久しぶりに公開された宮崎駿監督作品<風立ちぬ>を観てきました。
実のところ、ジブリアニメを劇場で鑑賞するのは<千と千尋の神隠し>からお休みが続いてました。というのは、最近の宮崎アニメは "個人的見解として" 迷走していて、きちんとendクレジットが打たれてない作品が続いていたというのが理由の一つです。
ですが、今回のテーマは宮崎駿として外せない<空>。このテーマを扱った作品には<天空の城ラピュタ>、.<紅の豚>という快作が並んでいるので期待して観に行きました。
で、感想は<きちんと終わってて良かった>です。
もう、冗談抜きでこれが本音です。それほど最近の宮崎アニメは終わり方がひどかったということです。ですが今回はきちんとendクレジットか打たれています。
取り上げた時代は第二次世界大戦の最中。主人公は零戦の設計者。ならばガチで<宮崎駿の戦争論が来るか?>、という見方もありましたが、実際には正面切って戦争をとりあげたシーンは皆無。強いて言えば墜落した試作機、撃墜された機体の残骸の前に主人公がたたずむ程度。<風の谷のナウシカ>の様な観客の両肩をがっちり掴んで論戦を挑む姿勢はどこにもありません。
物語は主人公が思い描く理想と現実が交互に入れ替わりながら進行していきます。夢と現実の境界は注意してみていれば分かるように描かれているので混乱することはないと思います。時代、飛行機に関する知識が必要な伏線も無く、引っかけ展開もありません。
登場人物はヒロインの奈緒子を始め、上司・黒川、同期・本庄、皆、理想に対してストレートな生き方をしている人ばかり。屈折した境遇で悩む人は居ません。
終盤の<綺麗なところだけ観て貰ったのね>、の台詞で気づいたのですが、ここまで構成が整理してあると、この作品は宮崎駿さん自身の回顧録として制作したのではないか?、とも思えてきます(実際、公開後に<本当に今回で引退します>とのメッセージが出てます)。
だとすれば、宮崎さんは主人公に自分の姿を投射している、と観ることも出来ます。その視点でもう一度作品を見直すと、同期の本庄には鈴木プロデューサーを重ねている様にも思えます。そして試作機、戦闘機の残骸をみつめる主人公は自分の過去の作品を俯瞰する宮崎駿。ここまで綺麗に計算されていると、これは天才にのみ許された自惚れって奴?、とでもいいたくなります。
最後に統括・宮崎さんの回顧録として観ると凄い作品です。<紅の豚>に驚喜した航空マニアとしては全くもって物足りない作品ですか。