SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

ORNETTE COLEMAN 「TOMORROW IS THE QUESTION」

2008年02月27日 | Alto Saxophone

このふてぶてしい面構えが好きだ。
やはりただ者ではない、と瞬間的に感じてしまう。
人間、いい顔であるかどうかはそうした「何か」を感じさせるかどうかで決まるのだと思う。

オーネット・コールマンといえばやっぱりフリージャズだ。
フリージャズとは原曲のメロディラインをほとんど消し去り、最初から終わりまで自由な即興演奏を続けるようなスタイルだ。そんな中でサックスやトランペットは金切り声を上げ、ピアノは打楽器になってしまうような激しい演奏が展開される。
私も一頃はこのフリージャズにのめり込んだ。
セシル・テイラーやアルバート・アイラー、この時期のコルトレーンもよく聴いた。
この時代はこういう音が似合っていたのだと思う。今の時代の感覚でいいか悪いかなどを判断するわけにはいかないのだ。
私も60年代は子どもだったので正直言ってその時代の人間とはいえない。ただ子どもは子どもなりに時代の匂いを感じていたことだけは確かである。
世の中は何か空しさや怒りといった歪んだ感情に満ちあふれていた。フリージャズはそれを見事に代弁していたのである。
つまりフリージャズは時代が創り出した音楽なのだ。

ここにご紹介するオーネット・コールマンの「TOMORROW IS THE QUESTION」には、彼が本格的なフリージャズを始める前の姿が記録されている。時代もまだ50年代だ。
彼のアルトサックスといい、ドン・チェリーのトランペットといい、実に「渇いた」演奏だ。
ジャズといえばどちらかというと湿った感覚の音に近いような気がするが、この作品の音からは砂埃が舞い上がるような感覚があって、やはりこれからただならぬことが起きることを予感させる。
そんな風に考えてみると彼の表情にも納得がいく。
彼の目にはやがてやってくる未来が見えていたのだと思う。