こんなアットホームで小粋なカルテットは他に類を見ない。
パット・モランとベヴ・ケリーが出会った当時はデュオでステージに立っていたようだが、その後、歌も歌えるベーシストとドラマーを加えてこのカルテットが誕生した。50年代半ばのことである。
このパット・モラン・カルテットは、いわばフォア・フレッシュメンやマンハッタン・トランスファーのようなスタイル(混声コーラスグループ)と、スインギーなピアノトリオの魅力を兼ね備えたグループだといえる。
彼女らが一躍有名になったのはスコット・ラファロが参加した「This is PAT MORAN」からかもしれないが、個人的にはヴォーカル中心のこのアルバムや「While At Birdland」が、彼女たちのオリジナリティが感じられて好きだ。
このアルバムは全12曲で構成されているが、内4曲はヴォーカルなしのピアノトリオで演奏されている。この全体構成がまたいい。全ての曲にヴォーカルを入れると聴く方も集中力がなくなってしまうが、適度なタイミングでピアノトリオが差し込まれているとその都度新鮮な気持ちになれるので好都合なのだ。
彼女のピアノは雄弁である。タッチも強い。そのせいで時にはデリカシーがなくなることもあるが、バド・パウエルに通じるノリの良さとスイング感には大きな魅力がある。このアルバムでは10曲目に入っているメドレーなどで彼女の実力を知ることができる。
歌声はというとベヴ・ケリーの伸びのある美しいヴォーカルに、他の3人のコーラスが見事に絡んで実におしゃれなサウンドを生み出している。
肩肘張らずにジャズを楽しもうと思っている方にとっては、座右の一枚になること間違いなしの名盤である。