SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

BILLIE HOLIDAY 「Songs for Distingue Lovers」

2009年09月15日 | Vocal

ビリー・ホリディは別格だ。
好きとか嫌いとか、いいとか悪いとかいう以前の存在なのだ。
しかし、だからといって聴く前から冷めてしまうのはいかにも危険だし、何より彼女がかわいそうだ。
今夜はいらぬ先入観を捨てて、じっくり聴いてやろうと思いこのレコードを取り出した。

これはビリー・ホリディ晩年の作品である。
既に若い頃の澄んだ声ではなくなってしまっているが、彼女の持つ一種独特な説得力は少しも衰えていない。
それどころか意外と素直に明るく振る舞っているようで、どことなくお茶目でもある。
気がつけば、バーニー・ケッセルのギターやジミー・ロウルズのピアノもケラケラ笑っているし、ハリー・エディスンやベン・ウェブスターも肩の力が抜けている。
特にベン・ウェブスターが吹くテナーは、ファンならずとも聴く価値が十分にあると思う。
彼の魅力はこうしたタメの効いたバラードフレーズで最高潮に達する。
そんなバックの好演にも助けられたか、ビリー・ホリディは実に気持ちよく歌っており、どの曲も味わい深くムード満点だ。

彼女の歌声を聴いていると、渇いた土の匂いがしてくる。
アメリカ南西部の田舎町のそれだ。
砂埃が風に舞って通りを横切るように、彼女の歌が行ったり来たりを繰り返す。
そこにはどこか日本の演歌にも通ずる郷愁が漂ってくる。
演歌が好きな人は、この侘びしさや哀愁感がたまらないのだろう。
アメリカ人も、彼女の歌からきっと私たちにはわからない匂いを嗅ぎ取っているのではないかと思う。
そんなことを思いつつ、一気に最後まで聴き通した。
また最初から聴きたいという思いが募った。
こんなことは最近あんまりないなぁと思いつつ、もう一度針を乗せた。








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2 コメント

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難しい歌手 (mint-jams)
2009-09-24 16:28:54
ジャズを聴きはじめの頃“教科書通り”に最初に聴いてその声に驚き、躓いた歌手でもあり、今でもそれは続いています。
この人をジャズ書通りに無理に理解しようとするのは結局やめてしまいました。

私にとってはまだ「凄い歌手」であるのでしょう。
素直に楽しめる時がくればいいのですが。

演奏内容も含めてテディ・ウィルソンのブランズウィック時代のを愛聴しています。
レスター・ヤングとのコラボ云々関係無く楽しめます。
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意外と身近な人かも (SATOM)
2009-09-24 20:53:23
名前を聞いただけで、たじろぐ感がありますよね。
彼女と比べたら、誰だって人生経験の違いに戸惑うからでしょう。
でもだからと言って特別扱いにしちゃいけませんよね。
じっくり聴けば、すごく近くに寄ってきてくれる人なんだと思います。
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