尖閣諸島の国有化に端を発した日中関係の悪化は、国慶節休暇を挟んだことで一応の落ち着きを見せているようだ。
もっとも、ここ上海では日本人駐在員数名が若い中国人グループに絡まれ、暴行を受けて負傷したとのニュースが流れるなど、未だ元の状況に戻ったとは言いがたい状況にある。
安全面に関して言えば、とにかく「日本人」という格好をあまりオープンにしないことが最善の策。
上海に居ると、日本人も多いし、日本人向けのお店も多いので、どうしても海外で生活しているという実感を忘れがち。
今回の暴行事件についても、キッカケがどこにあるのか、その辺りの見極めは必要なのかも知れない。
さて、本題に戻って、今回は経済的な影響の現状について。
2012年秋の反日デモの嵐は、9月18日にピークを迎えたわけだが、その余波は経済面に重くのしかかったままだ。
日本経済の主力である自動車販売では、9月単体では半減というメーカーも多く、今後数ヶ月の見通しもネガティブなものが相次いでいる。
反日デモの映像の中で、日本車が襲撃された映像は、多くの中国消費者の目に焼きついていることだろう。
トヨタは、被害にあった車を無償で修理すると発表しているが、消費者にとっては原状回復は最低限の問題で、襲われるかも知れないという恐怖感の払拭のほうが大事と考えるのは、当然のことと言える。
中国では、日本車に乗るドライバー向けに「愛国」を謳ったステッカーが多数販売されているが、この程度で安心して運転できるのか・・・、いささか疑問ではあるし、そこまでして日本車を新車で購入しようという向きは少なかろう。
もっとも、今回のキッカケは政府の方針発表にあるワケだから、自動車メーカーには何の責任もない。せっかく好調を維持してきた中国での販売に水を差され、対応策も自分達で考えなければならないという関係者の心情は、本当に察しても余りあるものだ。
機械関係に目を転じると、日本では表立った報道はなされていないが、政府関係の入札などでは日本企業が軒並み落選しているとの情報もある。
中国は、中央政府の方針が地方政府に伝達され、民間部門でも国有企業に広く浸透するという体制を整えた国。
日中関係が悪化した状態下では、日本企業の製品・技術を導入するのは簡単ではないことは容易に想像できる。
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消費市場の面では、販売現場である百貨店などでの日本製品締め出しの動きが顕著になっているようだ。具体的には、日本製品を常設していた棚が撤去される、定番の商品以外は販売しないといったもの。
こうした傾向、地方に行くほど露骨になっているようだ。
日本製品はもともと高価格で嗜好品が多いので、生活に必要不可欠というワケではない。販売する側にとっても、主要な収入源ではなく、アクセントのひとつといった位置づけなので、このような取扱いになるのだろう。
こうした販売面での不利は、出口である販売現場に止まらない。
入口となる通関の現場でも、商品によっては全量検査が実施されるなど、コスト、労力の両面で日本企業は大きな負担を強いられている。
もっとも、どれだけの消費者が「不買運動」のような感覚を持っているのかは、怪しいところ。
「日本製品は高コストだが、高品質」という観念は定着しており、これを理解していない消費者は日本製品に手を出していない。こうした比較的意識の高い中間層の消費者が一時的に「日本製品離れ」に陥ったとしても、結局のところ現地企業で同じ価値を生み出す企業が生まれてこない限り、元に戻っていくと考えるのが自然な流れというもの。
勿論、胡坐をかいていてはいけませんけどね。。。
ここ一年で急増一途だった飲食業界も戦略の見直しを迫られている。
「食」が重要な文化であり、可処分所得の拡大が見込まれる中国は、少子高齢化に苦しむ日本の外食産業にとって、格好の市場であることは間違いないが、今回の事態で真っ先に影響を受けたのは、こうした飲食業界。
料理と国は、イメージが共有され易いですからね。
もっとも、日本料理ではない「サイゼリア」などは、他の飲食店ほど影響は受けていないようだ。7年前に起きた反日デモの際などは、デモに参加した中国人グループが、日系とは知らずに同店で食事をしたというエピソードもあり、何が何でも「日本」というイメージを打ち出したほうがいいかどうかは、検討の余地がありそうだ。
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もうひとつ、非常に大きな影響を受けた業界は、間違いなく旅行業界。
多数の訪日観光客が期待できる国慶節の需要を棒に振ったばかりか、この10月以降は個人旅行以外、全く予測すら立たないような状況が続いている。
航空路線においても、座席のキャンセルは万単位に及んでおり、国慶節明けに関しては、中国系の航空会社で減便の発表が相次ぐなど、今後の見通しは厳しさを増す一方だ(ここでも政府の圧力が感じられなくもないが・・・)。
こうした中、格安航空会社である春秋航空は「1円座席」なるものを発表した。
同座席、毎便50席を用意するとのことで、佐賀、徳島の両空港で提供が始まるようだ。
定期的に航空便を利用する消費者にとっては有難い限りだが、こうした財源をどこが負担しているのか、考える必要もあるだろう。
春秋航空は超節約経営で名を馳せている企業だけに、こうした負担を自社のみで行っているとは考えにくい。そのため、海外路線の維持を図りたい地元自治体による何らかの支援といったものが考えられるだろう。
勿論、背に腹は変えられないのだが、ここでも日本が身を切らなければならないというのは、どうも納得が行かないような。。。
昔から「政治と経済は一体不可分」と言われるが、今回の事案ではそれを身にしみて感じざるを得ない。特に、この政治大国/中国を相手にしては・・・。
日中両国を比較すると、政治システムの違いもあって、政治家の資質自体に大きな開きがあるように感じてならない。
このような体制改革をどのように進めていくのか、日本社会全体で真剣に考えるべき時期を迎えていると考えるのは、筆者だけではないだろう。
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