『最近のデジカメってすごいよね・・』
デジカメを新調した僕は彼女に向けてパシャパシャとシャッターを切る
『画素数とか?粗が見えるからあんまり写さないで』
彼女は不機嫌な顔をした
本当はまんざらでもないくせに(^^;
僕が言うところのスゴイは画素数じゃなくて 『顔検出機能』
カメラを被写体に向けるだけでカメラが自動的に人間の『顔』を検知して
その部分にピントを合わせるといった とても便利な機能
カメラを向けてシャッターを半押しにすると、液晶の中に四角い囲みが現れて、彼女の顔に重なる
彼女が動いてもカーソールが自動で追いかけて その部分にピントを合わせてくれる ホント、最近のカメラってスゴイ・・
『でも、この機能、魚にはだめなんだよねぇ・・人の顔限定みたいだよ』
『あ、そうなんだ、、じゃ、あんまり需要ないかもね(笑』
ま、そういっちゃおしまいでしょ(^^;
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今日は仕事で遅くなった
時間は既に午前様
街、街の間にある峠は現在道路拡張中
所々で片側交合通行してる
今夜も谷間を流れる川をまたぐ橋の上で仮設信号に止められた
最近の仮設信号は停車時間を知らせるために、砂時計のような電光掲示板が付いてる
光の筋がだんだん減っていって無くなったら青信号
きっと僕みたいなせっかちなドライバーが信号無視しないように
残り時間を知らせて宥めてるんだな・・
ちょうど信号が変わったばかりだったのか
光の砂時計は満杯
しばらく待たなきゃだめみたいだ
今日は半月を過ぎたあたり
月明かりに照らされたトド松の影がとても綺麗だったので
カメラを取り出して月に向けた
シャッターを半押しにすると、カーソールが右の隅に小さく現れた
『あら?そこには何にも無いでしょ、月にピント合わせてよ』
何度かシャッターを押してみたけどそれっきり顔検知機能の表示は出なかった
機械もたまには間違うんだな(笑
いつの間にか光の砂時計も残りふた目盛
慌てて運転席に戻り、僕は再び岐路に付いた
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家についた僕はいつものごとくパソコンを立ち上げて
デジカメをクレードルに差し込む
パソコンがカメラを認識して今日撮った画像を取り込み始めた
彼女は寝ないで待っていてくれた
僕は今日一日の他愛の無い話をしながら、ディスプレーに映し出された画像を見ていた
『あ、そういえば、今夜さ、月を写そうとしたら全然関係ないところにピント合っちゃってさ、機械もやっぱ、完璧じゃないんだよね(笑』
『あ、これ、この写真、、やっぱり月にピント合ってな・・』
そう言い掛けて僕は絶句した・・
え??・・何コレ・・
画像の右隅
真っ暗な空中に見知らぬ女の顔だけが写ってる・・
ありえない場所に
コチラに向かって、カッっと目を見開いて口元だけうっすらと笑って・・
両腕の毛穴がざわざわと縮み上がった
背中に冷たいものが走った
あのとき顔検出機能が働いた場所だ、、、、
『どうしたの?』彼女がそう言って近寄ってきた
『ううん、なんでもないよ、、』
僕は思わず画像を閉じた・・・
妄想毛鉤劇場 ・・・顔検出機能・・・ オワリ
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