SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

ALAN BROADBENT 「'ROUND MIDNIGHT」

2007年12月02日 | Piano/keyboard

アラン・ブロードベント、ニュージーランドのピアニストである。
この人のアルバムを全部聴いたわけではないが、どれを買ってもあまり外れはないと思っている。彼はそれくらい安定感のある作品をつくる優れたジャズメンだ。洗練された雰囲気、卓越した技術とそつのなさは聴く者を圧倒する。

彼のピアノはとにかく「キレ」がいい。
ぼやけたところがなく、音が明快なのだ。これが洗練された雰囲気を作り出す原因だ。
演奏内容は肩肘張ったものではなく、ポピュラーなスタンダード曲を彼ならではの情感で弾きこなしている。但しどの一曲たりとも手を抜いた演奏はなく、それなりの緊張感を持って取り組んでいる姿が伺える。この緊張感はビル・エヴァンス・トリオにも通ずるものである。
最近パートナーを組んでいるブライアン・ブロンバーグは、正にスコット・ラファロのような存在感あるベースを弾く人だ。彼がいることで、よりインタープレイの緊張感が増幅されていく。曲によってはどちらが主役かわからなくなるほどだ。
ドラムスは最晩年のビル・エヴァンス・トリオの一角を成していたジョー・ラバーベラ。決して自己主張が目立つドラマーではないが、この人のドラミングには品がある。とりわけブラシとスティックの使い分けが上手い。
この3人ががっぷり四つに組んでそれぞれの曲を料理している。

印象に残る曲は何といってもタイトル曲である。
この「'ROUND MIDNIGHT」はモンクのつくった名曲であるが、あまりに馴染んでしまったメロディであるために最近は少々食傷気味であった。しかしここでの演奏はドラマチックで飽きさせない。
ブロードベントの流れるようなアドリヴの妙技、よく歌うブロンバーグのベース、タイム感覚の優れたラバーベラ。
ピアノトリオの傑作がここにまた生まれた。ぜひ聴いてほしい。