「弥勒世(みるくゆー)」馳 星周
たまたま見ていたドキュメンタリーで
72年の沖縄返還にあたり
米軍と日本政府の間に交わされた密約。
米軍に表向きだけの撤退を認めさせる代わりに
莫大なお金を払うという約束。
それをリークした新聞記者がひどい裏切りを受け
政治という権力に抹消され、
それについての裁判すら行ってもらえないという内容だった。
知る権利は、「知らされない情報」に隠され
表に出ている情報なんて正しいのかも本当はわからない。
怖いなと思って見ていた。
その後にたまたま本好きの先輩に
「これ馳ぽくなくてかなりボリューミ~だけどお薦め」と勧められた
冒頭の本。
図書館でいざ借りようと思ったが、
久々ハードカバー上下巻。
しかも馳ワールド炸裂しちゃってたらなあと
一瞬手がひるむ。
だって不夜城がよぎる。
あんなやぶれかぶれ刑事とかヤクザとか
the男な世界。
そうだ前にそういえばいたな。
馳ワールド好きな男。
何がいいのか全然わからんと言うと
女にはわからんと言われた。全くわからん。
しかし今回の本は知っている馳ワールドとは違い
入り込んで一気に上下巻読みきった。
まさに密約がからむ72年返還前の沖縄を舞台にした物語。
沖縄が辿ってきた過酷で辛い歴史を初めて知った。
太陽と海とゴーヤと泡盛の楽園。
その影には今も継続する基地問題。
無関係とは思えない環境もあるかもしれない。
情報の波に溺れ、のまれ、流される。
あたかも知ってるかのような錯覚。
自分で手にした事でもなく経験した事でもなく。
与えられる情報だけを一方的に鵜呑みにして
考える事をやめてしまう恐怖。
関係ないが”プロフェショナル”で
脳がアイディアを生み出すとかプレッシャーを越えるとかは
ある程度情報を遮断した状況の中で
自分自身と徹底的に向き合う事によって出てくる
というのを言っていた。
それが出来るか出来ないかがプロとアマの違いだな。
自分自身と向き合うなんて一番やりたくないもの(笑)