SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

BOBBY HACKETT 「Live at the ROOSEVERT GRILL」

2007年12月17日 | Trumpet/Cornett

ジャズのメインストリームはどこにあるか。
確かにモダンは大河のように幅広い。しかしながらジャズの本流は確実にニューオーリンズから流れている。
このアルバムにはそれを証明するかのような優れた演奏が記録されている。

ボビー・ハケットといえば1930年代から活躍してきたディキシーランドスタイルのトランペット&コルネット奏者である。
彼が残した作品は数多くあるが、中でも「コースト・コンサート」が有名だ。
この作品で彼のファンになったという人を何人も知っている。内容もさることながら、録音状態がよかったために非常に聴きやすいアルバムだったことが起因しているようだ。
このルーズベルト・グリルでのライヴはその「コースト・コンサート」に勝るとも劣らない彼晩年の代表作であり、モダンジャズ一辺倒の人にも充分楽しんでもらえる内容になっている。
このライヴは4枚のアルバムに分けて発売されており、ここでご紹介するアルバムは、その内の1枚目ということになる。
その4枚の内の2枚がレオ・メイヤーズドルフのジャケットデザインになっており、彼の描いた躍動感溢れるイラストとタイポグラフィが、ルーズベルト・グリルでの熱く楽しい雰囲気を私たちに伝えている。
このルーズベルト・グリルでの演奏にはゲストとしてヴィック・ディッケンソンが迎えられている。彼は中間派の代表的なトロンボーン奏者であるが、彼の参加によってこのアルバムの価値が大きくなったことはいうまでもない。

このアルバムがすばらしいのは何も演奏だけではない。
食器やグラスがふれあう音、客の大きな笑い声などがよく捉えられており、ステージと観客席が一体となっている雰囲気が伝わってくるからである。ジャズのライヴ録音はこうでなくてはいけない。
私も以前サンフランシスコのライヴハウスで、こうしたディキシーランドジャズの演奏を聴いたことがあるが、店に入って席に着いたものの、30分もしないうちに隣の見ず知らずの客と意気投合し、一緒に肩を組んで踊ったことがある。ハケットによる彼流ディキシーランドジャズもそんな底抜けに楽しい音楽であり、人種や言葉を超えて繋がりあえる魂の音楽なのだ。
あなたもどっぷりと浸かっていただきたい。