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心理学オヤジの、アサでもヒルでもヨルダン日誌 (ヒマラヤ日誌、改め)

開発途上国で生きる人々や被災した人々に真に役立つ支援と愉快なエコライフに渾身投入と息抜きとを繰り返す独立開業心理士のメモ

未開社会の思惟

2006-01-18 08:39:33 | 
レヴィ・ブリュル著 山田吉彦訳 1953、「未開社会の思惟」岩波文庫 (再版あり)

原始心性 primitive mentality 研究で引用の多い、研究です。
「融即の法則」と名づけられた「あらゆる事物、生物が、関連があると考える」思考パターンを指摘しました。

一方、「原始心性に不合理な点があるのは、その歴史的、社会的な条件から客観的対象を把握できていないだけ(上野佳也1985」という批判があります。

手元にある家族心理療法文献(英文・西語)

2006-01-17 03:35:26 | 
同じく、英文と西語の文献を紹介します。

1. Sheila McNamee, Kenneth J. Gergen, ed., 1992, Therapy as Social Construction, Sage

「ナラティブ・セラピー-社会構成主義の実践」金剛出版1997年、として翻訳されている原典。治療も治療者自体も、客観的に存在しうるのではなく、交流を通して作られる社会的な構成物(意味、解釈、理解、物語)・・・という論者たちの論文集。

2. Steven J. Wolin, Sybil Wolin, 1993, The Resilient Self – how survivors of troubled families rise above adversity, Villard, NY

日本語訳書6の原典。

3. Insoo Kim Berg, 1994, Family based Services – a solution focused approach, Norton,

問題解決型の家族アプローチです。

4. Joellen Patterson, Lee Williams, Claudia Grauf-Grounds, Larry Chamow, 1998, Essential Skills in Family Therapy - from the first interview to termination, Guilford

技法が、発言例とともに具体的に記述されています。

5. Monica McGoldrick, Randy Gerson, Sylvia Shellenberger, 1999, Genograms - Assessment and Intervention - 2nd edition, Norton

ジェノグラム(家系図、家族図)を、有名家族も例にして、詳説しています。
著者のはじめの2人による1985年の名著 Genograms in Family Assessment は、絶版です。

6. Michael P. Nichols, Richard C. Schwartz, 2004, Family Therapy - concepts and methods - sixth edition, Pearson Education, Inc.

教科書です。

7. David Werner, 2003, Disabled Village Children – 2nd edition, Hesperian Foundation, CA

この本は、家族心理療法文献ではなく、障害児を途上国という環境の中で、地元にある素材を使って支えていくための、具体的な対策集です。開発途上国で障害を持つ子どもへのケアをするときのバイブルです。
配属先の家族療法は、障害児を持つ家族からの相談が、40%を占めているため、ぼくは地域ケアの視点と方法論の提示を目的に議論したかったのですが、中進国ドミニカ共和国では、たとえば米国製の専門補助具などを使った近代的な支援に関心が行ってしまうという、空振り・・・でした。

8. Salvador Minuchin / H. Charles Fishman, 1983, Tecnicas de terapia familiar, Paidos Terapia Familia España.
9. Jose Navarro Góngora, Mark Beyebach, 1995, Avances en Terapia Familiar Sistemica,Paidos Terapia Familia España.
10. Salvador Minuchin, Wai-Yung Lee, George M. Simon, 1998,El Arte de La Terapia Familiar, Paidos Terapia Familiar. España.

この3つの西語文献は、カウンターパートの希望で購入しました。技法への関心が強いことが読み取れると思います。
スペインの出版社paidos は、家族心理療法シリーズを刊行し、西語圏で広く販売されています。
ラテン社会が、母や家族を重視する社会であることが、背景にあるのでしょう。

ポストモダンは、治療者役割が明確で固定的な、このドミニカ共和国社会ではまだ時期尚早のようでした。

手元にある家族心理療法文献(日本語)

2006-01-17 03:20:03 | 
今回のドミニカ共和国での家族心理療法の技術支援は、残り2ヶ月あまりとなり、終了に向かっています。そこで、家族心理療法と、その周辺の基礎知識などの、概念の明確化や整理のために、今回手元に置いていた日本語文献を、原著の出版年の順に紹介してみます。

1.アウネータ・ディゼリクセン ヨアキム・イスラエル 編 岡崎晋 訳、1983、「性の科学-セクソロジー」、彩流社

原著は1973年コペンハーゲンの出版。
「性行為は、あらゆる他の人間の行為のように、人が成長・生活する精神的、社会的条件によって決定されている。性的諸現象や性的諸問題の議論が、人間の現実や社会の現実から分離されるならば、その諸現象の本質は曖昧にされ、その問題の解決は妨げられる」と、訳者は内容を紹介しています。
性行為ばかりではなく、その行為が現れる発生学・解剖学・生理学基礎や、性的発達の精神的・社会的環境などの諸条件についても述べ、性交の生理学や、同性愛・不干渉・インポテンツ・売春・ポルノなどの今日の諸課題、産児制限・性行為感染症・性犯罪・性教育などの対応策などを、述べています。

2.スーザン・ヘンドリック クライド・ヘンドリック 著 斉藤勇 監訳 上村仁司 訳、1998、「恋愛・性・結婚の人間関係学-親密関係の社会臨床心理学ハンドブック」川島書店

原著の初版は1983年、その新版1992年の翻訳である。社会心理学者と、カウンセリングを専門とする2人の研究者により、親密な関係・魅力・親和と友情・愛・性愛・求婚関係・結婚関係・離婚と再婚などの現実的な問題を、先行研究を紹介し、実証的、また臨床的にアプローチしています。

3.フィリップ・バーガー 著 中村伸一 信国恵子 監訳、1993、「家族療法の基礎」、金剛出版

原著の第1版は1981年イギリスで出版され、これは第2版1986年の翻訳です。著者は、精神科及び小児科教授です。
教科書的に、家族とは・家族療法とは・アセスメント・治療の原則・方法・適応と禁忌・教育と研究・参考文献などを紹介し、基本的治療モデルや隠喩の有効な用い方などの実践的な内容についても触れています。

4.マイケル・E・カー マレー・ボーエン 著 藤縄昭 福山和女 監訳、2001、「家族評価-ボーエンによる家族探究の旅」、金剛出版

原著は、1988年の出版で、家族システム理論の創始者ボーエンの理論を、弟子のカーが解説しています。日本側の訳者は、ソーシャルワーカーです。

「治療技術ではなく、家族理論の基礎学」を述べ「通読には忍耐と努力が必要」と、監訳者の藤縄昭は紹介しています。確かに困難ではあれ、「家族とは何なのかを考えることなしに、治療的支援はない」はずです。
それで、ボーエンの「援助過程では、専門家の視点でナゼを追及せず、いつ・どこで・なにを・どのようにという、強迫的ともいえるデータの収集が展開される」(P.398)といいます。
自然システム論・情動システム・個体性と一体性・自己分化・慢性不安・三角形・核家族の情動システム・複世代の情動過程・症状形成・家族評価の各章があります。

5.トム・アンデルセン著 鈴木浩二 監訳、2001、「リフレクティング・プロセス-会話における会話と会話」金剛出版

原著は1991年出版ですが、1987年には論文の形で理論は紹介され、注目されていました。翻訳では、著者の意向で、新たな技法の発展に鑑み、削除と挿入が行われました。

リフレクティング・チーム・アプローチは、「鏡の裏側にいるチーム・メンバーが面接の途中、熟考した面接場面に対する考えを、面接者と家族がいるところで披露し、面接者と家族の思考の転換を促し、新たな物語を構成し、自らの解決方法を協働して編み出す」方法です。
ベイトソンらの認識論から影響を受け、ナラティブ・セラピーや、アンダーソンらのコラボレィティブ・アプローチへ影響を与えた、ポスト・モダンと称される、社会構成主義的治療理論です。

ここまでの人手をひとつの治療場面にかけることを、ぼくの経験した現場で実現することは、経済原則上、とても困難としか思えないという読後感が第1。
そして、こうした交錯した助言が飛び交う治療場面に耐えられるには、治療者のパターナリズムと、それから自由な自我を持つクライエントの、双方が必要と感じました。
自我が、相互に従属的ではない、対等に存在しうる社会の成熟が、背景に必要と思いました。ポストモダンとは、そうした社会の先取り理論なのでしょう・・・

6.スティーブン・J・ウォーリン シビル・ウォーリン 著 奥野光 小森康永 訳、2002、「サバイバーと心の回復力-逆境を乗り越えるための7つのリジリアンス」、金剛出版

原著は、精神医学の臨床教授で家族療法研究者と、児童発達や学校不適応を専門とする心理家との夫婦による、1993年の出版です。
リジリアンス resilience は、「回復する力、苦難を超えて自分自身を修復する力(原著者)」をさし、「脆弱性の正反対に位置」し、「洞察・独立性・関係性・イニシアティブ・創造性・ユーモア・モラルの側面がある」とする、病理よりも現在に焦点を当てる、回復重視の立場の概念と言えます。

7.サルバドール・ミニューチン WY・リー GM・サイモン 著 亀口憲治 訳、2000、「ミニューチンの家族療法セミナー-心理療法家の成長とそのスーパービジョン」、金剛出版

原著は1996年。訳者は、ミニューチンの翻訳書としては4冊目に当たり、ミニューチン家族療法道の集大成と言う。

第1部は、3人の著者による、家族療法理論と、治療介入的モデルの説明。
第2部は、8人の訓練生が、スーパービジョンの経験と、それが臨床実践に与えた効果について記しています。

8.ハーレーン・アンダーソン著 野村直樹 青木義子 吉川悟 訳、2001、「会話・言語・そして可能性-コラビレィティブとは?セラピーとは?」金剛出版

原著は1997年の出版で、翻訳は原著の半分強といいます。
「実証主義、科学主義に代表されるモダンの思考から、解釈学、社会構成主義に代表されるポストモダンの思考への移行を訴えている。臨床心理学と文化人類学、セラピーと民族誌を書くのでは、受けとめ方は(が)根本的であったことは共通している。(訳者あとがき)」。

新しい意味を感じ取れるよう、クライエントの語りを促進し、臨床家自身も、その関係の中に生きようとする・・・こうした裏表のない、臨床のスタンスは好きです。
ただ、心理臨床が実証科学であろうとすることとの相克が続いていくのでしょうね・・・
心理臨床初学者の方々は、くれぐれも、先行諸学説の学習の上の態度であるということをお忘れなく・・・

9.日本家族研究・家族療法学会 編集、2003、「臨床家のための家族療法リソースブック-総説と文献105」、金剛出版

学会編集の、総説と文献紹介。

参加型開発の再検討

2006-01-17 02:38:24 | 
佐藤寛 編2003、「参加型開発の再検討」、アジア経済研究所

Participatry はもはや、国際協力のタイトルから切り離せない形容詞になった感があります。
受益者の声をプロジェクトに反映させるという意味では、大賛成です。

ただ、その幅が広すぎる・・・
ドナーはプロジェクトに予算をつける、予算は活動を想定して計上される・・・活動の確定なしに予算は獲得できないという矛盾。
住民の声は、はじめから、ある幅の中で集められる・・・

しかし、そこには方法があり、哲学があります。
じっくり学んでいきましょう・・・


ポストコロニアリズム

2006-01-15 23:51:14 | 
本橋鉄也、2005「ポストコロニアリズム」岩波新書

「植民地主義のすさまじい暴力にさらされてきた人々の視点から西欧近代の歴史をとらえかえし、現代に及ぶその影響を批判的に考察する思想」表紙裏の紹介より。

70年代を思い起こさせる懐かしいアルジェリアの精神科医師ファノン、そして現代のサイード、スピヴァクの思想を紹介しながら、日本の持つ課題も考察している。

国際協力従事者には知らなかったでは済まされない、足元の歴史への考察・・・
こうした背景の理解が、現地で個人を理解する(心理学の)視点にも、貴重だと感じています。怠慢・意欲低下・衝動性などなどへの波及を、ぼくは感じています。

分担著書 初校

2006-01-14 21:18:14 | 
2006年3月「スタートライン臨床福祉学」が、弘文堂から出版予定です。
その9章「多文化の中の臨床福祉」を執筆しました。

ぼくは、国際協力は広い意味では、地球的な視野でその弱者のニーズを発掘してこたえようとする、社会事業=ソーシャルワーク=福祉学と考えているので、旧知の前国立精神保健研究所スタッフの編集者から機会をいただいて、感謝しています。
また、日本の社会福祉の学生に、多文化の視点を持ってもらう機会になれば、幸いと思っています。

脚注にしたものを本文の中に入れる、重なる出典をまとめて示す、複数の読みが可能な漢字をひらがなで示す、などの校正をしています。
それにしても、数字の多い原稿を書いてしまったなあ・・・

ブログを訪問していただける方にも、読んでいただけるとうれしいです・・・

大航海時代における異文化理解と他者認識(1)

2006-01-04 01:00:57 | 
染田秀藤1995「大航海時代における異文化理解と他者認識-スペイン語文書を読む」渓水社

 大航海時代は、15世紀末から18世紀末にかけてである。
その幕開けからほぼ1世紀の間にあった、インディオの本質か何かという「インディアス論争」。
インディオの文化について最初にヨーロッパ人が記載した宣教師ラモン・パネーらの文書。
また被征服者であるインディオ自身が書き綴った記録はないために、インカ帝国の出来事を記したキープ(結縄文字)の保管と解読とを担当した役職キプマカヨの口述のスペイン人による記録から成る。

 第1部、インディアス論争。

 1493年5月3日付けのローマ教皇がスペインに領有権を認めた贈与大教書における「物分りのよい」インディオという記載が最初と言われている。この時点ではコロンブスの第1回航海記を踏襲したはずである。

 1512年に、最初の殖民法として制定されたブルゴス法では、「生まれついて怠惰」なインディオを使役すること、スペイン人に対して従属するものとして規定した。エンコミエンダ制の導入により、労働力を必要とした「発見者側」の思惑によって作られた、インディオ像という指摘がある。スペインによる征服は、国家の規制によるのではなく、指揮官個人の主導によって、私的な事業として征服の内実が作られていった。1530年に宣教師たちからの請願を受けて「奴隷化禁止令」を出しながら、34年には植民者の請願から、それを撤回していることにも伺える。

 インディオは「行政組織・主君・法律・専門的な職人・交換経済・1種の宗教を持つなど、彼らなりに理性を行使している」が「スペイン人と同等に行使できる状態にない」と述べたのは、サマランカ大学教授ビトリアであり、ピサロが策略の末、インカ王アタワルパを捕らえ、約束どおりの身代金を支払ったにもかかわらず絞首刑にした事実が知らされた後である。

 インディオ擁護の運動で名高いラス・カサスは、さまざまな文書を残しているが、1552年の「インディアスの破壊についての簡潔な報告」で、「創造主から、素朴で悪意を抱かず、陰日向がなく、恭順かつ忠実で、謙虚で辛抱強く、温厚かつ口数が少なく、粗衣粗食に甘んじ、野心や欲望を抱かない性質を授けられた従順な羊の群れ」に、「スペイン人は、残虐きわまりない手口で、切り刻み、殺害し、苦しめ、拷問し、破滅へ追いやっている」と書いた。

 このラス・カサスと「バリャドリード論戦」を繰り広げたのが、神学博士号を持ち、教皇庁公式翻訳官として当時名高かったセプールペダで、アステカの都について「虫けらでも、見事な作品を作り上げる」と言ってのけ、自然法は、理性に欠ける自然奴隷とみなしたインディオには適用されないとし、征服を正当化した。

 著者は、「スペイン人が、インディオは決して彼らと同じ文化水準には達しない存在なのである。このような他者認識が殖民支配を支えるイデオロギーであり、それがスペインだけでなく、後発の殖民国家にも共通したものとなった」と結論付けている。

「武装解除」

2006-01-02 02:18:46 | 
伊勢崎賢治2004「武装解除;紛争屋が見た世界」講談社新書

半生・東チモール国連PKO・シエラレオネDDR・アフガニスタンDDR・DDRフローチャート・日本国憲法への想い、などが内容。

ボンベイ大学大学院ソーシャルワーク専攻時代のスラムのコミュニティーオーガナイザーとしての活動での国外退去命令や、国際NGO「プラン・インターナショナル」でシエラレオネ・ケニア・エチオピアなどのアフリカに駐在10年余の経験があり、著書にはほかに「インド・スラム・レポート」明石書店、「東チモール県知事日記」藤原書店などがある。

著者を直接には知りません。
ただ、こういう国際舞台で、時にはケンカをしてでも組織に寄りかからず、ある意味で、普通に仕事している日本人がいるということにうれしくなりました。
国際協力活動を、ボランティアという表現ではなく、プロフェッショナルという表現で書いていることが印象的で、ぼくの想いとも重なります。

ぼくの国際協力経験は、保健分野だけなので、その他の分野の活動をのぞけて、とても新鮮で、目が見開かれたような思いがしています。
開発途上国の政治や社会整備は、政治家だけのものではなく、民間レベルの活動が果たす役割も必須なことが見えてきます。

内戦が続く地球には、武装解除Disarmament、動員解除Demobilization、社会再統合Reintegrationという、DDRの仕事はまだまだ意味があるでしょう。

ドミニカ移民の闘い(2)

2005-12-02 03:24:57 | 
今野敏彦 高橋幸春、1993、ドミニカ移民は棄民だったー戦後日系移民の軌跡、明石書店

1991年「ドミニカ移民現地調査団」8名の記録。

移民を国策とした日本側の事情;復員軍人761万人、海外からの引揚者155万人、軍徴用者を含め413万人の解雇者など、1300万人の失業者を、敗戦後の壊滅的なダメージのある日本経済は、受け入れる見通しはなかった。

ドミニカ共和国側の事情;1954年独裁する大統領がスペインと移民の導入を決定。同年、東京駐在の大使が外務省に日本人移民を提案。コロニア法を制定し、移民によって、流入の絶えないハイチ国境の未開拓地域を開発させ、国境地帯のドミニカ化を図ろうとした。
スペインやハンガリー移民、開放処遇の囚人などを含む、7000人を、22のコロニアに配置し、そこに日本からの人々も含まれていた。

ドミニカ共和国政府が、灌漑の困難さなどから、移民の延期を申し出ても、日本政府は、抗弁しても、継続した。現地調査も全く手抜きで、マスコミを使った、「夢の国」キャンペーンを続けた。

南西部国境地帯のアグアネグラ・アルタグラシア・ドベルヘ・ネイバと、北西部国境地帯のダハボン・アンサニージョ、そして中央山岳地帯盆地のコンスタンサ・ハラバコアの8入植地をめぐる面談と、考察の記録がある。

1道7県からの移民は、1960年の日本政府との「救出嘆願」交渉の末、1961年と62年に、133家族が日本に帰国し、70家族が南米などへ転住した。

この国では今も、統一的な日本人会はなく、土地の所有に限定して主張する生活向上派と、日本政府と訴訟を進める「基本問題」派に、日系人社会は分かれている。

ハワイ・アメリカ・カナダ・オーストラリア・メキシコ・ペルー・フィリピン・ブラジル・旧満州・パラグアイなどと続く、徳川幕府の鎖国解除以来の移民の歴史は、明治30年以降と、第2次世界大戦後に、盛んな時期を迎えた。

当ブロガーも、派遣されているJICAの前身が行った移民事業である。
国策としての海外事業の、独りよがりでムダの多い、危うさは、ボランティア事業や国際協力事業、海外投資事業にも、付いて回っているように感じるのは、ぼく一人だけではないだろう・・・

ドミニカ移民の闘い(1)

2005-12-01 09:10:58 | 
高橋幸春、1987、カリブ海の「楽園」-ドミニカ移民30年の軌跡、潮出版社

ブラジル移住経験のある、フリーライターが著者。

249家族1319人が、1956年から59年にかけて、ドミニカ共和国の8地区に入植した。
「1家族に300タレア(約18ヘクタール)の土地が譲渡とされる」「家が用意されている」「自給するまで、1日60セント(公務員初任給が9200円に対して、この金額は6480円にも当たる)の生活給付金が出る」などという、ほかに例を見ない、好条件の募集であったらしい。

しかし現実は、塩害があったり、岩だらけの土地であったり、耕作不可能な土地も含まれていたし、なにより、土地の譲渡の約束は不履行だった。
移民者と日本政府との裁判は継続中です。
棄民という、日本の移民政策が読み取れる本。

1年半をこの国で過ごして、知っている人たちの名前が出てくる、現実感・・・
この国でただ一人、納豆の注文製作を続け、手作り神棚のもとで剣道場を自宅に作り、普及を続けるご老人。(おかげで、ぼくは月数回、地球の裏側で、納豆にありついている)
その納豆を首都で市販し、話し相手を求める日本語学校教員だった老婦人。
コンスタンサのコロニア・ハポネスを知人と訪問したときに、工夫した材料で日本食を提供してくれた、腰の曲がった、やさしく丁寧な口調の老婦人。
JICA事務所現地職員や、現地通訳者の親族・・・などなど。

それで、どういう社会が・・・

2005-11-03 03:11:31 | 
広井良典、2001、定常型社会ー新しい「豊かさ」の構想ー、岩波新書

低成長、少子高齢化、資源や環境の制約、などという現実の進行の中で、「持続可能な福祉社会」を目指す論考です。
ぼくは、目が見開かされた、本です。

「情報の消費や環境効率性の追求を通じて、マテリアルな消費が一定となる社会」であり、「時間の消費を通じて、経済の量的拡大を基本的な価値としない社会」であり、「根源的な時間の発見を通じて、変化しないもにも価値を置くことが出来る社会」という、3つの意味が論じられています。

「伝統的共同体」へ戻ることはできないし、近代社会の「公としての政府」や「私としての個人や市場」は、ほころびつつあることは共感できます。

インセンティブは、「自立した個人による自発的なネットワーク」による「新しいコミュニティ」に、生きることなのでしょう。
「ボランティア」というありようが、キーになっています。

ただ、自分を含めて、ボランティアは様々です・・・
「個人」「自立」「自発的」には、自我中心の社会にありがちな問題も付随するわけで、深い考察や深慮が必要と思います・・・
そして、ぼくの長い間の疑問ですが、「個人」「自立」「自発的」なフリをするーそこには至っていない、いわゆる脆弱なー人々との共同社会は、支援は、どうあるべきなのか・・・

開発経済学と心理学ーナゼ貧困はなくならないのかー(3)

2005-11-02 22:47:48 | 
 ここドミニカ共和国の精神医学者 Martinez, F. Sanchez は、Psicologia del pueblo Dominicano ドミニカ人の心理学 において、

「順応主義者、受動的、生活範囲が狭い、怠慢、無責任、無鉄砲、不安定、歌や踊りが好き、宗教心が強い、外国人好き、不信感、反隣国主義、言い訳するなど自己防衛が強い、などの特徴」を持つ国民性の背景には、

「少数者の富と幸福を保証するために、大多数に搾取と貧困という犠牲を強いる経済社会構造」があると指摘して、
「それは、変革されるべきだし、大衆の中にある宿命論からの脱却も課題である」と言います。

そして「社会全てのセクターでの、交流を、確立すること」と
「政権が変わっても継続される、共通開発戦略を策定すること」を対策として提唱しています。

たしかに、生まれた家庭の経済能力によって、受ける教育も、考えることも、生活圏も、その後の人生も、決まってしまう現実が、この社会にはあります。
交流することによって、他のチャンスを知る機会を提供し、機会均等を保障するシステムを作ることは、確かに重要と思います。アメリカの黒人運動の経過と結果を見ても。

国際協力の前線にいるぼくたちボランティアは、異文化間の人々の交流のツールであることが、まず重要なのでしょう。技術支援の前に・・・

開発経済学と心理学ーナゼ貧困はなくならないのかー(2)

2005-11-02 22:39:11 | 
人類学者のオスカー・ルイス Oscar Lewis(1959)著 高山他訳、2003、貧困の文化、ちくま学芸文庫 を、思い出しました。

「貧困の文化とは、個人主義や資本主義の強い階層社会に属する貧困者がしめす、社会への適応、あるいは反応の形態で、今おかれている状態からの脱却が、到底望めないことを認識し、自分たちの無力さ、また絶望感をコントロールする努力の結果現れる文化的な特徴である」
「被抑圧者が、社会的な剥奪や、無力感を味わい、乗り越えられない壁が立ちはだかっていると感じると、その根本的な原因がわからないため、自分たちの宿命であると理解しようとする」

「被抑圧者は抑圧者が欲しいものを何でも手に入れるのを見る
  ↓
 自分たちは何もできない
  ↓
 これが宿命であり、自分たちには価値がなく、この状況は試練であると感じる
  ↓
 抑圧者を理想のモデルと感じ、魅力さえ感じる
  ↓
 命令には服従する」

開発経済学と心理学ーなぜ貧困はなくならないのかー(1)

2005-11-02 22:25:39 | 
ウィリアム・イースタリー William Eastrly 著、小浜他訳、2003、エコノミスト南の貧困と闘う、東洋経済新聞社

開発途上国経済を専門とする、もと世界銀行スタッフが著者。
援助も、投資も、教育も、人口抑制も、構造調整融資も、債務救済も、エコノミストは途上国経済の運営に失敗してきた、と数字をあげて示します。

「人はインセンティブに反応する」を、経済の基本原理して、「政府は貧しい人々に、貧困の罠から抜け出すインセンティブを提供しなければならない」という結論を説きます。

経済学理論は全くわかっていないぼくだけど、ここで語られていることは見てきたことであるし、よく了解できます。
50年間も、提唱者が否定する理論を、政策の根拠として使用してきたこと・・・
成果の出ない活動を続けてきたという、国際協力の現実・・・
政治って、人類って、ナゼこんなムダを続けるんだろう・・・

インセンティブ incentive = ・・への刺激、励みとなるもの。報奨金。(心理学)行動を引き起こす外界の動機付け、誘因。






コロンブスの足跡-ドミニカ共和国2005

2005-10-27 00:01:03 | 
次の本ー順不同ーを動員して、コロンブスのこの国での動きを追っかけています。最後のものは、この国の精神医学者が書いた、「文化とパーソナリティ」論です。結構多面的。結局は、今の人々に関心がありますから

・ カール・ヴェルリンデン著 今野一雄訳、1972、コロンブス、「文庫クセジュ」白水社
・ 増田義郎、1988、黄金郷への旅、「NHK市民大学」日本放送協会
・ ラス・カサス著 長南実 増田義郎訳、1981、インディアス史1、「大航海時代叢書 第2期第21巻」岩波書店
・ ラス・カサス著 長南実 増田義郎訳、1983、インディアス史2、「大航海時代叢書 第2期第22巻」岩波書店
・ ラス・カサス著 長南実 増田義郎訳、1987、インディアス史3、「大航海時代叢書 第2期第23巻」岩波書店
・ ラス・カサス著 長南実 増田義郎訳、1990、インディアス史4、「大航海時代叢書 第2期第24巻」岩波書店
・ 増田義郎、1979、コロンブス、「岩波新書」岩波書店
・ 染田秀藤、1995、大航海時代における異文化理解と他者認識、渓水社
・ Martinez, Fernando Sanchez, 2001, Psicologia del pueblo Dominicano, Editora Universitaria - Universidad Autonoma de Santo Domingo, Republica Dominicana

写真は、コロンブスが、イサベラ居留地からイダルゴス峠を越え、2日目に目にした眺望です。川から金が取れ、ベガ・レアルと名づけ、ポルトガル程度の広さと後に言いました。