます。
そうですねぇ…MJQ+「ウエス・モンゴメリー」的なサウンドと言えば良いでしょうか?
序奏と中間のアドリブは「シアリング」が演ってくれるんですが、抜群のセンスとインテリジェンスを感じるソロで、流石としか言いようが有りません。

3曲目「ノー・ハード・フィーリングス」…「バディ」と「シアリング」の掛け合い的に序奏がなされ、「バディ」の跳ねるヴァイブと、「シアリング」の小粋なシングル・トーンが、極めてお洒落です。
「ウエス」は一人だけブルージィに仕上げて、スパイス役を買って出ます。
もう一人の「モンゴメリー兄弟」の「モンク・モンゴメリー」の分厚いサウンドのベース演奏も出来映え良くて、裏聴き所になってます。
全員が精緻且つエネルギッシュなコンボ演奏をしていて、ベスト・トラックと言っても過言では有りません。

4曲目「エンチャーンテッド」…「シアリング」作の室内楽的なスロー・ナンバーで、ここでは「シアリング」と「バディ」のゆったりしたユニゾン演奏が、寛ぎとチョッピリの気だるさを演出していて、いとおかしです。
この曲を夏の海辺、それも夕暮れ時に聴けば、思わず転寝(昼寝)をしちゃう癒し音楽ですね。

5曲目「ストレンジャー・イン・パラダイス」…この曲は(から)ラテン曲となって、「ペラザ」「チメリス」のWパーカッション(コンガ・ボンゴ)が加わって、演奏がとても華やかになります。
しかし「モンク・モンゴメリー」の分厚いベース・サウンドと、このパーカッション群がベスト・マッチを見せて、ラテン・ミュージックで有りながら、硬派に仕上がっていて、聴かせる音楽にしているのは◎でしょうねぇ。
後半部分は「ウエス」の腕の見せ所…真骨頂で、オクターブ奏法とブルーズ・スピリットが程好く炸裂します。

6曲目「亡き王女のためのパヴァーヌ」…ラテン・リズムばりばりで「ラヴェル」の名曲を演る辺りは…流石「シアリング」と言うべきか?
「ラヴェル」の印象派的な淡いサウンドとは対極にあって、極彩色の艶やかなサウンド(演奏)になっています。
「ペラザ」と「チメリス」が燃えていて、楽しいこと請け合いです。

7曲目「ダブル・ディール」…「ウエス」作の佳曲で、「ヴァイブ」と「ピアノ」のユニゾン演奏に「ウエス」が、サイドからジャジィに修飾して行き、これぞコンボ演奏の規範と言いたいぐらいのハイ・パフォーマンスがgoodです。
この後「ウエス」が更にマッシブなアドリブで決めてくれるし、「バディ」は弾み度120%のハイなソロを演って…ごきげんだぜぃ!
この曲も最上位クラスの演奏です。

8曲目「アンド・ゼン・アイ・ロウト」…「シアリング」作のマイナー・チューンで、短いが「ウエス」の立派なアドリブ・ソロと、自身「シアリング」のシングル・トーンでのアドリブが上品で、行けてますよ~!
この曲まえに改めて気付いたんだけど、ドラムの「パーキンス」が地味ながら、堅実にフロント3人をアシストしていて、拍手を送りたいですね。

9曲目「ダーン・ザット・ドリーム(take8)」…この曲(演奏)も前半は「バディ」の演奏を全面に押し出して、アクティブに仕上げて行きます。
中盤「シアリング」のソロに入ると、格調を上げる様にお洒落に決めます。
その後は「ウエス」が〆ますが、どことなく御大「シアリング」に遠慮している様なのですが、フレーズを聴くと…やっぱり「ウエス」を主張していますね!

10曲目「ルイズ・アン」…「バディ」作のロマンティックなバラード・ナンバーで、一寸甘すぎと評価する人もいるらしいのですが、やっぱりこのメンツなら、これぐらい濃い、ど真ん中直球勝負の1曲が有って当然だと、私は思います。
まじで、甘~いです。
まるで、純愛物の映画音楽そのものです。
でも…でも…僕は好きだな…こういうの!!!

11曲目「マンボ・チャイムズ~」の(take11)で、パーカッションの「ペラザ」と「チメリス」がかなりエキサイトして、明るく楽しいラテン・ミュージックがなされていますが、個人的には、やや明るすぎな感じで、LP初出時、不採用となった14曲目の方が好みなんですが…。

12曲目「ラヴ・ウォークト・イン(take1)」…採用トラックと比較して、一発目の録音なので、「バディ」が一寸緊張気味で、前半に音が若干ぶれているかもしれませんねぇ。
後半はのびのび演っているので、好演しています。
「ウエス」の出来は悪く有りませんで、最初からオクターブ奏法びんびんに来てます、来てます。
そして「シアリング」…余裕のソロです。
結構良い演奏ですよ。

13曲目「ダーン・ザット・ドリーム」(take1)…採用トラックと比べて特に悪い所はない気がします。
かなり良い演奏で、この曲&演奏辺りは、音楽プロデューサー、「シアリング」「ウエス」等で話し合って、好みの問題で決めた感じがします。
全員が渾然一体となった、素晴らしい緻密なグループ・コンボとして機能しています。

14曲目「マンボ・イン~」(take1)…こいつは良いねぇ。
特に「ウエス」の出来とアドリブ・ソロの気合…一番良いかも。
だけど、「ウエス」が良すぎて、「シアリング」のお気に召さなかったのかなぁ?なんて下衆のかんぐりをしたくなる演奏ですね。
私としては「ウエス」の演奏を全面に押し出して頂けると嬉しいんですが…御大…怖いからなぁ…でも、このCD化で収録してくれて、おかげで聴けて、ラッキーですね。

かなりエモーショナルな演奏です…ジョン・コルトレーン~バイーア

2008-05-11 09:40:13 | ジョン・コルトレーン
皆様、お早うございます。
今日は朝からブログが書けるのでラッキーです。

ところで、私事ですが、本日5月11日…○○歳の誕生日でございます。
実際の年齢…言いたく有りません。(笑)(笑)(笑)
でも、このブログに遊びに来られていて、コメントを下さっている方々とは、ほぼ同年齢で有ることは間違いないです。
認めたくないが、(絶対に認めたくないが:強調)所謂、「中年」…です。
でも、しかし…私の実物…決してイケメンでは、有りませんが、実年齢よりも10歳以上若く見られます。★チョッピリ自慢!
髪は(白髪)は、染めてますが、頭髪は未だ充分有ります。★小さな自慢?
まぁ、そんな訳で、今後も宜しくお願い致します。

さて、今日はトップ・バッターで「コルトレーン」が、かなりエモーショナルに吹き上げた、渋めの1枚を紹介しましょう。

アルバムタイトル…バイーア

パーソネル…リーダー;ジョン・コルトレーン(ts)
      フレディ・ハバード(tp)
      ポール・チェンバース(b)
      アート・テイラー(ds)
      ウィルバー・ハーデン(tp)※3曲目、4曲目
      ジミー・コブ(ds)※3曲目、4曲目

曲目…1.バイーア、2.ゴールズ・ボロ・エクスプレス、3.マイ・アイディアル、4.アイム・ア・ドリーマー、5.サムシング・アイ・ドリーム・ラスト・ナイト

1958年7月11日※3曲目、4曲目、12月26日 録音

原盤…Prestige PR-7353  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VICJ-23629

演奏について…クレジットに表記したが、このアルバムには二つのセッション演奏が含まれていて、それぞれにトランペッターとドラムスが代わって録音されている。
それぞれを代表する演奏として、3曲目「マイ・アイディアル」と、ラストの5曲目「サムシング・アイ・ドリーム~」をまず最初に取上げてみよう。

3曲目「マイ・アイディアル」…「コルトレーン」が非常にリラックスした感じで、伸びやかに、そして情緒たっぷりに歌い上げるテーマ演奏から始まる。
「ジミー・コブ」のシンバル・ワークと「レッド・ガーランド」の抑えたブロック・コードが、さりげなく「コルトレーン」をアシストして、正に珠玉の演奏と相成った。
次いで「ウィルバー・ハーデン」が「コルトレーン」の演奏を正面から受けて、音色は幾分明るめの物の、これまた叙情的に、丁寧にインプロヴァイズして飾り立てて行く。
「ガーランド」は一寸サロン風に、軽やかに寛いだアドリブで、センス抜群の演奏で花を副える。
フィニッシュは、勿論、もう一度「コルトレーン」に戻り、いかにも彼の「プレスティッジ」時代らしい、若々しいストレートな表現で吹き上げて終わる。
とても気持ちが良い曲&演奏です。

一方、5曲目「サムシング・アイ・ドリーム・ラスト・ナイト」ですが…「ガーランド」の序奏に導かれて、「コルトレーン」が、ノッケから正攻法のバラッド演奏でストレートに押してくる。
しかし、3曲目から約半年後の演奏なのだが、やはりと言うか、流石と言うべきか、「コルトレーン」は確実に進化しているのがハッキリ見て取れる。
同じ様に、メロディ・ラインをかなり忠実に、色付けしないでストレートに吹き切るにしても、微妙なパッセージ&ニュアンスと、何よりも音色が違うんです。
この曲では、インパルス時代の「バラード」の前進って言うのが、若干判る音色で、若々しい「コルトレーン」から、少し熟成された…ボジョレ・ヌーヴォよりも寝かされて芳醇さが増した「コルトレーン」が存在します。
終盤に来ての「チェンバース」のソロ・ボウイング演奏も渋くて素敵で、「ハバード」もブリリアントな美音で、シンプルにアドリブを決めてきます。
聴き比べてみると「ハバード」は、やっぱり「ハーデン」よりも一枚上手のトランペッターですね。
そして最後はもう一度、大将「コルトレーン」が、じっくりと高尚なバラードを演ってくれて…フィニッシュとなります。
どちらのバラード演奏も素敵ですが、白黒・優劣をつけるとなると、やっぱり後者の方が勝っていると思います。

タイトル曲「バイーア」…私、大好きなラテン・リズムから曲が始まって、ラテン大好きな「ガーランド」が、ラテン・コードでノリノリ、上げ上げでインスパイアして行くと、「コルトレーン」も早いパッセージで、「コルトレーン・チェンジ」を演り捲くって、皆をエキサイトさせて行きます。
それから、再度「ガーランド」に廻り、今度は魅惑のラテン調、シングル・トーンで右手をぶん廻して、エキゾティックなアドリブを決めてくるんです。
この曲では、重厚にリズムを刻むドラムス「アート・テイラー」と、終盤ボウイングで、ギコギコを言わす「チェンバース」が、しっかりとフロント・トップを下から支えてくれて、良い仕事をやってますよ。
ここでもフィニッシュはお決まり?で、「コルトレーン」がバッチリ吹き上げます。
ノリが抜群のオープニング曲ですね。

2曲目「ゴールズ・ボロ・エクスプレス」…「コルトレーン」オリジナル曲で、演奏は「ガーランド」抜きでなされており、とても早いパッセージの疾走ナンバー
系です。
とにかく、この演奏は「コルトレーン」が「ジャイアント・ステップス」風にバリバリ、ブイブイと吹き捲くり、彼のすごさと本領が充分に発揮された1曲なんですが、その相手を務める「アート・テイラー」の早敲き、超絶ドラミングが、それに勝るとも劣らず、えぐくて、超かっこいい!
この超人2人のバトル演奏…痺れちゃいますよ~!
気品とエモーショナル抜群なバラード曲(名曲)の間に咲き誇る…素晴らしい1曲ですね!!

4曲目「アイム・ア・ドリーマー」…「ウィルバー・ハーデン」が、かなりフューチャーされていて、期待に違わず、ブリリアントに華麗アドリブを演ってくれます。
「コルトレーン」は、(1、2、5曲目に比べて)やはり、演奏に若さが垣間見れて、それはそれで清々しさが有って良いもんです。
「ガーランド」は、この曲が一番「ガーランド」節を出してくれている感じがするねぇ。
華麗で、お洒落で、華やぎと寛ぎが上手くミックスされたソロ演奏です。
「チェンバース」もいつものヤツ…終盤で演ってくれて…お決まりです。
「ジミー・コブ」も最後に一発演りますよ。
いかにも太鼓敲きらしいフレーズが、楽しいです。
この曲は、このアルバムでは、ティー・ブレークの役目を果たしてくれます。
寛ぎの1曲です。

今日は私の誕生日と共に、世の中では「母の日」ですね。
このアルバム…「母の日」と言う日に合うと思いますよ。…きっと!
じんわりとした優しさが滲み出てくるアルバムです。

もうすぐ亡くなって10年にならんとしている…村下孝蔵~歌人(シングルコレクション)

2008-05-10 23:35:03 | J-POP
失礼ながら、とても二枚目とは言えない外見に似合わず?とても叙情的な、和風のフォーク・ソングを書き、歌っていた「村下孝蔵」が亡くなってから、もうすぐ10年が経とうとしています。

私、個人的には、日本のポップス・ミュージシャンで3本に入るくらい好きなアーティストだったので、亡くなったと聞いた時には、当時とてもショックだった記憶があります。

今日は、そんな彼のアルバムを1枚紹介したいと思います。
このアルバムは、シングル・コレクションなので、所謂、ベスト盤のカテゴリーに入り、「村下」の世間的に認知されている作品が多いので、皆様のお気にも召すはずだと思います。

それでは解説に入りましょう。

アルバムタイトル…歌人(シングルコレクション)

アーティスト…村下孝蔵(歌・作詞・作曲)

曲名…1.松山行フェリー、2.かげふみ、3.午前零時、4.レンガ通り、5.ゆうこ、6.初恋、7.少女、8.踊り子、9.花れん、10.春雨、11.酔いしれて、12.夢の跡

原盤…CBS SONY  発売…CBS SONY
CD番号…30DH-168

演奏について…1曲目「松山行フェリー」…「村下」にしては、かなりライトな仕上げのポップスで、いかにも80年代と言う印象の曲ですが、編曲でのギターとシンセサイザー、そしてバック・コーラスを効果的に使用していて、ちゃんと「村下」流にしています。
特に終盤での、ギター、シンセ、コーラスのコーダ的な盛り上げはgoodです。

2曲目「かげふみ」…名曲「踊り子」っぽい叙情性が抜群の1曲。
メロウな歌詞と、「村下」のソフトな歌声に対して、かなり骨っぽいドラムスとベースのチョッパー演奏が、良い味を出しています。
このブイブイ言わせるリズム楽器と、ソフトな歌声が、バッチリマッチするのが、「村下」流なんですね。

3曲目「午前零時」…序奏のエレキ・ギターの哀愁メロディから一気に引き寄せられるが、「村下」の歌は、やや投げやり風に、荒っぽい歌い方をしていて、これが又、「村下」の別の魅力を出している。
この男の歌声…普段はかなり女々しいってイメージを持っているけど、実は違うと言うことが良く分る。
終盤でのイントロのサビは、「風」の超名曲、「22才の別れ」を彷彿させる、名フレーズです。

4曲目「レンガ通り」…個人的に、待ってました~!!の絶叫をしてしまう、「村下」裏名曲の筆頭です。
センチメンタリズムと、繊細な哀愁メロディに涙出まくりで…ギターのリフと「村下」の女性的なぐらいに優しい心情を表現した切ない歌声が最高です。
この曲まじで良いですよ!

5曲目「ゆうこ」…まぁ、「村下孝蔵」を多少なりとも知っていれば、この曲はご存知の方も多いはず。
「初恋」や「踊り子」に繋がる、「村下」の初期のヒット曲。
※いや、確かデビュー曲だったかも。
「村下」は、天下のCBSがスカウト・発掘したアーティストだけに、(冒頭で述べたが、ルックスは良く無くても、それを全く払拭する音楽性と歌唱力があった訳で、)このデビュー曲から、もはや、その才能が煌いています。

6曲目「初恋」…「村下孝蔵」最大のヒット曲で、今さら説明は不要でしょう。
今、若いアーティストが、シングル・カヴァーしてますよね。
でも、やっぱりこの曲は「村下」じゃないと、僕は駄目だなぁ。
一番の持ち味と言うべき繊細さが、他のアーティストでは欠如している感じがする。
この叙情性120%の作品は、ガラス細工よりも壊れ易いんですよ。

7曲目「少女」…この曲も比較的初期の佳作で、曲の雰囲気からすると「踊り子」のカップリング曲だった気がする。
とても和風の仕上げがなされていて、「村下」節がビンビンと湧き出てくる曲です。
今の時代とは、かなりかけ離れている、まじな純情さが、ノスタルジックで郷愁を誘いますねぇ。
聴いていると、一気に高校生(中学生)へとタイム・スリップしちゃいますよ。

8曲目「踊り子」…いつ聴いても良い曲ですね。
オールドだ!懐古趣味だと罵られても、良い物は良いんです。
断固、妥協は致しません。
特にサビの部分で「村下」と哀愁のヴァイオリン伴奏に涙が溢れますねぇ。
こんなに清らかで、胸キュンの曲&サウンド…今のJ-POPには全く無いのが残念です。
この曲を聴く度に「村下孝蔵」の夭逝が、つくづく悔やまれます。

9曲目「花れん」…この曲も青春ソングで、若くて清くて、清々しさが溢れ出す魅力一杯の佳曲です。
甘くて、優しい「村下」のヴォーカルが冴え渡ります。

10曲目「春雨」…「さだまさし」の所属していた「グレープ」を思い出させる、序奏のヴァイオリン演奏が印象的で、ものすごく和風で、壊れ物の様に繊細なガラス工芸品の様な1曲です。
「村下」の繊細さ200%の歌も◎で、曲調・メロディは、まるで青春映画の1コマの様にも感ずる。
サビのアコースティック・ギターの伴奏が渋くて、メチャ、カッコイイです!
本当に大好きな曲です。

11曲目「酔いしれて」…案外有りそうで無い「村下」が、生ギター1本で歌い仕上げたフォーク曲で、(実際は中途からベース、ドラムスなんかも入るんですが…)70年代風のテイストが、とても美味しい曲です。
昔の高校生の純情さから、少しばかり酔いしれて…多分、大学生か、グリーン社会人の年代に、つまり少し酒が飲める大人になった心情が歌われています。

ラスト「夢の跡」…最後の曲は原点の青春帰りで、叙情性が思い切り噴出すぐらいの佳曲・名曲です。
「村下」が哀愁と、はかなさを見事に歌い上げてくれます。

この曲を聴いても、やはり「村下」がいないこと、彼が二度と戻らないことに対して、本当に侘しく、寂しく思います。
決して、大御所とまでは言われないミュージシャンだとは思いますが、彼の才能は他人には真似できない、言わば相撲界の一代年寄り的とも言うべき、稀有なアーティストだったと思います。合掌!!!

昨日の続き行っちゃおうかな?…ケニー・バレル~アット・ザ・ファイヴ・スポット・カフェ

2008-05-08 22:44:16 | ジャズ・ギター
今日は、昨日の続きです。

4曲目は「レディ・ビー・グッド」…「ボビー・ティモンズ」がピアノで入るトラックで、「ケニー・バレル」は、序奏からビンビンにギター・ソロを演り捲くる。
非常にキレ味のある演奏で、自己主張して行く。
また、相変わらず御大のタイム・キーピングは完璧で、若手に混じって、さりげなくも偉大にアシストして、場をどんどん盛り上げる。
「ベン・タッカー」は変わらず、渋く重厚に、そしてタイトにリズムを刻む。
そして終盤は「ティナ・ブルックス」の出番で、軽快に(フットワーク軽く?)いなせにアドリブを決める。
昨日も書いたが、テナーにしては音が明るめで軽くて、西海岸的なサウンドですが、これも「ブッルクス」の大きな個性ですね。
その後は、「ティモンズ」が華麗にファンキー節で、纏めて行きます。
「ブルックス」に負けないぐらい軽快なソロで、「ファイヴ・スポット」の聴衆を歓喜の渦に引き込みます。

5曲目「ラヴァー・マン」この曲もピアノは「ボビー・ティモンズ」ですが、序奏から、とても素敵な哀愁調で、聴く物の気持ちを惹きつける。
その後の「バレル」も、それ以上に、哀愁度120%のメロディ・ソロで、ロマンティック度も益々ハイに上げて、「バレル」の世界を構築して行く。
いつまでも聴いていたいソロで、まるでジャズ・ギター(とピアノの)桃源郷の世界の様です。
「ティモンズ」も「バレル」に負けて堪るか!と、更に魅惑度を上げて応戦します。
この2人をサポートする「ブレイキー」は、終始、ブラッシュ・ワークでお上品に仕上げて行って、2人のソロを際立たせます。
とにかく、聴いていると、徹頭徹尾ギターとピアノが織り成す素敵光線に打たれて、参っちゃいます。
このアルバム、ナンバー1のベスト・チューンで…最高です。

そしてラストの曲が「36-23-36」です。
この曲は「ローランド・ハナ」がピアニストになります。
まず、「バレル」が、渋く決めるブルーズで、青黒いサウンドでソウル・エナジーを抽出します。
受ける「ローランド・ハナ」も、かなりブルージィにピアノを弾いて行って、短い曲ながら、ワン・ポイント楔を打ち込む、一撃を演ってくれます。

今宵のファイヴ・スポットは、地味目のメンバーながら、ホットな演奏に魅せられますよ。

ケニー・バレルが熱く燃える…アット・ザ・ファイヴ・スポット・カフェ

2008-05-07 23:55:24 | ジャズ・ギター
今日は、ブルー・ノート専属ギタリストの「ケニー・バレル」のライヴ盤で行っちゃいましょう。
ライヴなので…と言う事も有りますが、参加のメンバーと、取分け「ファイズ・スポット」と言う場所故か、かなり熱い演奏がなされていて、行けてるんですよ。

アルバム(レコーディング)を熱くさせた最大の功労者?は…ずばりテナー・サックス奏者の「ティナ・ブルックス」だと断言しちゃいましょう。

そして、ファンキーの伝道師「ボビー・ティモンズ」と御大「アート・ブレイキー」が、コンボのメンバーにいる事も、見逃せません。

今宵は熱いライヴ・ディスクの宴を召し上がれ!!

アルバムタイトル…アット・ザ・ファイヴ・スポット・カフェ

パーソネル…リーダー;ケニー・バレル(g)
      ティナ・ブルックス(ts)
      ボビー・ティモンズ(p)
      ローランド・ハナ(p)
      ベン・タッカー(b)
      アート・ブレイキー(ds)

曲目…1.イントロデューシング・バイ・ケニー・バレル、2.バークス・ワークス、3.ハレルヤ、4.レディ・ビー・グッド、5.ラヴァー・マン、6.36-23-36

1959年8月25日録音

原盤…BLUE NOTE 84021  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-4021

演奏について…「イントロデューシング~」は曲紹介だけなので、割愛させて頂く。
2曲目「バークス・ワークス」…私の大好きな曲の1つですが、序奏から「ケニー・バレル」のブルージィで、青黒い(藍色)のトーンのディープな感覚のアドリブ・ソロが演奏される。
それを受けて、「ティナ・ブルックス」が、テナー音としては、幾分軽めのサウンドだが、良く歌わせる演り方で、軽快なアドリブ演奏を決める。
音色やフレーズの繊細さを考えると、かなり「レスター・ヤング」的な感じで、正直ブルー・ノート臭くは無いんだけど、しかしライヴと言う事も有って、静かに燃えているのは分る。
「ボビー・ティモンズ」は、もう彼の世界を全面的に押し出して、「ティモンズ」節を演り捲くり…出し捲くりで、聴いていれば、思わず納得しちゃう。
「アート・ブレーキー」は、かなり地味目にシャンシャンとシンバルを刻み、「ベン・タッカー」は、ズンズンズンとぶっといベースを演り続ける。
「ブルックス」の音色は軽めだが、非常に男っぽい硬派な熱い1曲に仕上がっています。

3曲目「ハレルヤ」…この曲ではピアノが「ローランド・ハナ」に代わり、「ティナ・ブルックス」は抜けるので、前半は「バレル」をフューチャーさせた演奏になっていて、1曲目とは、うって変わって「バレル」がファイトした闘志むき出しのソロを演ってくれます。
「ローランド・ハナ」はファンキーさは無いものの、右手の華麗なシングル・トーンを活かして、「ティモンズ」以上にエキサイティングなピアノ・アドリブを弾いて、「バレル」いや、御大「ブレイキー」をも触発して、ファイトさせます。
それを受けた「ブレイキー」は、スネアでリズムをキープしつつ、アフリックなドラミングで、ライオンが遠吠えする様に、エキサイトして行きます。
この曲での御大のドラム・ソロ…まじに聴き所満載です。
その御大一人のソロが長く続くんですが、ガンガン敲いているのに、非常に歌心溢れたドラミングで、リズム楽器なのに、メロディがイメージ出来るのは何故?…流石、御大…とても良い仕事をしてくれて…この曲では、「バレル」と「ハナ」も良い仕事をしているとは言っても、総合的に見ると御大の圧勝です。

続きは又、書きましょう。

ジャズ界屈指のテクニシャンが送るピアノ・トリオ…フィニアス・ニューボーンJr.~ハーレム・ブルース

2008-05-05 18:40:10 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
ジャズ・ピアニストの中で屈指のテクニシャンは?と言えば、必ず名前が挙がるのが、今日、紹介するピアニスト、「フィニアス・ニューボーンJr.」です。

まぁ、世間一般的に言って、ジャズ・ピアニストの超絶技巧3人衆は、1に「アート・テイタム」…(この人は別格で、「ヴラジミール・ホロヴィッツ」でさえ、ライヴに聴きに行った事があるんですね)それから、2に「オスカー・ピーターソン」、そして3に、この「フィニアス・ニューボーンJr.」を挙げる人が多い様です。

このアルバムは、そんなテクニシャン「フィニアス」が、コンテンポラリー・レーベルに残した代表的な1枚で、聴き易いスタンダード曲が多いのに加えて、バックの二人もグレートなビッグ・ネームなので、非常に人気が有る盤なんです。
何とベースが「レイ・ブラウン」、そしてドラムスが「エルヴィン・ジョーンズ」なんです。
どうですか?生唾ゴックン物で、今すぐに聴きたくなるでしょう?

それでは紹介して行きましょう。

アルバムタイトル…ハーレム・ブルース

パーソネル…リーダー;フィニアス・ニューボーンJr.(p)
      レイ・ブラウン(b)
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)

曲目…1.ハーレム・ブルース、2.スウィート・アンド・ラヴリー、3.リトル・ガール・ブルー、4.レイズ・アイディア、5.ステラ・バイ・スターライト、6.テンダリー、7.クッキン・アット・ザ・コンチネンタル

1969年2月12日、13日 L.A.にて録音

原盤…CONTEMPORARY S7634  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VICJ-23564

演奏について…オープニング曲にしてタイトル曲の「ハーレム・ブルース」…この強烈バック二人をして、いきなりブギウギ調の軽快なブルースで始まる。
「ブラウン」は強固な音色でビンビンにベースを弾くが、「エルヴィン」は、シンバル・ワークをメインにしているものの、余り煽りはやっていない。
まずは「フィニアス」のお手並み拝見と言った所でしょうか?
「フィニアス」は、高速の指捌きで、アドリブを色取り取りに修飾して行って、おかずを着け捲くる。
一方、テーマ・メロディを演る時は、低音を強調して、ブルーズの重みもちょっぴり出したりして、やることが憎いですねぇ。

2曲目「スウィート・アンド・ラヴリー」…スタンダード曲で、ゆったりと大人の時を過ごせる様に、「フィニアス」が華麗な指使いと、知的なスピリットで、リズムにアクセントを付けながらじっくりと仕上げていくナンバーです。
このリズムの変化でも「エルヴィン」は、スゴ・テクでピッタリと「フィニアス」に合わせて、ブラッシュと太鼓のポリリズムを対比させながら、職人芸を披露する。
「ブラウン」は、この演奏ではブルージーに渋く決めて、余り自己主張はしない。
「フィニアス」の技巧もすごいんだけど、とにかく、この曲での「エルヴィン・ジョーンズ」の演奏が、ものすごくて、皆完敗しちゃいますよ。
一押しのトラックです。

3曲目「リトル・ガール・ブルー」…これもスタンダード・ナンバーで、「リチャード・ロジャーズ」の作品ですが、「フィニアス」はアドリブで、かなり繊細に、そしてセンシティヴに演じて行きます。
この演奏では、一寸聴くと地味なんだけど「レイ・ブラウン」のパワフルなベース演奏がすごく良いんですよ。
カラフルな音色で、曲をキラキラ飾る「フィニアス」とは、正に対極に有って、渋く、野太く、縁の下の力持ちに徹していて…このgood jobで、より一層「フィニアス」の煌きが映えるんですねぇ。
「レイ・ブラウン」…流石です。

4曲目「レイズ・アイディア」…「レイ・ブラウン」が、自ら書いたビバップ・ナンバーとのことですが、この演奏は3人のトリオ演奏が高水準で纏まっていて、3人の技術を含んだ力量が合致しているこそのパフォーマンスが形成されています。
テクニシャン「フィニアス」のピアノをメインにフューチャーするのも、ピアノ・トリオとして有りですけど、渾然一体となって、マッシブにバトルを繰り広げて、三位一体となったピアノ・トリオも、また有りな訳で…この演奏は正しく後者なんですよ。
3人のアイ・コンタクトが完璧な1曲です。

5曲目、超名曲「ステラ・バイ・スターライト」…序奏からテーマ演奏に加えて、もはやカデンツァと言うべき、超絶のピアノ・ソロ演奏をする「フィニアス」の演奏から曲が始まります。
このカデンツァだけでも必聴物ですが、その後のトリオ演奏もすごいんです。
「コルトレーン・カルテット」時代を思わせる「エルヴィン」の硬派で、火傷しそうに熱いドラミングもえぐいし、「ブラウン」は抑え目な物の、やはり硬派なサウンドで「フィニアス」をバック・サポートします。
この二人の(スゴテク)演奏にも耳を奪われつつ、やはりこの演奏では「フィニアス・ニューボーンjr.」が、半端じゃない出色の出来で、4曲目とは全く逆の仕上げで…あくまでもスーパー・ピアニストを全面に押し立てたトリオ演奏で、終始進行します。
「フィニアス」を聴くと言うのであれば、この演奏の出来が最も素晴らしいですし、この演奏&曲こそ、正しく「フィニアス」のためのピアノ・トリオ演奏と言って良いベストトラックでしょう。

6曲目「テンダリー」…この曲では、今度は「レイ・ブラウン」の締まっていて、重厚なベース・ソロから曲が始まる。
非常にパワフルで、それでいて(ベースの)歌心十分に、かなり長めのアドリブを決めてくれます。
中盤から華麗に「フィニアス」が加わり、曲は劇的になってくる。
渋く、ピラミッドの様に安定した重厚な「レイ・ブラウン」のベース音を、「フィニアス」は、上から見下ろす猛禽類(大鷲)の様に舞う姿の対比がとても美しい。

ラスト7曲目「クッキン・アット・ザ・コンチネンタル」…ラストを飾るに相応しい疾走系のナンバーで、「エルヴィン」が、シャンシャン、バリバリ、ガンガンとドラムを敲き、「ブラウン」はすばやく堅実に(それに)ベースを合わせる。
「フィニアス」は、高速で運指して、ラスト・スパートで直線を捲くります。
兵たちが、まとめてゴール・インします。

「フィニアス」は、その力量からすると、(日本では)かなり過小評価されている様に思います。
って、言うか、日本人はテクニシャンのジャズ・ピアニストは、正直言ってあまり好きじゃないよね。
前述の3人とも「テータム」「ピーターソン」そして「ニューボンjr.」ファン投票をやったら、好きなジャズ・ピアニスト10人には多分入らないでしょうから。
※「ピーターソン」は、もしかしたら入る可能性が有るけど…。
日本人はシングル・トーンの哀愁系が、とにかく好きなんです。(私もしかり)

もしも好きなジャズ・ピアニスト、ベスト10をやったら、「ビル・エヴァンス」「キース・ジャレット」「ソニー・クラーク」「トミー・フラナガン」「ウィントン・ケリー」「ホレス・シルヴァー」「デューク・ジョーダン」「チック・コリア」「ハービー・ハンコック」なんかの哀愁系と知的系が上位独占すると思います。
でも、この「フィニアス」…とっても良いと思うよ!!!

レイ・ブライアントが初めて日本でレコーディングしたのが、このオール・マイン…アンド・ユアーズ

2008-05-04 15:07:02 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
本日3枚目の視聴&紹介です。
「レイ・ブライアント」…この厳つい?顔に似合わず、ジャズ界屈指のロマンティックで、センチメンタリズムで、可憐なピアノ演奏をする男です。
そう言う私も、実は「レイ・ブライアント」は大好きなピアニストでして、この初の彼の日本レコーディング盤…とても期待できますね。

曲目は全曲、「ブライアント」のオリジナルで、その辺も注目したいです。

アルバムタイトル…オール・マイン…アンド・ユアーズ

パーソネル…リーダー;レイ・ブライアント(p)
      ルーファス・リード(b)
      ウィナード・ハーパー(ds)

曲目…1.ウォーラス・ウォーク、2.ダーリン・マーリン、3.アデリア、4.リフレクション、5.アイ・ドント・ケア、6.ナッツ・アンド・ボルツ、7.パウン・チケット、8.ビッグ・バディ

1989年10月19日、20日 日本での録音

原盤…EmArcy  発売…日本フォノグラム  CD番号…EJD-13

演奏について…何と言っても一押しは、2曲目「ダーリン・マーリン」で決定!
序奏から「レイ・ブライアント」が作った超名曲「ゴールデン・イヤリングス」を彷彿させる、可憐で繊細で哀愁たっぷりのテーマ・メロディが心を揺さぶる。
その後、ラテン調のスティック・ワークで「ハーパー」が調子を刻み、渋く決めるベースの「リード」の二人がガッチリ脇を固めて、それに乗って「ブライアント」が魅惑のアドリブ・メロディを紡ぎ続ける。
曲は徐々に軽快に走り出して、アクティブな印象に変わってくるが、「ブライアント」の繊細な指捌きは煌くばかりで、「リード」の野太いベース・ソロとのコンビネーションが、聴き応えを増させます。
この珠玉の1曲だけでも買いですね。

次いで抜群なのは、4曲目「リフレクション」で、どこかで聴いたと思ったら、以前「フィニアス・ニューボーン」が「ウィー・スリー」で演っていた佳曲じゃないですか?
ヨーイ・ドンで「ハーパー」がリズムを始動すると、「ブライアント」が哀愁たっぷりのテーマ・メロディを演ってくれて、その後のアドリブ・パートが、またまた美しいんです。
どこまでも可憐で、菜の花畑を柔らかく飛ぶ紋白蝶の様に、軽やかで美しい。
これは、ここまで来ると「ブライアント節」そのものですね。
「リード」のベースは、逆に非常に男っぽい厚い音色で、彼女(踊り子)をサポートする、ラテン・ダンサーの様です。
この1曲も堪んねぇな!

3曲目「アデリア」…この曲もリズムはラテン調で、「ハーパー」が淡々と、「リード」が重厚にリズム・キープをして、「ブライアント」が煌びやかに曲を飾り付けていく。
当たり前なのだが、「ブライアント」の左手の和音が低音部ででんと構えて、高音部の右手が軽やかに舞い上がる。
このバランス感覚が絶妙なんですね。

5曲目「アイ・ドント・ケア」…これも実は名曲で、「ブライアント」自身の吹き込みは始めてなのですが、今迄何人かのジャズ・ミュージシャンが録音しているとのことで、(解説「児山紀芳」氏の解説より)耳に馴染むマイナー聴ブルースのテーマがとても心地良いです。
その後は、ブルーズの王道らしい、アドリブを「ブライアント」が弾いて、これがまた、出来が良いんですよ。
奇は全く衒わず、音階コードに忠実にアドリブ進行をするので、聴いていると、懐かしい印象さえ持ちます。
しかし、決して懐古趣味ではないですよ。
とにかく心地良いピアニズムが、この曲に溢れています。

オープニング曲「ウォーラス・ウォーク」…3/4拍子で演奏される、マイナー・ワルツで、表題は「せいうちが歩く様」の事らしい。
でもまぁ、どっしりとしてはいるけど、そんなに鈍重ではなく、渋い感じのワルツ(雰囲気はブルースだね)に仕上がってます。
3人(トリオ)の一体感を最も感じさせるプレイ・ワークです。

7曲目「パウン・チケット」…都会をイメージさせるコード展開で、「ブライアント」が、かなり能動的にアドリブを演ってずんずんと進んで行く楽しいナンバー。
終盤「リード」がカッコイイ、ベース・ソロを魅せて、ダンディズムを表現する。
個人的にはオープニング曲辺りで、お客の掴みに使いたい感じがしますね。

6曲目「ナッツ・アンド・ボルツ」…ドラムスをフューチャーしたトラックで、ブラッシュとスティックで、「ハーパー」が華麗にソロを展開する。
「ブライアント」はブロック・コードで「ハーパー」をアシストして、新人を盛り上げる。

ラスト「ビッグ・バディ」…フィニッシュに相応しい疾走系のブルーズ曲で、3人ともノリノリ、上げ上げでスポーティさ抜群ですよ。
これもライナー・ノーツからですが、リハ無しの一発録音したトラックとの事で、そう言われてみると、(スタジオにも拘らず)ライヴの様な緊張感がある様な気がします。
「ハーパー」の出来も良くて、ドライヴィング力が溢れているし、「リード」の推進力もえぐいぜ!
「ブライアント」の意図が見事にはまった1曲です。

伝統的なピアノ・トリオの原型を見せてくれる1枚ですね。

「フィル・ウッズ」が吹くスタンダード…ワン・ホーン・アルバム…ウォーム・ウッズ

2008-05-04 11:45:16 | ジャズ・アルト・サックス
「フィル・ウッズ」が若い頃に吹き込んだ、スタンダード・ナンバー・メインのワン・ホーン・アルバムが、今日紹介するこれなんです。

まず、印象的なのが、このジャケット…犬を小脇に抱えて横たわっているのが、若かりし頃の「フィル・ウッズ」なんですが、今流に言うと、結構なイケメンで、当時は女性にも人気が有ったんだろうな。

さて、演奏についてですけど、当然、この頃から「ウッズ」の個性はかなり出来上がっていて、独特のアルトのトーンも聴けるし、カッコイイ…アドリブ・フレーズも随所に演ってくれて、足りないのは年齢(後年の熟成が)無いだけで、逆にこの演奏の若々しさは武器になっていますよ。

アルバムタイトル…ウォーム・ウッズ

パーソネル…リーダー;フィル・ウッズ(as)
      ボブ・コーウィン(p)
      ソニー・ダラス(b)
      ニック・スタビュラス(ds)

曲目…1.イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ、2.イージー・リビング、3.アイ・ラヴ・ユー、4.スクィアズ・パーラー、5.ウェイト・ティル・ユー・シー・ハー、6.ワルツ・フォー・ア・ラヴリー・ワイフ、7.ライク・サムワン・イン・ラヴ、8.ガンガ・ティン

1957年9月11日、10月18日、11月8日 N・Yにて、MONO録音

原盤…?  発売…Epic Recors  CD番号…ESCA-7757

演奏について…個人的に大好きなのは、私のど真中ストライク・ゾーンの8曲目「ガンガ・ディン」で、ラテン・リズムにマイナー調メロディと正しく、王道です。
演奏も「フィル・ウッズ」の切味鋭いトーンで、瞬発力良く吹き上げるアドリブの出来は当然良いのは勿論、ピアノの「コーウィン」のシングル・トーンを主軸にしたアドリブが哀愁たっぷりで、抜群に行けてます。
後半のドラムの「スタビュラス」のソロも存在感を示し、とくにバス・ドラのズドンが腹に響きます。
カルテット4人が、見事にスクエアに嵌って、このアルバムで、ベスト・チューンを演ってくれますよ。

オープニング曲「イン・ユア・オウン~」…序奏からスムースにさりげなく「フィル・ウッズ」が吹いてくれるんですが、一寸ライト?と思いつつも、やはり気合が漲ってくると、トーン自体が鋭く、聴く物の心を抉ってきます。
しかし、そのアドリブ演奏は、とてもエモーショナルで、落ち着いていて、心を癒してくれるんです。
「コーウィン」の伴奏もさりげないのですが、ソロに入るとセンチメンタルな雰囲気も醸し出して、胸キュンですね。
「ソニー・ダラス」の堅実なベース演奏と、「スタビュラス」のシンバル演奏もさりげなくて良いですね。
序奏からこのカルテット…掴みはOKでしょう。

2曲目「イージー・リビング」…アルト・サックス奏者のバラッド演奏の定番ですが、「ウッズ」も例に漏れず、素晴らしいソロを吹きます。
「ウッズ」は温かみの有る音色で、奇を衒わずに、オーソドックスに吹き上げるんですが、完全王道が逆に胸を打つんですねぇ。
ジャズって革新的な事も、超オーソドックスも両方行ける稀有な音楽ですよね。
ここでなされる「ウッズ」の演奏は、シンプルに心地良く吹いてくれて…シンプル・イズ・ベストの代表的な演奏です。

3曲目「アイ・ラヴ・ユー」…この曲も「コール・ポーター」作の著名なスタンダードですが、ここでも「ウッズ」は、スッキリ爽快に、ストレート・アヘッドで曲を料理します。
食べ物に例えるなら、極上の松坂牛のヒレ・ステーキを、塩(岩塩)と挽き胡椒だけで、食わせるやり方で…良い素材(名曲)には、直球勝負で小細工しないのが一番(美味しい)と言う、とても判り易い方程式ですね。
この曲での3人のバック伴奏は、とても切れが有ってスパイスになっています。

7曲目「ライク・サムワン・イン・ラヴ」…「小西啓一」氏著の、ライナー・ノーツによれば、このアルバムは正しく「ウッズ」がウォームなトーンで吹いていることから、付けられたとのらしいのですが、そう言う意味では、この曲の演奏が一番ウォームな音色で、ほのぼの系で仕上げています。
しかし、中間部のアドリブは、「ウッズ」が結構攻めていて面白いし、とても良く歌わせています。
「コーウェン」のピアノも結構クールで、この辺の対比が趣き深いんでしょうね。
「ダラス」と「スタビュラス」は、淡々と実直に仕事してくれて…この二人をアシストしてます。

5曲目「ウェイト・ティル・ユー~」…非常に寛いだ軽快な演奏ですが、「ウッズ」はキラリと光るアドリブ・フレーズを所々に入れて、流石だと認識させます。
時折ブイブイ言わせるフレーズを演る時には、思わず、アッ「ウッズ節」が出たぁ!って頭に浮かんじゃうもんね。
サイドでは、抑えた表現で、小洒落たアドリブを「コーウェン」がさりげなく演ってくれるのも○でしょう。

4曲目「スクィズ・パーラー」…「ウッズ」のオリジナル曲で、割とアップ・テンポに進む1曲。
「ウッズ」のソロは当然ですが、かなりノリノリの「スタビュラス」のハイなドラミングが裏の聴き所の一つでしょう。
いや、裏じゃなくて表かな?
終盤「ウッズ」との掛け合いも◎ですし、相当なgood jobですよ!
それから、かなり地味なのですが、インテリジェックなブロック・コード・フレーズを随所に連発して、伴奏なのに?決めてくれる「コーウェン」も、実はMVP…いや助演男優賞ですね…。
「コーウェン」のアドリブ・ソロ・パートも、結構知的で行けてるしね。

6曲目「ワルツ・フォー・ア~」…「ウッズ」が、愛妻「チャン」に捧げたトラックらしいが、とにかく優しくて温かい音色で、「ウッズ」のアルト・サックスが包み込んでくれます。
このナンバーもアルバム・タイトル「ウォーム・ウッズ」が付けられた要因の1曲でしょうね。

シンプルにスタンダードを味わいたい方には、お薦めの1枚です。

「ジョージ・ラッセル」フィーチャリング「エリック・ドルフィー」~エズセティックス

2008-05-04 11:23:41 | エリック・ドルフィー
私のブログに遊びに来られている方達が、マイ・ブーム(アワー・ブーム)で最近「エリック・ドルフィー」を聴く機会が多いらしいんですよ。
そこで、今日は「ドルフィー」作品の中でも異色アルバムを紹介しましょう。

まず、アルバム・リーダー:名義人ですが、「ジョージ・ラッセル」が主役なんですが、実際は「エリック・ドルフィー」をフューチャーしているので、「ドルフィー」が(演奏)リーダーと言っても良いと思います。
勿論、演奏の主導権は、バッチリ「ドルフィー」が握っています。
但し、「ラッセル」のアレンジが有るので、自由気ままに?「ドルフィー」が音楽的な飛翔をしている訳では有りません。
ちょこっとビッグ・バンド風なテイストが有って、その枠の中で「ドルフィー」が演るべき事を、思い切り演っているんです。
「ドルフィー」のとってアレンジと言う鎖が、邪魔なのか?それともそれも踏まえた上で、果敢に挑戦しているのか?は聴いてからのお楽しみ…です。

奇才「ジョージ・ラッセル」アレンジの元、絶好調「エリック・ドルフィー」のバス・クラリネットとアルト・サックスの叫びを聴いて下さい。


アルバムタイトル…エズセティックス

パーソネル…エリック・ドルフィー(b-cl、as)
      リーダー;ジョージ・ラッセル(p、arr)
      デイヴ・ベイカー(tb)
      ドン・エリス(tp)
      スティーヴ・スワロー(b)
      ジョージ・ハント(ds)

曲目…1.エズセティックス、2.ナーディス、3.リディオット、4.ソウツ、5.オネスティ、6.ラウンド・ミッドナイト

1961年5月8日 NYにて録音

原盤…RIVERSIDE 9375  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VICJ-23798

演奏について…最も興味を惹く演奏…ラスト収録の6曲目、かなり俗的だが、「セロニアス・モンク」の書いた永遠のジャズ名曲「ラウンド・ミッドナイト」…これすこぶる良いです。
序奏のアレンジメントは、何か邦楽の様で…ちょっとおどろおどろしくて、一発で興味津々になりますね。
この入り方、非常に個性的で有りながら、「ドルフィー」のアルト・サックスは最初に有名なテーマを吹きます。
「ラッセル」はとても知的にさりげなくピアノでサポートし、「スワロー」の重量級ベースと「ハント」のブラッシュ・ワークも大地に根を生やして、しっかりサポート。
残る二人のホーン奏者「エリス」と「ベイカー」は、間奏でチョイ・サポを演るのみで、「ドルフィー」に全面的にソロを託します。
※実はこれが最高のアシスト・パスになっているんだぁ!
最後はエースに託して、自分たちはチョロチョロ邪魔しない…これが点をとる最高の秘訣?
しかし「エリス」も「ベイカー」のgoodなミュージシャンだけど、やはり、それでも「ドルフィー」とは格が全く違うですよ。
それから「ドルフィー」のアドリブが始まると、スタンダード曲と「ラッセル」のアレンジメントの枠内で、しっかりと縦横無尽に駆け回って、見事なインプロヴァイザーを見せ付けてくれて、流石「ドルフィー」の一言です。
調整や編曲の枠なんて、何の足枷にもなっていませんし、フリー系でいながらも、とても聴き易くて、おまけにスピリットも出し捲くって、このアルバムの価値と地位を何倍も押し上げてくれます。

オープニング曲&表題曲の「エズセティックス」…「ジョージ・ラッセル」オリジナル曲でも、最も有名な曲で、ここでも当然十八番です。
とても乾いた都会的なテーマと疾走するテンポに合わせて各人がソロを演ります。
まず、ソロを執るのがトロンボーンの「デイヴ・ベイカー」で、早いリズムに負けない、すごテクでエキサイティングなアドリブを演ります。
続いてトランペットの「ドン・エリス」…やや抑制した音色で、このセクステットのグループ・サウンド?として調整の一翼を担う。
敢えて抑える…控え目に…男の美学です。
その後の「ドルフィー」のバス・クラリネット…相変わらず、すげぇなぁ!
それから「ドルフィー」が演奏している時、「ラッセル」「スワロー」「ハント」のリズム・セクション3人が、必要以上にファイトするのは?どうして?
やはり、相当「ドルフィー」に触発されてるみたい。
特に「ハント」はおかずビンビンに奥儀を繰り出して、熱演してくれます。
圧倒される1曲です。

2曲目「ナーディス」…ご存知「マイルス」が書いた名曲ですが、この曲でも「ラッセル」の奇才ぶりが堪能できます。
「マイルス」以上に抑えて、知的で乾いた雰囲気で曲を進行させます。
ミュートで「マイルス」風?に「ドン・エリス」が、都会的に仕上げて行き、「ベイカー」もとても抑制した表現で繋ぎます。
それから「ドルフィー」のソロですが、バス・クラでテーマを吹くだけ?で、余り過激には演りません。
思えば、「ドルフィー」も昔は楽団に在籍していたので、こう言う事もできるんですよね。
編曲の妙が生きた作品ですね。

3曲目「リディオット」…「ラッセル」が「モンク」的なコードを多用して仕上げたバップ曲で、知的な「ラッセル」が素敵ですね。
それから「スワロー」のパワフル・ベース…裏聴き所ナンバー1の名演ですね。
これだけ太くて、重戦車の様なベース演奏…ちょっとやそっとでは聴けません。
終盤の「スワロー」のアドリブ・ソロ演奏もgoodです。
この曲は「ラッセル」が全面的に主導権を握って、そして「スワロー」を表に出して、ホーン3人は短い小節でソロを演ったり、ユニゾンで間奏を演るのみです。
最後も「ラッセル」が知的なソロ演奏で〆ます。

4曲目「ソウツ」…序盤はホーン3人が、ユニゾン&ハーモニーで異色のテーマ演奏をする。
まるでニュー・ヨークの街を歩く、探偵が調査をしているかの様で、そうですね、「ピンク・パンサー」の「クルーゾー警部」が、3枚目でなく、完全な2枚目で聴き込みをしている感じです。???
例えが良く解んねぇや!
中盤からは、曲のテンポを色々変えて、3人のホーン奏者が掛け合いを演って行き、「ラッセル」の編曲の冴えと、都会的なジャズ演奏が、微妙な空間(谷間)で交じり合う。

5曲目「オネスティ」…「デイヴ・ベイカー」オリジナルのブルースで、短いながらも「ドルフィー」のバス・クラのソロ演奏は聴き所です。
アヴァンギャルドさとブルージィさのブレンド加減が良い味を出してます。
勿論、馬の嘶きも演ってくれます。
「エリス」もミュートとオープンの両方で、トランペット・ソロを執り、このブレンドに更にスパイスを効かせます。
作曲者「ベイカー」のソロは、かなりオーソドックスなアドリブで、ブルース魂を見せ付ける。
過激なブレンドに、とてもベーシックな(食材)を合わせて、皆を上手く中和させてくれるんです。
「スワロー」も渋くソロを決めて、ラストはユニゾンで楽しく、上げ上げでエンディングです。

「ドルフィー」は、フリーだけでなく、アレンジの元で、ユニゾンやハーモニー演奏もOKな、引き出しの多い、偉大なミュージシャンってことですね。

中庸…自然体…無骨…厳格…ヨッフム指揮/ドレスデン・シュターツカペレ~ブルックナー交響曲全集

2008-05-03 23:38:49 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
今日も以前紹介した、(HMV)発売の超廉価、名盤全集の一つから、「オイゲン・ヨッフム」指揮、「ドレスデン・シュターツカペレ」の「ブルックナー交響曲全集」を紹介します。

その全集から、1曲代表して、「交響曲第4番変ホ長調」「ロマンティック」を取上げましょう。

スコアは「ヨッフム」お気に入りの「ノヴァーク版」を採用していて、いかにもドイツ交響曲とも言うべき、無骨、厳格でいながらも、自然体で中庸の美学を表現してくれてます。

アルバムタイトル…ブルックナー交響曲全集

オイゲン・ヨッフム指揮
ドレスデン・シュターツカペレ

1975年~1980年 ドレスデン聖ルカ教会にて録音

原盤…英EMI 
CD番号…5-73905-2 ※輸入盤(9枚組)

演奏について…今回はこの全集から代表して、ブルックナー交響曲第4番「ロマンティック」をセレクトしました。

交響曲第4番「ロマンティック」…第一楽章では、比較的ゆっくりなテンポで、この曲の厳格さと雄大さを余すところ無く伝える。
このアルバムでの「ドレスデン・シュターツカペレ」の音色は、(録音機器&技術や、収録場所(教会)の影響も無いとは言えないが、同時期の「ブロムシュテット」が演じた「第7番」が極めて透明感が高かったのに比較して)、かなり色付けがなされている。
と言っても、とても渋く地味な単色で、例えるなら、銅色(ブロンズ・カラー)或いは、燻し銀色(ガンメタリック)が、一番相応しい色だと思う。
金管楽器群は、華やかなイメージよりも、かなり(音の)光を抑えて、輝かしい音色ではなく、ブロンズ像の様に抑えた色だが、完成された美があるんです。
そして、何よりも清楚な神々しさと尊厳が有って、(「ブルックナー」と「ヨッフム」、そして「ドレスデン・シュターツカペレ」の)ゲルマン魂を味わえる。
決して派手な演奏では無いが、一切の手抜きは無い。
これぞ職人技ですね。

第ニ楽章では、「ヨッフム」の構築する「ブルックナー」像に小宇宙を見る。
決して威張っていたり、肩肘張ったりしている訳ではないが、演奏に尊厳・威厳が充満している。
「ブルックナー」を語らせたら、日本一…いや、世界一?の「宇野功芳」先生が3大「ブルックナー指揮者」を挙げているが、確か「※クナッパーツブッシュ」は別格として、この演奏を振っている「ヨッフム」、それから「シューリヒト」、そして、「朝比奈隆」だったと思う。
彼らに言えるのは、「ブルックナー」の音楽(曲)に対して、自発的な真っ向勝負はしない…自然体に任せて、スコアと「ブルックナー」に身も心も任せているんです。
宇野氏に因れば「ブルックナー」演奏とは絶対的にそういうものだそうです。
それでいて、この「ヨッフム」演奏の終盤の盛り上がりはすごいです。

第三楽章…この交響曲の中で、一番変化に富んだ楽章ですが、「ヨッフム」は自己主張しすぎず、しかし的確に緩パートと急パートの対比を描き、第二楽章同様に、あくまで自然体で「ブルックナー」像を構築します。
「ヨッフム」流のスパイスが効いているのは、ゲルマン魂のみでしょう。
無骨で、ストイックで、職人気質で、あくまで精神的なエッセンスだけを、香とスパイスとして用いているんですね。

第四楽章…自然体で貫いている「ヨッフム」では有るが、この終楽章は、迫力のコーダを擁する所から「ドレスデン・シュターツカペレ」の集中力と緊張感が半端でない。
つまりオーケストラの自発性が、抜群に発揮された楽章&演奏になっているんです。
マッシブなフル・オーケストラ時の迫力はバッチリだし、ピアニシモでの静寂の緊張感も秀逸です。
それでも「ヨッフム」はずっと自然体で…流れに身を任せています。
これは、大河、ライン川の流れそのものなんでしょうか?
厳しさ、激しさは有るんですが、あくまでも自然的な厳しさなんですよ。
絶対に自然に逆らってはいけませんね。例え音楽であっても。
「ブルックナー」&「ヨッフム」は、それを良く判らせてくれますよ。

黒いマルの真骨頂…オール・アローン~マル・ウォルドロン

2008-05-01 22:59:36 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
「マル・ウォルドロン」…(ブラック・ミュージシャン)黒人であると言う事を、最も感じさせてくれるピアニストがこの人である。
このアルバムは、その「マル」が、特に個性を発揮した最右翼のアルバムだと思う。

作曲は全編、「マル」の作品であり、演奏も(誰にも束縛されない)ソロ演奏である。

とにかく彼の黒々さが全編に渡り発揮され、アフリックと言うか、アフロと言うか、とにかくネイティブな黒さが堪能出来るんです。

今日は、「マル・ウォルドロン」の姿を楽しんで下さい。

アルバムタイトル…オール・アローン

パーソネル…マル・ウォルドロン(p)ソロ

曲目…1.オール・アローン(映画「マンハッタンの哀愁」より、2.デュー・トリ、3.ルーカの眺め、4.ブルー・サマー、5.イフ・ユー・シンク・アイム・リックト、6.スリー・フォー・シッシ、7.モスク・レイド、8.忘却のワルツ

1966年3月1日 ミラノにて録音

原盤…GTA LP-1004  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VDJ-1565

演奏について…1曲目「オール・アローン」…序奏から「マル」の男の哀愁たっぷりに黒く美しい世界へと誘う。
ややはずし気味のブロック・コードを用いた、マイナー・メロディを訥々と弾いて、「マル・ワールド」に身を委ねたくなってしまう。
しかし、良く聴いてみると…何かを思い出す。
そう、「マル」がグレート・シンガー「ビリー・ホリデー」に捧げた名曲、「レフト・アローン」に似ているのだ。
何故なら、実は姉妹曲なんですね。
この哀愁…一度聴いたら忘れませんぜ!

2曲目「デュー・トリ」…非常に個性的なブルース曲だが、ここでも「マル節」が随所に出てきて感激!
曲は段々速くなって行き、「マル」がそれに乗って弾き捲くる。
しかし、左手の低音部は、同様のリズムと和音を刻み、ブルージーで且つ、重厚感を表現していて、とても構築がしっかりした作品です。
一言で言うと、ゴツゴツした岩石の様な曲で、無骨な漢にはジャスト・フィットなんですね。

3曲目「ルーカの眺め」…タイトル曲に匹敵するロマンティックで、ナイーブなマイナー・チューンで、これも聴いたら涙チョチョ切れものですね。
「マル」が、暗い影を落としたマイナー曲を弾く時、世界が変わるんです。
例えが余りにも悪いが、吸血鬼「ドラキュラ」が出陣?する時の様な…空気の流れが急変して…漆黒の闇夜が現れる。
「マル」は決して悪人ではなく、血も吸わないが…暗黒砦の鬼門番?みたいです。
しかし、顔は強面だが、実は心優しい鬼門番なんですよ。
この曲を聴いて心を洗ってください。

4曲目「ブルー・サマー」…この曲もはて?どこかで聴いた様な気がする…。
「悠 雅彦」氏のライナー・ノーツに書いて有るのを読んで?!!…分かりました。
そうです、「マイルス」の「オール・ブルース」に似ているんです。
このシンプルなブルーズ曲が、「マル」の個性と感性にジャスト・フィットして、独自の世界観を表現しているんです。
この4曲目まで、個性(マル節)が全開ですけど、曲調が変化していて、飽きさせませんね。
流石、「マル・ウォルドロン」です。

5曲目「イフ・ユー・シンク~」この曲にも似たのがありますよ。
ずばり「ブルーベック」の「テイク・ファイヴ」です。
と言っても、似ているのはリズムだけなんですけど…こいつも5/4拍子なんで、リズムが必然的に似ちゃうんです。
しかし、いかにも白人然とした「ブルーベック」と「マル」では、リズム以外は全く似ませんよね。
感性しかり、演奏方式しかり。
そして、正しく演奏されている曲の色が白と黒で正反対ですね。
ジャズを介して、オセロ・ゲームの対決みたいですな!

6曲目「スリー・フォー・シッシ」…とても美しいワルツ曲で、ブロック・コードで仕上げていく曲に、彼「マル」がサイド・メンとして参加している「エリック・ドルフィー」の「ファイヴ・スポット」のライブ・アルバムの「ファイアー・ワルツ」が、思わず眼に浮かぶ。
1曲目、3曲目と並んで、このアルバムの御三家と言って良いでしょう。
美しいメロディに、影になっているが…このマイナー曲の物悲しさに心震わずには居られません。

7曲目「モスク・レイド」…モスクの名が付くことから連想出来る様に、アラビア風の曲…なんだけど、実際は「マル」の先祖がエチオピア出身なので、それをイメージして作ったらしい。
つまり「アラビック」では無く「アフリック」なんですね。
でも、そんな細かいことはどうでも良いです。
非常にスケールの大きな、大地をイメージさせる…やっぱりアフリカ大陸なんだろうねぇ?
個性溢れる1曲です。

8曲目「忘却のワルツ」…おいおい!このワルツ曲もすごーく良いじゃないか?
きれいで、美しい曲だけど…良く聴くとやっぱり、ドス黒い!
やはり「マル」だ!
「マル」の曲だ!「マル」以外の何者でも無い!
でも…でも…でも「マル」はやっぱり良いぜい!
最後の最後まで「マル」節で押し通すんだ!
誰が何と言おうと、究極のワン・パターンだ。

ぶっちゃけ…魅惑の「マル・ワールド」の旅は快適ですよ。
是非、行ってくださいね!!!

今日もすごいの行っちゃうよ!メンツを見て驚愕!ジョン・コルトレーン~コルトレーン・タイム

2008-04-28 21:15:23 | ジョン・コルトレーン
先日の「ジョン・コルトレーン」の「アセンション」紹介の時には、多くの方からコメントなどを頂戴し、ありがとうございます。
今日は、「アセンション」ほど巷で知られていませんが、参加ミュージシャンから、演られている演奏が、全く想像がつかない様な、とっておきの1枚…行っちゃいましょう!!

アルバムタイトル…コルトレーン・タイム

パーソネル…リーダー;ジョン・コルトレーン(ts)
      ケニー・ドーハム(tp)
      セシル・テイラー(p)
      チャック・イスラエルス(b)
      ルイス・ヘイズ(ds)

曲目…1.シフティング・ダウン、2.ジャスト・フレンズ、3.ライク・サムワン・イン・ラヴ、4.ダブル・クラッチング

1958年10月13日録音

原盤…LIBERTY  発売…東芝EMI
CD番号…CP32-5189

演奏について…冒頭で述べているが、このアルバムへの参加メンバー???…な、何てこったい!
「コルトレーン」を取り巻くメンバーが、「ケニー・ドーハム」と「セシル・テイラー」、リズムは「ルイス・ヘイズ」と「チャック・イスラエルス」。
一体どんな音楽(ジャズ)が奏でられているのか?
皆さん、興味が湧きませんか?
ハード・バップを代表する、ウォームで朴訥な音色で、いかにも正統的な生真面目「ドーハム」に、革新的なピアニストとしては、最も極の位置にいる異端児「テイラー」が交じり合うことが出来るの?
後年、「ビル・エヴァンス」とクールでインテリジェンスなピアノ・トリオを組むベーシスト「イスラエルス」。
逆に「ヘイズ」は、硬派のフュージョンまでに、先進的な音楽性へと変えていった無頼の漢である。

唯、唯一、ここでの演奏を紐解く鍵があるとすれば、ずばり録音年代(1958年)だと言うことだ!

この年には「コルトレーン・チェンジ」や「シーツ・オブ・サウンド」は未だ、完全な完成を見てはいないし、(でも、その断片演奏は、所々に有るんですが…)「テイラー」にしたって、相当革新的なピアノ演奏をしてはいるが、1960年代半ばの、ウルトラ・フリーな域までは達していない。
だから、「ドーハム」の演奏も(多少違和感が感じられるとは言え)全く時代遅れとまではなっていない。
勿論、「ヘイズ」「イスラエルス」の二人とも、堅実で非常にオーソドックスなバック演奏に徹している。
ですので、来るべき未来に、どこまでも飛ぶ「コルトレーン」と「テイラー」の前途洋々な演奏の走り…そう、あくまでも走りですけど、垣間見れるのが楽しいんです。

それではどうぞ!

一番面白い…趣き深いのは、3曲目、名曲「ライク・サムワン・イン・ラヴ」で、「コルトレーン」が主題メロディを奏でた後、「ドーハム」が非常にエモーショナルで、安定感のあるアドリブ・ソロをこなす。
逆に「テイラー」は、調整をかなり無視した?不協和音を多用した、ブロック・コードで、曲にアクセントを付ける。
「コルトレーン」のソロは、流麗で且つアグレッシヴな物で、シーツ・オブ・サウンドの礎的な、畝って長めのアドリブ・フレーズを多く用いて、エキサイティングに演奏する。
その後の「テイラー」のアドリブがすごい!
まるで、ぶっ飛んだ「モンク」の様です。
切れる!すっ飛ぶ!駆け上がる!
一寸、いや、もはや言葉に出来ません。
「テイラー」と、デュオ的に「イスラエルス」がベース・アドリブを演ってくれますが、この二人の掛け合い、バトルもものすごく良いんです。
ハチャメチャなのか?前衛芸術なのか?ギリギリの線で交わる所が最高です。

1曲目「シフティング・ダウン」…いきなり「セシル・テイラー」の不協和音のブロック・コードから、ブルーズ・リズムで始まるチューン。
ノッケから、彼らの決意表明がなされた瞬間である。
最初のソロは「コルトレーン」…およそ1年後の「ジャイアント・ステップス」録音の超人的な飛躍を予感させる、ハードで乾いた音色で、辛口のブルーズ・アドリブをバリバリと吹いて、正に「コルトレーン・タイム」の到来を告げるかの様です。
「テイラー」…うぅーん、相変わらず良い仕事していますね。
この変則的な和音…こいつは「テイラー」にしか出来ない代物です。
「モンク」以上です。
調整(コード)は、完全に無視?していても、クラシックの現代音楽の様に、音楽性が有ります。
そして、この演奏を万人向けに纏め上げるのが、ズバリ「ドーハム」です。
いかにもハード・バピッシュな、大人のブルーズを演ってくれます。
「ドーハム」すごいです。
革新者二人を差し置いて、オールド・ファッションながら、男の生き様…見せてくれます。
うぅーん…感激です!!

4曲目「ダブル・クラッチング」…序奏は「ドーハム」がかなり乗ってる感じでオ-ソドックスにアドリブを仕上げる。
受けた「コルトレーン」も、序盤はゆったり目に、かなりおおらかな感じでアドリブを演るんですが、その後、お得意の「シーツ・オブ・サウンド」もどき?の、連続したうねりのフレーズで、曲をエキサイティングに仕上げて行きます。
合間でおかずをたっぷり入れる「イスラエルス」のベースもすごく良い仕事してます。
「テイラー」は、ここでは間を上手に使って、音と音の空間を大事にする部分と、早弾きのパート(小節)との対比を見事に演出します。
それから「イスラエルス」の、重厚で強面硬派の、野太いソロが入るのですが、胸にジーンと来ます。
終盤はカルテット5人渾然一体となる、ソロがミキシングされて、絡み合って、取分け「ヘイズ」のソロ・パートは聴き応え有ります。
各人のアドリブ・ソロを中心に聴くなら、ズバリ…この演奏が一番でしょうか?

2曲目「ジャスト・フレンズ」…ハイテンポのリズムから、「テイラー」が過激に突き進む。
一方、「ヘイズ」と「イスラエルス」は、淡々とリズムを刻み、でも音色は硬派ですよ!
「ドーハム」はいつもより元気目で、目一杯ブロウしてくれます。
それでも、相変わらず優しい音色です。
「コルトレーン」は、「ドーハム」の後を受けるので、(「ドーハム」に遠慮してか?)余り過激にならず、インテリックなアドリブで応戦します。
パッセージを発しますが、やや抑制した表現で、ここにダンディズムを極めれり!

とにかく、全4曲ともgoodですよ!
「テイラー」嫌いの方にも聴いてほっすぃい!!
決して名盤ではないけれど、「コルトレーン」と「テイラー」の一期一会の奇跡の名演がここに有りますよ。
正に必聴盤です!!!